金価格の上昇が話題になっている。金の現物価格は、2019年ごろは1トロイオンス1000米ドル台で推移していたが、それ以降金価格が上がり続け、2025年の4月には最高値となる3500米ドル超をつけた。
なぜこれほどまでに金が人気なのか。金のETFの運用会社として知られているステート・ストリートの資産運用部門であるステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(ステート・ストリート)でゴールドストラテジストを務めるアーロン・チャン氏に聞いた。
金の投資方法
前回の記事では、金価格が上昇を続ける理由と今後の見通しについて解説した。
〇最高値を更新し続ける金価格――投資対象としての金が人気を集める理由と今後の見通しを専門家に聞いた
だが、そもそも金にどのように投資すればいいのだろうか。長年金のETFを運用しているステート・ストリートでゴールドストラテジストを務めるチャン氏によれば、大きく分けて金の投資手段には「ETF(上場投資信託)、投資信託、金地金・金貨、純金積立、先物・オプション・CFD」の5つがある(図1)。
まず、投資信託とETFについてみていこう。投資信託は、銀行や証券会社で買うことのできる金融商品だ。ETFは、取引所に上場された投資信託を指し、個別株のように取引所が開いている時間帯にリアルタイムでの売買が可能な点が特徴だ。
次に、金地金・金貨は現物の金で、純金積立は金を小額で積み立てながら購入していく手段だ。最後の先物・オプション・CFDは、株式などにもある取引と同様の手段で金に投資できる。
金投資のメリット①分散
このように、さまざまな投資手段のある金だが、チャン氏によれば金に投資するメリットは4つある。一つずつ解説しよう。
1つ目は、分散効果だ(図2)。
「金価格は、株式や債券といった多くの金融資産と相関が低く、それらとは異なる値動きとなります。過去30年間の金と主要株式指数や債券との比較をみると、相関は0に近く、最も高い米国債でも0.3未満となっています」(チャン氏)。
金投資のメリット②危機時の備え
2つ目は、危機時の備えだ(図3)。
先述の通り、金は他の金融資産と相関が低く、株式が大きく下落した場合、金は上昇するか、株式と比べて下落幅が抑えられる傾向がある。「過去、S&P500が大きく下落が起きた際、金価格は必ず上昇したわけではないものの、株式に比べて下落幅は小さく、限定的でした。これは、金がリスク回避の局面で買われる傾向があることを示しています。金に分散投資することで一時的な損失を抑えることが期待されます」(チャン氏)。
金投資のメリット③リターン
3つ目は長期的なリターンだ(図4)。
この点についてチャン氏は、「金はユニークな資産です。なぜなら、長期的に保有し続けた場合に、リターンと混乱期の分散の両方を期待できる資産は限られているからです」と語る。
また、利息や配当がないので投資しづらいという意見もあるかもしれないが、「1971年に取引が自由化されてから、10年単位の長期的な目線でみると、ドル建ての金価格の年平均リターンは約8.7%となっています。リターンが米国債や日本国債よりも高く、株式に近いリターンとなったこともあります」と長期的なリターンでほかの資産と見劣りしないと説明した。
金投資のメリット④インフレへの備え
4つ目は、インフレへの備えだ(図5)。
「金の供給は限られているので、物自体に価値があり、理論上無限に発行できる法定通貨と比べて貨幣価値の保存に優れています。グラフから分かるように、1971年から50年以上にわたって金の購買力は、米国の物価上昇局面でも維持されてきました。確かに低インフレや緩やかなインフレの状況では金の平均年率利回りは米国株式と比べて低かったものの、一定の利回りは得られています。重要なポイントは、インフレ率が5%を超える高インフレの状況では、金の平均年率利回りが米国株式を大きく上回ったことです。金は、急激なインフレに強い資産だと考えられるでしょう」(チャン氏)。
金は低インフレや緩やかなインフレ局面では魅力度が下がるものの、高インフレやデフレといった難局では光り輝く資産だといえよう。
オルイン編集部
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