
学資保険は、子供の教育資金を準備する手段として長く認知されており加入者も多い保険商品です。一方で何らかの理由により、学資保険の解約を検討されるご家庭もあるかと思います。
解約の理由にはそれぞれ事情もあるでしょうが、学資保険は大切なお子様の教育資金のために加入された家族の想いが詰まった保険となります。学資保険の解約を慎重に検討できるよう、この記事では学資保険の解約に関する基本的な情報や注意点を解説します。
学資保険を途中解約すると損しやすい理由
学資保険は、お子様の教育資金の準備として加入するものなので10年から15年、18年という長期の契約となっています。契約を継続することで返戻率が向上し、満期時には契約時に決めた満期保険金を受け取れるしくみになっています。支払った保険料以上の満期保険金を受け取ることができるかどうかは同じ学資保険でも加入条件等によって異なりますのでご注意ください。
契約期間(満期の時期)については、通常はお子様の進学時期に合わせて設定されており、契約途中での解約は想定されていないため、満期や保険料払込満了まで保険料を支払わず安易に途中で解約すると、ほとんどの場合に払い込んだ保険料よりも解約返戻金が下回ります。
特に契約して間もない段階での解約となると解約返戻金がより少なくなる傾向があります。また、解約をすると再加入も難しく、ご家族の保障も少なくなるというリスクも考慮する必要があります。
元本割れのリスク
学資保険の契約途中での解約は前述の通り、ほとんどの場合、解約時に戻ってくる金額はそれまで支払った保険料よりも少なくなります。いわゆる元本割れ状態となります。
特に契約から数年以内での解約では、解約返戻金がほとんど無いか有っても支払った保険料よりもずいぶんと少ない金額しか戻ってこないので注意が必要です。解約をされる前に、今解約したら解約返戻金がいくらなのか保険会社等に確認することをお勧めします。
保障を失う
学資保険の加入目的は教育資金の準備になりますが、資金の積み立てのほかに契約者(親)が死亡または高度障害状態になった場合に、その後の保険料を支払わなくても計画していた教育資金がしっかりと確保できるという大切な保障機能があります。解約をするとその保障を失うことになります。
再加入の難しさ
学資保険には、加入する被保険者(お子様)の年齢制限があります。一度解約するとお子様の年齢によっては再加入が難しくなるだけでなく、加入できたとしてもお子様の年齢が上がることにより解約前と同じ保障でも保険料が高くなる可能性があります。
学資保険を解約する際の手続き
学資保険を解約する際の基本的な流れについて説明します。
- 保険会社への連絡:契約中の保険会社または担当の保険代理店に解約の意思を伝え、手続きの方法を確認する。
- 必要書類の取り寄せ:保険会社や担当の代理店から解約手続きに必要な書類(解約請求書など)を取り寄せる。
- 書類の記入と提出:必要事項を記入し、本人確認書類の写しなど、保険会社の指示に従って必要書類を揃えて提出する。
- 解約返戻金の受け取り:手続き完了後、指定した銀行口座に解約返戻金が振り込まれる。
学資保険の解約手続きは、解約返戻金もあり、保障を失うことにもなるので一般的に書類提出によって本人の意思確認をもって行われます。口頭での申し出や保険料の払込みを行わないだけでは、解約の手続きを完了したことにはならないため注意が必要です。
学資保険の解約を避けるための代替手段
学資保険を継続することが経済的に難しい場合、解約を避けるための代替手段を紹介します。
満期保険金額の減額
学資保険の満期時に受け取る満期保険金を減らす(減額する)ことで、月々の支払保険料を減らし経済的負担を軽減することができます。またその際には、減額した分の解約返戻金も受け取ることができます。
払済保険への変更
将来にわたって学資保険の保険料の支払いが困難だと判断したら、払済保険に変更できる場合があります。払済保険とは、保険料の払込みを中止して、その時点での解約返戻金を残りの保険期間の保険料にあてる方法です。払済保険に変更すると、以後の保険料の支払いは不要になります。
一方で保険契約は継続され、保険期間も変わりません。ただし、一般的に満期保険金は少なくなり、また特約が付加されている場合その特約の保障はなくなります。
特約の解約
学資保険の医療保険特約や育英年金特約などの特約だけを解約することができます。これにより特約分の保険料が減り、月々の支払い負担を軽減できます。
特約を解約すればその分の保障は失いますが、本来の目的である主契約の死亡保障と満期保険金額は変わりません。
契約者貸付制度の利用
学資保険の解約返戻金の範囲内で保険会社から資金を借り入れること(貸付)ができます。
貸付制度を利用すると保険会社所定の利息が発生しますが、契約は現状のまま維持できますし、借りたお金はいつでも返済可能です。
万一返済できずに満期を迎えるようになった場合でも満期保険金から未返済分が差し引かれる形となります。
自動振替貸付制度の利用
学資保険の保険料の支払いが困難な場合、支払い猶予期間を超えた場合に解約返戻金から自動的に保険料が支払われる制度があります。加入されている学資保険に自動振替貸付制度が付いているか保険会社に確認されると良いでしょう。
所定の利息は付きますが直近の支払い負担の軽減が可能です。
まとめ
学資保険の解約は、経済的な損失や保障の喪失など、多くのリスクを伴います。解約を検討する際は、加入された学資保険という商品が家族にとってどのような役割をしているのか、加入した時の想いも含めて慎重な判断が必要です。
事前に解約返戻金や、代替手段について十分に確認することが大切です。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談してライフプランの再構築などを行ってみるのも良い対策だと思います。
執筆◎平林 陽介(CFP®資格)
東京都出身。2000年に大学卒業後、専門商社に入社。その後外資系生命保険会社を経て現在。掲載記事においては、自身の経験や顧客に寄り添う姿勢や顧客目線のアドバイスが特徴的。通常の相談業務においても、顧客の将来に渡っての経済的保障と生活の安定を図ることを優先している。質の高いサービスと好評である。幅広い世代での相談を受けており、豊富な経験から相談結果に対する顧客満足度も高い。
■保持資格:CFP®資格、宅地建物取引士