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家賃の未払いで追い出されかけ、キャッシングカードは6枚目に突入…30代外資系コンサルマンが借金漬けの日々を過ごすワケ

2025/07/19 12:00

この業界、なにより大事なのは人脈なんだよ――というのは、今の外資系コンサルに転職してきた翔太が、最初のトレーニングで世話になったマネージャーから聞かされた言葉だ。 そのマネージャーが業界の内外を問わず幅広い人脈を持っていることはほんの半年程度いっしょに働いただけでも十分に理解できた。実際、テレビ局のプロデューサーや町

この業界、なにより大事なのは人脈なんだよ――というのは、今の外資系コンサルに転職してきた翔太が、最初のトレーニングで世話になったマネージャーから聞かされた言葉だ。

そのマネージャーが業界の内外を問わず幅広い人脈を持っていることはほんの半年程度いっしょに働いただけでも十分に理解できた。実際、テレビ局のプロデューサーや町工場の社長など、業務上いつ使うのか分からない人脈まで抱えていた。

中途だというのに50人近くいた同期たちも優秀であればあるほど社内のゴルフコンペや異業種交流会、外部のセミナーなどに通い、着々と自分だけのつながりを築き上げていた。

もう遅れをとるわけにはいかなかった。恥をかくわけにはいかなかった。

翔太はいわゆる有名私大を卒業したものの、特に就職もせずついこの前までバイトを転々としながらフリーターをやっていた。世の中からどう見られているかはさておき、あくせく働いている友達たちに比べ、自分は自由を手にしていると悪い気はしなかった。

だが、20代も後半になると事情は少しずつ変わってくる。地道に昇給を重ね、責任ある仕事を任され、場合によっては結婚したり子どもを持ったりするようになった。翔太が自由だと思っていたものは、単なる停滞だと分かった。

翔太は焦った。周りが何かの肩書を背負いながら遠くまで歩いていくのに、翔太には何もなかったから。26歳のとき、大学の卒業式以来埃をかぶっていたスーツに少し太った身体を押し込んで、就活を始めた。

納得のいく会社に転職したが

最初は小さな印刷会社だった。同僚たちはみんな優しかったが、仕事は地味だし、給料もいいとは言えなかった。5年働いて転職活動をした。とにかく就職先を見つけたかった5年前とは異なり、今度は給料や賞与を重視した。第一希望とまではいかなかったが、それでも納得のいく今の会社に転職することができた。

この場所で、人生の遅れを取り戻すと決めた。だから、翔太はマネージャーや同期にならって人脈づくりに勤しんだ。

「お、筒井。お前、来週の異業種交流会行く?」

「あー、なんだっけそれ」

クライアントとのテレカンを終えて個室を出たとき、ちょうど出くわした同期に尋ねられ、翔太はスマホのスケジュールアプリを開いて目を通す。金曜の夜に、勢いのあるベンチャー企業の経営者数名が主催する交流会があると予定に書いてある。

たしか会場が六本木だか麻布のクラブを貸し切りで会費が15,000円だったために、行くかどうか迷って保留していた交流会だった。

当然の話だが、交流会やセミナーへの参加費は経費で落ちない。社内のゴルフコンペだって、打ち上げの飯くらいは上司が奢ってくれたりすることもあるが、自分や一緒に回る仲間が恥をかかないよう最低限揃えておかなければいけない道具やウェア、事前に練習しておくための打ちっぱなしなどにかかるお金は、自分の財布から出ている。外資系コンサルなだけあって、業界未経験の翔太であってもそこそこの給料がもらえているが、その出費は決して安いものではない。

「もちろん行く。てか、行かない理由ないでしょ」

翔太はスマホを操作して参加申し込みページを開き、素知らぬ顔で登録を済ませた。

実は借金が

21時過ぎまで残業をして家に帰った翔太がアパートのポストをのぞくと、カード会社から送られてきた封筒が入っていた。翔太は深く息を吐いた。これで今月もなんとかなる。翔太はその場で封筒を明け、真新しいクレジットカードを取り出した。首の皮一枚つながったという安堵を踏みしめながら来た道を引き返し、途中にあるコンビニへと向かった。

これでトータル6枚目になる新しいクレジットカードをATMに入れ、キャッシングで現金を引き出す。ひとまず10万。翔太は手にしたお金をすぐに、キャッシュカ―ドを使ってATMへと戻す。領収書で口座の残高を確認する。これで週明けにやってくる別のクレジットカードの引き落としはクリアだ。

転職してまだ1年だが、給料と賞与を重視した転職なだけあって、翔太の年収はそれほど低くはない。もちろんきちんと新卒で働きだした友達に比べれば翔太の給料なんて大したことはなかったが、それでもまずまずの待遇で働いている。

だが翔太は得た収入から家賃などの生活費を差し引いたほとんどを、セミナーや交流会のために使っている。もちろんその場で盛り上がれば二次会だなんだと出費はかさむし、ゴルフをするのにも交流会に行くのにもウェアやスーツを揃えておく必要があるので金はかかったが、人脈を作るための投資と考えれば必要経費だ。

だが、その必要経費が翔太の首を絞めているのも事実だった。収入を上回る膨大な出費ですぐに生活は回らなくなり、まず家賃を滞納した。2か月目に管理会社から退去をほのめかされて慌てた翔太はひとまずキャッシングで難を逃れた。今思えば、それがきっかけだったように思う。

もう2度とないようにと、クレジットカードの利用をセーブする必要があった翔太だったが、“仕事上の必要経費”を削るなんてできるはずもなく、支払いのほうをセーブすることにした。つまり、リボ払いを始めた。

しかし支払いは問題なくできたとしても、クレジットカードの上限はすぐにいっぱいになってしまった。クレジットカードが使えなければ “仕事上の必要経費”をろくに捻出できなくなる。だから翔太は次のクレジットカードを作った。あとはその繰り返しだった。

クレジットカードはいつの間にか6枚目。5枚目までは上限いっぱいまで使っているため、財布に厚みを出すためだけに存在している有様だ。

首の皮1枚つながった状況だが、予断は許さない。再来週にはまだ別のカードの引き落としが迫っている。なんとか現金をかき集めなければならなかった。

●もはや首が回らない状態一歩手前であることは翔太も十分承知していた。そんな折、現金をかき集める目的もかねて大学時代のサークル仲間との会合を設定した翔太。そこで大学時代の人気者が姿を消した理由を聞き身の振り方を改めることになる。後編:【「あいつは実家に帰った」キャッシングで首が回らない外資系コンサルマンが戦慄した大学時代の人気者と連絡が取れなくなった理由】にて詳細をお届けする。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

Finasee マネーの人間ドラマ編集班

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。