緊急開催!!東証が語る!IR活動の充実化に向けて〜事例から見る「投資家から評価の高いIR活動」とは〜
富山蔵人(以下、富山):ログミー株式会社CRO、IRソリューション本部本部長の富山です。本日は「IR活動の充実化に向けて」ということで、東京証券取引所の石川さまにご登壇いただきます。石川実乃里氏(以下、石川):東京証券取引所上場部上場会社サポートグループの石川実乃里です。生配信は初めてで緊張していますが、みなさまにとって有意義な時間になるように努めていきますので、よろしくお願いします。富山:石川さまが所属している上場会社サポートグループは何名ぐらいの体制なのですか?
石川:基本的には部長と課長、私の3名で対応しています。人数が少ないからといって手薄になっているわけではなく、全力でみなさまのサポートをしていますので、そこはご安心いただければと思います。
富山:3名なのですね。10名くらいはいらっしゃるのかと思いました。
石川:社長直轄でできたグループで、今後はもう少し人が増えるかもしれませんが、現在は3名体制で、全力でがんばっています。
アジェンダ
石川:まず、本日の流れを簡単にご説明できればと思います。はじめに「IR体制の整備」の背景についてご説明します。なぜ、いま規則化したのか、みなさまも気になると思いますので、そちらをお話しします。次に、実務担当者の方には規則上いったい何が求められるのかについて細かくご説明します。続いて、規則に抵触しないことも重要なのですが、投資者の目線はもっと先にあるということをお伝えするため、「IR体制・IR活動」に関する投資者の声をお届けしようと思います。良い事例や悪い事例も全部含めてご説明します。最後に、東京証券取引所も「要請」だけではなく「サポート」もしているということをご説明できればと思っています。ここでみなさまにお断りしたいのですが、本日は投資家の生の声を届けることを目的にセミナーを開催していますので、厳しいご意見もいろいろご紹介していきます。上場会社のみなさまからは「東京証券取引所は投資家の声を聞いて、なかなか上場会社の声を聞いてくれない」というお声も届きます。また別の機会で、上場会社のみなさまの不満を投資家の方に届ける活動もしていますので、本日は恐れ入りますが、投資家サイドに回ってご説明します。ご意見・ご指摘などは後ほど真摯に受け止めようと思いますので、よろしくお願いします。市場区分の再編から「資本コストや株価を意識した経営の要請」へ
石川:「IR体制の整備」の背景について、なぜ、いま規則化したのかご説明できればと思います。スライドに記載があるとおり、きっかけは「資本コストや株価を意識した経営の要請」からスタートしており、前段が長くなりますが、そこからご説明していきます。まず、2022年4月に東京証券取引所市場区分の見直しをしました。市場が複数あって曖昧でわかりづらいということから、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場に再編し、コンセプトを明確化しました。ただし、ここでもみなさまからいろいろなご指摘いただきました。簡単に言ってしまうと、「名前が変わっただけではないか?」「看板を変えただけで実態は変わっていないのではないか?」といったご指摘です。そこで、市場区分見直しの目的の実効性向上に向けて、有識者が集まって話し合っていこうということで、通称「フォローアップ会議」を2022年7月に開設し、いろいろなことを話し合ってきました。【参考】PBR(株価純資産倍率) ※検討当時(2022年7月)のデータ
石川:その中で出てきたのが、PBR1倍割れ問題です。みなさまもニュースなどで聞いたことがあるのではないかと思います。スライドのデータは検討当時のもので古いのですが、左側に市場区分別のPBR分布を載せています。プライム市場だと50パーセントの会社が1倍割れ、スタンダード市場では64パーセントが1倍割れです。右側にはPBRの海外比較を載せています。PBR1倍割れが米国では5パーセント、欧州では24パーセントに対し、日本では43パーセントと突出しているのがわかるかと思います。
富山:市場再編の前は、プライム市場、スタンダード市場に相当する会社もPBR1倍割れが当たり前のような状況だったため、現状を見るとかなり変わってきていますね。
