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【ケース別解説】確定拠出年金(DC)の本人拠出 法改正でいくらまで出せるようになる?

2025/08/29 12:00

先般成立した年金制度改正法のうち、確定拠出年金(DC)関連の項目の多くが、「公布日(2025年6月20日)から3年以内で政令で定められる日」が施行日です。 改正項目のうち2項目については、施行日が2026年4月1日の予定であることが示されました。一つは、企業型DCマッチング拠出の事業主掛金以下という制限の撤廃で、もう

先般成立した年金制度改正法のうち、確定拠出年金(DC)関連の項目の多くが、「公布日(2025年6月20日)から3年以内で政令で定められる日」が施行日です。

改正項目のうち2項目については、施行日が2026年4月1日の予定であることが示されました。一つは、企業型DCマッチング拠出の事業主掛金以下という制限の撤廃で、もう一つが企業型DCの手続きの簡素化です。

また、令和7年度税制改正大綱に基づく以下の2項目については、2027年の控除分からの実現を目指すとされており、具体的には2026年12月施行が想定されます。

・拠出限度額の引上げ(個人型確定拠出年金(iDeCo)・企業型DC・国民年金基金)
iDeCoの 加入可能年齢の引上げ(65歳から70歳へ)

まずはご自身の状況を確認しましょう

830万人超の企業型DCの加入者は、マッチング拠出をしていなければ原則iDeCoも活用できます。法改正の施行により、拠出限度額の考え方が変わり選択肢が増えるため、どう活用していくのかに迷う方も多いかと思います。拠出できる金額は各自で異なるため、まずはご自身の状況を確認することから始めましょう。

加入者用WEBサイトにアクセスして、下記の点を確認します。
① 事業主掛金額
② 加入者掛金拠出の有無
③ 他制度掛金相当額(確定給付企業年金〔DB〕等の掛金相当額)
④ 拠出限度額経過措置区分(2024年12月) 経過措置有(旧制度)or経過措置無(新制度)

それぞれの項目を下記にまとめます。

①事業主掛金は、企業型DC加入者であれば誰にでも表示されます。ただし、60歳超等の運用指図者の場合は表示されません。

②加入者掛金拠出は、お勤め先でマッチング拠出の設定があれば記載があります。加入者数ベースでみると407万人(全体の約半数)は加入者掛金拠出ができる方です。

③DB等の他制度がないお勤め先であっても「0円」と記載されています。逆にDB等の他制度がある場合であっても、DBの加入者資格を1年経過後取得等で設定されている場合は「0円」の記載となっています。なお、この数字は見つけにくいかもしれません。

例えば、野村證券の確定拠出年金総合サービスでは「拠出・配分状況」に①②が記載され、③は記録関連運営管理機関であるJIS&T社(日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー)のサイトに遷移した後、「個人ポートフォリオ」「拠出情報照会」ページの最下段に記載されています。

④経過措置の有無については、DB等の他制度の有無により意味合いが異なります。
・お勤め先にDB等の他制度有、経過措置有の方
…2026年12月以降も拠出限度額は2万7500円
・お勤め先にDB等の他制度無、経過措置有の方
…拠出限度額は法令に基づいて上がる

なお、①②は定期的に発行される残高通知(JIS&Tの場合は「お取引状況のお知らせ」という名称)からもわかりますが、③④はWEBサイトから取得する場合が多そうです。

DB等の他制度があるとiDeCo活用が難しい場合も

ご自身の状況を確認したら、マッチング拠出もしくはiDeCoでいくら拠出できるのかを考えます。DB等の他制度の有無が最初のポイントとなります。

お勤め先にDB等の他制度がある場合

ケース1【④経過措置有かつ③が2万7500円超の方】

iDeCoの活用は難しいと思われます。

他制度掛金相当額(③)が大きい場合、企業型DCの拠出限度額は2万7500円のまま変わりません。企業型DCマッチング拠出の設定があれば、2026年4月以降は2万7500円から事業主掛金額(①)を引いた金額までマッチング拠出が可能です。一方、iDeCoへの拠出は次の計算式が5000円以上であれば可能です。

5万5000円-事業主掛金額(①)-他制度掛金相当額(③)
※2026年12月以降は 6万2000円-事業主掛金額(①)-他制度掛金相当額(③)

ケース2【④経過措置有かつ③の金額が2万円以下の方】
お勤め先での企業型DC規約の変更が必要になると想定されます。

規約変更後には、本人拠出(マッチング拠出もしくはiDeCo)の限度額は、下記の計算式になります。

5万5000円-事業主掛金額(①)-他制度掛金相当額(③)
※2026年12月以降は 6万2000円-事業主掛金額(①)-他制度掛金相当額(③)

ケース3【④経過措置無かつ③の金額が2万円以下の方】

本人拠出(マッチング拠出もしくはiDeCo)の限度額は、下記の計算式になります。

5万5000円-事業主掛金額(①)-他制度掛金相当額(③)
※2026年12月以降は 6万2000円-事業主掛金額(①)-他制度掛金相当額(③)

お勤め先にDB制度等の他制度がない場合

5万5000円-事業主掛金額(①)
※2026年12月以降は 6万2000円-事業主掛金額(①)

マッチング拠出が可能であれば、基本的にマッチング拠出を活用しましょう。

ただ、加入者の半数はお勤め先でマッチング拠出が設定されていないため、iDeCoの活用になります。iDeCo掛金の拠出上限は2026年12月までは2万円(事業主掛金(①)とあわせて5万5000円を超えない金額まで)、2026年12月以降は6万2000円から事業主掛金(①)を引いた金額となります。

一方、マッチング拠出が可能であっても、次のようなケースではiDeCoの活用も視野に入ります。

・50代後半の方

企業型DCの資格喪失年齢が60歳で、60代前半は仕事を続けようと考えている場合、iDeCoで掛金拠出をすると、所得税・住民税の優遇メリットがあります。さらに、2026年12月以降は70歳までiDeCoの掛金拠出が可能になります。

・企業型DCの運用商品ラインアップに魅力を感じない方

企業型DCがスタートして20年以上が経過し、開始当初とは運用商品も大きく変わっています。特にインデックスファンドは信託報酬が低廉なものもあります。

長期で考えると信託報酬の違いが大きな差を生むことになります。一方でiDeCoの管理手数料は本人負担となるため、その点も勘案しながら決定しましょう。

マッチング拠出であれiDeCoであれ、2026年12月以降はDB等の他制度がないケースでは月額6万2000円までDC拠出が可能になります。

仮に毎月6万2000円を38年間積み立て、2%で運用できたとすると、DCだけで4258万円を準備できることになります。

現在の退職所得控除額(38年で2060万円)を大きく上回ることになり、課税所得が1000万円を超えてきます。もちろん、現役時代の所得税・住民税の優遇は大きいものがありますが、拠出限度額が大きくなるにしたがって受取時の税金も考慮する必要が生じそうです。

津田 弘美/野村證券 確定拠出年金部

社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。