NISA・クレカ積立を始めたい

「えっまだNISAで投資信託買ってないの?」とマウントを取る人は知らない…それよりも“本当に大事なこと”

2025/07/30 17:00

NISAの制度改正が行われた2024年1月以降、NISAの口座開設は大きく伸びました。口座数で言うと、2023年12月末時点が2125万口座で、2024年12月末が2559万口座ですから、1年間で20.42%増えたことになります。 ちなみに直近データだと2025年3月末時点が2647万口座なので、このペースで増え続け

NISAの制度改正が行われた2024年1月以降、NISAの口座開設は大きく伸びました。口座数で言うと、2023年12月末時点が2125万口座で、2024年12月末が2559万口座ですから、1年間で20.42%増えたことになります。

ちなみに直近データだと2025年3月末時点が2647万口座なので、このペースで増え続ければ、2025年12月末には2911万口座になります。増加率で見ると13.75%増なので、2024年中に比べればペースダウンですが、アーリーアダプターの口座開設が一段落したところなので、このペースダウンは織り込み済といったところでしょう。

とはいえ、NISAの口座を開くことができる「日本在住の満18歳以上」の人全員が、NISA口座を開いているわけではありません。NISA口座を持てるのは1人1口座ですから、年齢別の口座数と人口が分かれば、おおよそではありますが、年齢別のNISA口座開設率が分かります。

20代以上の年代別総人口とNISAの口座数(2024年12月末)を比較してみましょう。年代別総人口は、2024年10月時点の人口推計から抽出したものです。そしてカッコ内が総人口比で見た口座開設率になります。

20歳代・・・・・・1277万9000人/295万112口座(22.73%)
30歳代・・・・・・1326万6000人/448万6512口座(33.81%)
40歳代・・・・・・1637万6000人/492万3179口座(30.06%)
50歳代・・・・・・1827万8000人/495万1402口座(27.08%)
60歳代・・・・・・1483万9000人/377万942口座(25.41%)
70歳代・・・・・・1608万4000人/283万9669口座(17.65%)
80歳以上・・・・・・1289万2000人/154万4862口座(11.98%)

総人口比で見た口座開設率は、30歳代が最も高くて33.81%でした。つまり30歳代はほほ3人に1人超でNISA口座を開設していることになります。他の年代に比べて30歳代が高いのは、やはり老後に対する不安が強いからなのでしょうか。逆に、70歳代、80歳代以上になると、「これから長期投資を始めてもねー」という意識が強く働くのだと思います。

これは商品別の比率を見ても一目瞭然です。まずNISA口座全体の残高に占める株式残高の割合から見てみましょう。

20歳代・・・・・・15.67%
30歳代・・・・・・17.96%
40歳代・・・・・・20.32%
50歳代・・・・・・22.13%
60歳代・・・・・・26.11%
70歳代・・・・・・39.86%
80歳以上・・・・・・58.72%

次は投資信託の残高割合です。ちなみに投資信託については、投資信託ETFの残高も加えて、割合を計算しています。

20歳代・・・・・・84.19%
30歳代・・・・・・81.86%
40歳代・・・・・・79.39%
50歳代・・・・・・77.51%
60歳代・・・・・・73.48%
70歳代・・・・・・59.65%
80歳以上・・・・・・40.71%

年齢層が上がるほど株式の割合が増えるのと同時に、投資信託の割合は減っているのが分かります。特に80歳以上になると、この傾向が顕著で、投資信託ETFの残高割合に比べて、株式の残高割合の方が上回っているくらいです。

投資信託は長期投資が前提の投資商品なので、年齢層が上がるほど使いにくくなります。「人生100年時代なので、60歳から資産運用を始めても十分長期投資はできる」などと言う声もありますが、米イリノイ大学などのチームによる最新の研究によれば、今後、急速な寿命延長は望めないとし、「理想的な長寿国家」のモデルにおいても、100歳まで到達できる確率は、女性が13.9%、男性が4.5%という研究結果を出しています。

それを考えれば、80歳以上が投資信託で運用するのは不適切であり、むしろ株式投資の方が、さまざまな点で「考える」ことが多いだけに、知的刺激ということも含めて望ましいのかも知れません。

「NISAでオルカン(もしくはS&P500)」は大人気だが、日本全体でみると…

いささか余談が過ぎましたが、何を言いたいのかというと、「案外、投資信託は普及していない」ということです。

NISAの制度見直しが行われた2024年1月以降、「NISAはオール・カントリーかS&P500のインデックスファンドで」という風潮が強まり、投資信託による資産運用が注目されました。その代表ともいうべき「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の純資産総額は、7月24日時点で6兆7577億8300万円、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の純資産総額は7兆8235億5500万円にもなっています。

この数字からも、オール・カントリーやS&P500への連動を目指すインデックスファンドの人気の高さはうかがえますし、前出の、NISA口座全体の残高に占める投資信託ETFの残高の割合を見ても、確かに20歳代で84.19%、30歳代で81.86%という非常に高い割合を示していますが、そもそも総人口に占めるNISA口座の開設率で見ると、20歳代は22.73%、30歳代は33.81%に過ぎませんし、資金循環統計にある家計金融資産の残高を見ても、2025年3月末時点で2195兆円ある家計金融資産残高のうち、投資信託の占める割合は6.0%の131兆円です。ちなみに、2024年末時点における米国の家計金融資産に占める株式・投資信託の割合は51.3%で、日本の18.2%を大きく突き放しています。

一部では、一足先に投資信託の運用をスタートさせた人たちが、「まだNISA投資信託、始めていないの?」などと、投資信託を保有していない人を下に見るかのような発言が増えているなどと聞きますが、ほとんどの人は投資信託を買っていないのが現状です。

投信をまだ持っていない人に“マウント”を取るよりもっと大切なことは…

一般的に、若い人ほどリスクを取りましょうと言われます。投資は長い時間をかけるほど成功する確率が上がりますし、仮に失敗したとしても、残り時間が長い分だけリカバリーする可能性も高まります。逆に高齢者になるほど残り時間が短くなる分、リスクは取りにくくなります。

ところが、現実にはそれと全く逆の現象が見られます。

内閣府が公表している「年次経済財政報告(令和6年度)」のなかに、「日本の年齢階層別の資産の保有状況」というデータがあります。定期性預金、流動性預金、生命保険、有価証券、その他という5種類に関して、各金融資産額の平均値を算出しているのですが、それによると、24歳以下、25-29歳、30-34歳、35-39歳まで、保有資産全体に占める有価証券の割合は、いずれも12%弱です。

一方、年齢階層が上がるにつれてどうなるのかというと、実は有価証券の保有比率が上昇していくのです。保有資産全体に占める有価証券の割合が最も高いのは、実は70-74歳で、23.77%を占めています。

●年齢階層別に見た金融資産全体に占める有価証券の割合

筆者作成

これは、リスクを取って運用するべき若年層ほど、リスクを取らない傾向が見られることを意味します。ちなみに有価証券は株式、債券、それらをパッケージにした投資信託が該当します。

若年層ほど有価証券の保有比率が低いのは、「この手の投資はある程度の資産を持っている人が行うもの」というイメージを抱いている人が多いからではないでしょうか。

しかし、今や投資信託は100円からでも積立購入できる時代です。他人を見下すような物言いはよろしくありませんが、すでにオール・カントリーやS&P500のインデックスファンドでの積立投資をしている人たちが成功体験を積み上げ、自分の周りの人にその体験話をすることで、リスクを十分に取れる若年層の人たちが、少しでも資産運用に目を向けてもらえることを願います。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。