石川:おっしゃるとおりだと思います。あらためてPBR1倍割れを簡単にご説明すると、要するに、企業価値、時価総額が簿価を下回っている状態です。そのため、投資家のみなさまからすると、会社を解散して資産を分配してもらったほうが、その会社の株価を売って得られるお金よりも大きいことになります。ただし、実際に日本の企業がそのように赤字を累積し続け、将来的に企業価値を毀損していく状態にあるかというと、そうではありません。みなさまも「国内上場企業の3月期の純利益が3期連続で過去最高を更新した」というニュース等をご覧になったかと思いますが、それを踏まえると、日本の企業は赤字を累積し続けている会社ばかりではないということがわかると思います。
しかし、市場からは将来的に企業価値を毀損していく状態にあるという評価をされてしまっています。ここに何があるのかというと、投資家のみなさまと上場会社のみなさまのミスコミュニケーションが発生しているのです。要するに、企業の成長ストーリーが投資家のみなさまに届いていないというのが問題なのではないかということが、フォローアップ会議で話されました。そうは言っても、株価は会社だけでコントロールできるものではありません。しかし、成長ストーリーが投資家に届いていないのは問題ですので、市場評価や資本収益性の向上に取り組んでいただきたいと考え、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の要請をしたという流れになっています。
資本コストや株価を意識した経営の要請内容
石川:実際の要請内容はスライドに記載のとおりです。まずは資本コストや自社の収益性について現状分析をして、把握していただき、その上で改善に向けた方針や目標を立てて、それを投資家にわかりやすく開示していただきたいと考えています。最後に、その開示計画に基づいて経営を推進し、それをベースに投資家の方と積極的な対話を実施していただくことも要請しました。みなさまは「いまになって東京証券取引所がIRについていろいろと言い出した」と思っているかもしれませんが、スライドの赤枠にもあるとおり「開示してください」「対話してください」という要請は、実はこの時からお伝えしていました。開示の状況と投資者からの声
石川:実際に要請をした結果どのような変化があったのか、こちらのスライドにまとめています。プライム市場では9割の会社、スタンダード市場では約半数の会社がすでに開示している状況です。プライム市場に関しては、最初に開示した内容をさらに改善し、追加で開示した会社が55パーセントとなっており、着実に定着してきています。
富山:開示内容を年1回見直すということも要請したのでしょうか?
石川:スライド5ページに記載したとおり、年1回以上、進捗状況に関する分析を行って、開示をアップデートするようにお願いしています。スタンダード市場ではアップデートしていただいている会社はまだ少ないですが、プライム市場では半数以上の会社に対応いただいており、だんだんと定着してきている状況です。ただし、投資家の方からのご意見はいまだ厳しいものだということを、スライド6ページ右側の図が示しています。こちらは企業の取組状況のイメージを図示したものですが、自律的に取組みを進める企業群①はプライム市場で1割から2割、スタンダード市場では1割程度ではないかと言われています。その他の多くの企業が企業群②です。開示はしていただいていますが、まだ投資家の目線に届いていない、改善が期待される企業になります。そして、企業群③についてはそもそも開示にも至っていないグループで、②と③が過半数を占めているのが現状です。スライド下段には投資家からの声を記載していますが、厳しい声が届いています。本日は生の声をお伝えするのがテーマですので、そのままご紹介できればと思います。「そもそも投資家の声を聞こうとしていない会社が多い」「全く面談ができずに、取材を拒否される」といった不満が届いています。また、「IRの専任を置いていない」「IR体制に問題がある会社が多い」という声もあります。さらに「リソース不足を理由に十分なIR体制を築かないのはいかがなものか」という厳しい声も届いています。
富山:スライド右側の図は、投資家から見た企業の取組状況のイメージということですね。
石川:おっしゃるとおりです。東京証券取引所が勝手に分類したわけではなく、投資家の声を集約したデータになります。
富山:つまり、事業会社側もある程度は開示をしているものの、やはり投資家に届いていないと言いますか、そのようなギャップの表れでもありますよね。石川:ご指摘のとおりだと思います。開示の状況と企業の取組状況イメージを見比べると、上場会社側と投資家側にこれだけギャップがあるというのがわかるかと思います。そのような状況だからこそ、今回、IR体制の整備義務化を制定しました。多くの会社はIRの意義をしっかりご理解いただき、取り組んでいただいているのですが、面談を拒否するような会社があることも事実です。そのため、上場会社であること、パブリックカンパニーとして上場することを選ばれたことを十分に理解した上でIR体制に取り組んでいただきたいと考え、整備義務化という流れになりました。
「IR体制の整備」の内容
富山:続いて、「IR体制の整備」についてです。必ず対応しないといけないことはわかるのですが、実際にどこまで対応しないといけないのでしょうか? 必須で対応すべきことと、余裕があれば対応することなど、規則の範囲等を一度整理していただきたいです。石川:このようなご質問をよくいただくので、マストでやることと、ベターでやることを整理しながらご説明できればと思います。「IR体制の整備」の規則的な部分をお話しします。企業行動規範の中で明文化されているのですが、スライドには記載がないため口頭で読み上げます。「上場会社は、株主及び投資者との関係構築に向けて必要な情報提供を行うための体制を整備するものとする」かなり抽象的で申し訳ないのですが、ここでは2つのステップに分けてご説明します。1つ目のステップとしては、自社に必要なIR体制について検討・整備していただくことです。2つ目のステップとしては、見直した体制についてコーポレート・ガバナンスに関する報告書に記載していただくことです。必須で求めている内容は、実はこの2点だけです。
富山:IR体制というのは、専任スタッフを配置しないといけないのでしょうか? 人員に余裕がない場合は、他部署と兼務でもいいのですか?また、気になったのは、IR担当役員を選定する必要があるかどうかです。仮にそれができていなかったら罰則があるのでしょうか? 石川:よくご質問をいただくのですが、必ずしもIR担当役員や専門部署を設置する必要はありません。今回の規則ではそこまでは求めていません。会社の事業規模や株主構成によって、どこまで人材を割けるかは変わってくると思いますので、あくまで自社の状況を踏まえて整備していただければ、規則に抵触することはありません。罰則があるかどうかについては、先ほど企業行動規範に追加したとお伝えしましたので、規則を守らない会社に罰則を科すことも規則上はできます。ただし、東京証券取引所としては罰則を科したいから規則を設置したわけではなく、IRに積極的に取り組んでいただきたいという思いが起点ですので、そちらについては後ほどご説明できればと思います。
【参考】コーポレート・ガバナンスに関する報告書への記載について
石川:コーポレート・ガバナンスに関する報告書への記載について補足します。「IRに関する部署(担当者)の設置」の補足説明欄に、「IR担当役員」「IR担当部署」「IRに関する窓口」等を書くことが想定されていますが、電話番号やメールアドレス等を記載する会社もあります。投資家の方がすぐにアクセスしやすいように整えていただくことが望ましいかと思います。ただし、形式的に担当役員や部署、窓口を置いて、それをコーポレート・ガバナンスに関する報告書に書けばOKというわけではないことを、あらためて強調したいと思います。実は9割以上の会社がコーポレート・ガバナンスに関する報告書に記載している状況なのですが、できている会社についても、今の体制が投資家のみなさまに対して十分な情報開示や建設的な対話になっているのかという観点で見直しを行い、その結果を書いていただきたいのです。「書いてあるからいいや」とは考えないでいただきたいと思います。富山:投資家側からすると、対話ができている会社は本当にごく一部ではないかというギャップがありますので、そのあたりは事業会社としてもきちんと当事者の声を聞いて対応していただきたいと思います。IR活動の意義
石川:ここからは「自社は規則に抵触しないことがわかったからいいや」と思っていただきたくなくて、設けたパートとなります。規則上求めていることは本当に最低限なのですが、先ほどご紹介したように、投資家の方の目線はもっと上にあるということを、あらためてご説明できればと思います。最近はIRが注目されてきていますが、まだまだ責務と言いますか、やらなければいけないものというネガティブな感覚を持っている会社が多いように私自身も感じています。IRはコストではないということをあらためて伝えたいと思い、こちらのスライドを用意しました。東京証券取引所のIRオンラインセミナー第1回「IRの基本」で、浜辺真紀子氏にご登壇いただいた際の資料です。会社というのは、投資家の方と対話することで投資もしてもらえますし、株式保有も継続していただけます。また、対話する中で会社に対するフィードバックもいただけますので、それを企業価値向上に役立てていただくことで、好循環を回すことができると思います。そのため、上場会社にとってIRは企業価値を向上するものだとポジティブに捉えて、取り組んでいただきたいというのが東京証券取引所としての思いです。富山:こちらのスライドのような資料はよく見るのですが、確かにこの循環は大切だと思います。投資家からのフィードバックを経営に活かすのは重要だと思いますが、IR担当者が経営陣にとって耳障りの悪い内容を報告することは難しいところもあります。そのあたりについて、良い方法はあるのでしょうか? 石川:IR担当者の方ができる努力というのは、限られていると思っています。経営者の方々がIRについて積極的な姿勢や、報告しやすい環境を整えることが最優先であるとは思います。そのうえでIR担当者の方ができることとして、私がIR有識者の方に聞いたお話としては、まずは耳当たりの良いことを報告した後に、「投資家はこのようなことを求めていて、これに取り組めばもっと評価されますよ」と伝える方法があるそうです。小手先のテクニックにはなりますが、最初から悪い面を伝えるよりも、ポジティブなフィードバックを交えながら話すことも有用かと思います。「IR体制の整備」の先へ
石川:我々も日本取引所グループとして上場している企業ですので、自分たちの首を絞めるようなかたちの内容ですが、あらためて、今回の「IR体制の整備」は最低限の対応であるということをお伝えしたいと思います。投資家の目線はもっと先にあり、十分な情報開示や建設的な対話を行っていただくことで企業価値が向上していきます。繰り返しになりますが、みなさまには前向きに取り組んでいただければと思います。その上で、東京証券取引所も要請して終わりにはもちろんしません。後ほどご紹介するような事例集の提供やIRセミナーの開催等を行い、企業と一緒に伴走する姿勢でみなさまをサポートできればと思っていますのでよろしくお願いします。投資者からの期待(総論)
石川:こちらのスライドでは、投資家からの期待をまとめています。文字が多くて申し訳ありません。先ほど、投資家の方の目線はもっと先にあるとお伝えしましたが、投資家が求めていることは2点です。1点目は、上場会社の経営者がIR活動を通じて、自らの言葉で将来の経営戦略やビジョンを発信することです。2点目は、投資家と対話することで得たフィードバックを経営上の課題として認識した上で、企業価値につなげていくことです。大枠としてはこの2点を投資家の方は求めています。【参考】開示状況の違いと株価の推移
石川:いろいろお伝えしてきましたが、言葉を選ばずに言うと「きれいごと」のように感じた方もいるかと思いますので、開示の積極性が株価に影響を与えているという1つのファクトを提示できればと思います。スライドのグラフは、2023年3月末を100として、上場会社を5つのグループに分類して株価の推移を追ったものです。赤のグループは「この会社は良い」と投資家の方から評価を得られた会社で、事例集に載っている会社群です。紺のグループは要請に応じて開示した上で、さらにその内容を改善し、更新した会社群です。青のグループは初回の開示は行っていますが、まだアップデートはしていない会社群です。水色のグループは検討中、グレーのグループは未開示の会社となっています。ご覧のとおり、プライム市場、スタンダード市場の両方とも、事例集に載っている赤のグループが大きく上昇しているのがわかるかと思います。正直なところ、これは当然だと思います。投資家から「良い」と評価されたということは、投資家と目線が合っているため、将来の期待感のようなものが株価に表れたわけです。一方で注目いただきたいのは、初回開示済みの紺とアップデート済みの青のグループです。投資家からいろいろと厳しいご意見はありますが、それでも検討中の水色や未開示のグレーのグループと比べると、積極的な開示を行ったことでこれだけの差が出ており、最初に見た時は驚きました。したがって、きれいごととは思わずに、このような企業側の姿勢も投資家は見ているということをみなさまもご理解いただいた上で、積極的にIRに取り組んでいただければと思います。
富山:内容はともかく、まずは情報を出すことが本当に大事だと思っています。投資家からすると、開示がなければ情報量が少ないため当然買えません。シンプルにそこに尽きると思います。
石川:判断材料をどんどん提供していくことで、資本コストもどんどん下がっていき、それが株価に反映されるということが表れたグラフですので、やはり積極的な情報開示が重要なのだと思います。
改善が期待される事例
石川:ここからはIR体制とIR活動に関する投資者からの声を具体的にご紹介していきたいと思います。こちらのスライドは、7月に公表した資料です。すでにご覧いただいた方もいるかと思いますが、いろいろと補足しながらご説明できればと思います。まず、IR体制について改善が期待される事例についてです。1つ目は、IR活動のための体制がきちんと整備されていないケースです。スライド左上の事例は「当社のIR担当は、管理部門が兼務しており、IR体制が十分ではないので、株主との個別面談には原則として対応していない」という実際にあった会社とのやりとりを元にご紹介しています。投資家からしてみれば、多忙を理由に面談を断るぐらいなら、十分な体制を整えてほしいわけです。これは別に兼務が悪いと言っているのではなく、兼務だったとしても、会社の中長期的な経営戦略や資本政策、将来のビジョンについて話せる人がしっかりと面談に応じられるような体制を最低限整えていただきたいと思います。また、スライド左下には「IRについては、担当部が所管しており、経営陣による説明会や個別面談は実施していない」という事例もあります。経営陣がIRにあまり積極的でない会社や、経営陣と担当者の方の説明にずれが生じているような会社は、やはり投資家から良い評価を得られず、不満の声が上がっているのが現状です。そのため、みなさまも経営陣と担当者の方との間でしっかり密な連携が取れているかどうか、もう一度よく見直していただいたほうがいいと思います。投資家の方が一番気にするのは、自分たちが挙げた指摘が経営層に届いているのかという点です。そこがしっかりできているかどうかを見直していただくことで、これからのIR体制がより良くなっていくかと思います。中には、先ほどお話があったように、担当者の方が忖度してなかなか経営層に報告できない場合もあります。報告しやすい環境を整えることは経営層の仕事になるかもしれませんが、担当者の方も臆せず、自社のためを思って厳しいご意見はなるべく報告することを意識したほうがいいと思います。
富山:IRの問い合わせ窓口に個人投資家から直接電話があった時に、リソースが割けなくて対応できない場合、メール対応を行うのはいかがですか?
石川:メール対応も有効だとは思います。もちろん直接お話しいただいたほうが個人投資家の方もわかりやすいですし、安心感はあるとは思いますが、後回しにするよりもメールで対応することは有効かと思います。
投資者から評価されている事例1(東亜建設工業①)
石川:ここからは、IR体制について投資家から評価されている事例をご紹介できればと思います。はじめにお断りしますが、あくまで東京証券取引所が「良い」と言った事例ではなく、100を超える投資家といろいろな面談をして、その声を集約して作ったものになります。1社目は東亜建設工業です。こちらの会社が評価されているポイントは、IRに特化した部署の設置や専門人材の増員によって、IR体制を充実させているところです。そうは言っても、リソースを割くのはなかなか難しいとは思います。やはり人員が限られている会社は多いですし、同様の悩みを多くいただきます。そのような会社に参考にしてほしいのは、東亜建設工業がスポンサードリサーチの導入などによって、外部リソースも活用しながらIRに取り組んでいるということです。リソースを割くのは難しいという会社も、外部リソースを活用していただけたらと思います。また、決算説明会の早期化や、和英による書き起こしの配信など、タイムリーな情報発信について工夫している点も、評価されているポイントの1つです。投資者から評価されている事例1(東亜建設工業②)
石川:私が一番推したいポイントはこちらなのですが、東亜建設工業の良いところとして、対話で得られたフィードバックを取締役会に定期的に報告していることが挙げられます。きちんと経営層に報告している点が評価されています。先ほどもお伝えしたとおり、投資家のみなさまは自分たちのフィードバックが経営層にしっかり届いているかどうかを気にします。東亜建設工業はそのような体制が整えられていますし、きちんと資料に落とし込んでいるところも、投資家のみなさまの安心感につながっているのではないかと思います。投資者から評価されている事例2(ダイト)
石川:2社目はダイトです。評価されているポイントとしては、IR部門を社長・CFOの直轄とし、うまく連携させながらIR活動を充実させている点が挙げられます。このように直轄組織にすることで、先ほどご紹介した悪い事例である経営層と担当者とのずれもなくなりますので、投資家からの評価の高さに表れた事例となります。富山:私も営業活動などで、事業会社のお客さまと打ち合わせをしますが、この2年、3年で組織体制が変わり、IR部門が社長直下になった会社は比較的多い印象があります。
石川:形式的にも直轄とすることで、経営陣と担当者が接する機会が増えるため、報告しやすい環境となり、フィードバックがなかなか上げづらいという課題も解決すると思います。そのようなところから変えていただくのはいいのではないかと私も思っています。
投資者から評価されている事例3(三陽商会)
石川:次に、三陽商会の事例です。評価のポイントとしては、PBR改善計画の一環でIRに関する専門部署を新設し、開示を拡充しているという点で非常に評価されています。ここでもやはり、専門部署の設置というのが評価ポイントとなりました。もう1つの評価ポイントは、東亜建設工業と同じく、外部リソースをうまく活用しながら、説明会の書き起こしや英訳などの情報開示を充実させている点です。スライドに記載した資料が小さくて申し訳ありませんが、実はここでログミーFinanceが紹介されています。
富山:本当にこれはありがたいです。
石川:あくまで投資家が良いと評価した三陽商会が偶然ログミーFinanceを使っていたということで、ログミーと当社に癒着関係はありません(笑)。ログミーFinanceを活用して、個人投資家向けの説明会を開催されているところが評価されています。富山:ありがとうございます。ちなみにログミーFinanceのサービスは、事業会社にとってもっと使ったほうがいいサービスでしょうか? 石川さまから見てそのあたりはいかがですか?石川:個人的な意見になりますが、私はどんどん活用してほしいと思っています。リソース不足で悩んでいる会社は多く、その中でIR活動を充実させるというのは現実的に難しいと思います。ログミーFinanceのような外部リソースをうまく活用することは、このようなかたちで投資家からの評価を得ることにつながるため、非常に有効なのではないかと思います。
富山:ありがとうございます。
投資者から評価されている事例4(アズビル)
石川:続いて、アズビルの事例です。アズビルについても、IRに関する専門部署を設置し、社内部門の連携および株主・投資家とのコミュニケーションを推進する体制を充実させているという点で、投資家から良い評価を得ています。また、統合報告書や事業報告書、ESGデータブックなど、情報発信でいろいろな手段に取り組んでおり、開示を充実させているところも評価されているポイントです。法定の書類や任意の書類の開示だけでもいろいろありますが、最近はSNSやYouTubeなど情報発信の手段が増えているため、自社にとって何が一番良いかと考えながら、いろいろなリソース、情報発信手段をご選択いただければと思います。
富山:今回紹介された各社はログミーFinanceとの接点があります。みなさまIR体制がきちんと充実しているか、人員が揃っているかというと、実はそうでもありません。時価総額1,000億円未満の会社などは、専任の方がいなかったり、2名、3名程度が兼務で行っていたりというような会社が多いと感じています。
石川:やはりIRは数字の知識も必要ですし、コミュニケーション力などいろいろなスキルが必要となるため、すぐに人員を補充するのはなかなか難しい業界だということは、私も最近ひしひしと感じています。そのような会社は、外部のリソースを活用することが本当に有効だと思います。いろいろな会社があると思いますが、活用しながらIR体制を充実させていただきたいと思っています。
投資者から評価されている事例5(パイロットコーポレーション)
石川:続いて、パイロットコーポレーションの事例です。こちらの事例は非常におもしろく、「従前はIRにあまり注力していなかったようだが、この2年ほどでIRの専門部署を設けて体制を見直した結果、IRが良くなった」というようなコメントが届いています。さらに「投資者と積極的に向き合う姿勢は、他の企業にも非常に参考になる」とまで、投資家に言わせています。やはり投資家は見ているのだということを、あらためて実感した事例です。「事例集に載っているような企業は、最初からピカピカだろう」というようなイメージを持つ方もいると思いますが、この事例のように「前は良くなかったが、良くなった」などと、投資家はしっかりと見ています。ぜひ、みなさまも「常に投資家から見られているのだ」と念頭に置きながら、IRに取り組んでもらえればと思います。また、パイロットコーポレーションも、新たにIRに関する専門部署を設け、IR担当役員を統括責任者とする体制を構築したという点で評価を得ています。投資者から評価されている事例6(富士通)
石川:IR体制の好事例の最後は富士通の事例です。富士通については、CEO直下にIR担当部門を設置しており、やはり経営層直轄のラインを作っているという点で評価を得ています。また、ここまでできる会社は少ないかもしれませんが、海外にIR担当者を駐在させ、海外投資家がアクセスしやすい体制・環境を整備し、海外情報提供を充実させているところもポイントです。株主に海外投資家がいる場合には、ここまですると非常に投資家からの評価が高いという事例になります。いろいろとご紹介してきましたが、まとめスライドを作ればよかったと反省しています。みなさまも共通項などが見えてきたと思いますが、やはり評価されている事例は、専任部署を設置し、十分にリソースを割いている会社です。加えて、経営層との密な連携をとっている会社です。投資家からはこのような会社の評価が高いという状況です。先ほど、規則の観点では専任部署や担当役員がなくてもいいとご説明しましたが、やはり投資家から評価されるには、このような専任部署の設置、経営層との密な連携が取れている体制が重要だというところを、あらためて認識してもらえればと思います。その上で、もしすぐに人員を用意することが難しいのであれば、外部リソースの活用もぜひご検討いただければと思います。改善が期待される事例
石川:続いて、IR活動について改善が期待される事例と、評価されている事例をご紹介します。まず、改善が期待される事例です。IR説明会による情報提供を、対面の参加者に限定しているというケースです。対面開催のみとして、オンラインによる配信をしていない会社がまだいらっしゃるということです。そのような会社に対して、投資家からは公平な情報提供がされていないという不満の声が上がっているような状況になります。私も機関投資家の方とお話しする機会がよくありますが、やはり投資家には、なるべく多くの会社の説明会に参加したいという思いがあるようです。「オンラインにしてもらうと、いろいろな会社の説明会に参加できるからとても助かっている」という声を聞きます。上場会社のみなさまには、いろいろな投資家に情報を届けるという観点から、オンラインの活用もご検討いただければと思います。スライド下段に記載の事例は、説明会の質疑応答部分のスクリプトをカットしているというケースです。質疑応答の部分が隠されてしまっていることは、情報開示が不公平ではないかというのが投資家からの意見です。説明会の場でどのような質問が出て、どのような議論がされたのかということは、参加していない投資家には非常に重要な情報になります。隠してしまうと「企業として何か言われたくないことを質問されたのではないか?」というような邪推をされることもあります。なるべく質疑応答も含めてスクリプトを公表したほうが、投資家からの評価が高いということです。
富山:私もIR業界に10年ほどいますが、コロナ禍前はオンライン開催もありませんでしたし、対面形式の説明会が中心でした。今はオンラインも普及していますし、Webメディアでいろいろなスクリプトが配信されています。投資家側の要求としては、やはり当たり前の状態を求めていると言いますか、事業会社側もそれに合わせなければいけないと思います。
石川:オンライン開催が不可欠というのはおっしゃるとおりで、上場会社のみなさまはそれに合わせていく必要があるのだと思います。最近では投資家がAIを使っているので、その対策もしていますよね。そのように目線を合わせていくことが非常に大事になります。
改善が期待される事例
石川:続いて、改善が期待される事例の2つ目です。合理的な理由もなく、個別面談に応じないというケースです。よくあるケースについて、実際のやり取りを紹介しています。投資家から面談依頼が届いても極力返信をせず、最後になって「日程の都合がつかないので面談をお受けできません」というような返信をされたという事例です。また、「公平性の観点から、IRに関する個別面談は一律に実施していません」といった事例もあり、投資家から不満の声が届いている状況です。IRへの注目が高まっていく中で、このような会社に対する不満の声は、本当に日に日に増えてきています。
富山:確かに増えてきている印象がありますね。
石川:また、断る理由についても、フェアディスクロージャーを理由とする会社があるようですが、投資家も別にインサイダー情報を聞きたいわけではありません。足元の課題や経営者の認識、考え方を知りたいという思いで面談を申し込んでいますので、フェアディスクロージャーを理由に面談を断るというのは少し違うのではないかという気がしています。また、社外取締役との面談を断られるという会社も多いと聞いています。こちらについては、社外取締役は本来であれば少数株主の立場を代弁する方ですから、そのような方と投資家がお話ししたいというのは、当然のことなのではないかと思います。本当に多忙なケースもあるとは思いますが、中には、社外取締役の事業知識があまり高くないため、なるべく対応をさせないというかたちで断るケースもあると聞いています。ただ、投資家も、社外取締役は他の方ほど知識が高くないということを重々承知の上で面談を申し込んでいます。投資家が聞きたいことは、取締役会などの場でどのような話し合いがされているかというところにありますので、社外取締役との面談を依頼された場合は、積極的にご対応いただけるといいと思います。
投資者から評価されている事例7(IDホールディングス)
石川:ここからは再び、投資家から評価されている事例についてご紹介します。まず1社目がIDホールディングスです。こちらが評価されているポイントは、社長が自ら海外投資家と直接面談する機会を多く設け、業績が好調である時も不調である時もIRをおろそかにせず、積極的に開示している点です。やはり、どの会社も業績が良い時にはIRに取り組みたいと思いますが、悪い時にも投資家にサプライズを与えないように、正確な情報を開示することが重要になります。ぜひ、こちらの事例を参考にしてもらえればと思います。投資者から評価されている事例8(インターネットイニシアティブ①)
石川:続いて、インターネットイニシアティブの事例です。こちらが評価されているポイントは、面談等を通じてエクイティストーリーをうまく説明しているという点です。具体的には、成長戦略やキャッシュアロケーションをわかりやすく開示しているところが、非常に評価されています。最近よく自己株取得をしたり、政策保有株式を売却したりする会社があります。それ自体は良いことなのですが、そこで得られたキャッシュをどのようにしていくのか、そこまで開示している会社は意外と多くはないというところが私の印象です。インターネットイニシアティブはわかりやすくキャッシュアロケーションを開示しており、良い事例だと思います。投資者から評価されている事例8(インターネットイニシアティブ②)
石川:もう1点、インターネットイニシアティブの良いところとしては、英文資料の同日開示や、質疑応答部分も含めた説明会資料を開示しています。先ほど申し上げた悪い事例とは反対に、投資家に不公平感を与えないということが評価されています。投資者から評価されている事例9(味の素)
石川:次の事例は、味の素です。スライドの右側に記載していますが、味の素は社長が自らの言葉で説明していることが伝わる資料となっており、非常に良いと評価を受けています。私も投資家の方とお話ししていると、やはり経営トップの言葉を聞きたいという意見をよく聞きます。時価総額が小規模な会社ほど、人に投資をする会社が多いということで、トップの方が説明会に立つというのはもちろんですが、開示資料にそれがわかるように記載されているところが評価されています。
投資者から評価されている事例10(資生堂)
石川:続いて、資生堂の事例です。資生堂の良いところは、株主や投資家から受け取った具体的な要望を踏まえ、それを基に説明会や対話イベントの実施につなげている点です。先ほどから何度もお話ししていますが、投資家が気にするのは、自分たちの要望がしっかりと経営に活かされているかどうかです。それを整理した上で開示している会社というのは、投資家からしても非常に安心感があり、信頼が厚くなっていると思います。投資者から評価されている事例11(オリックス①)
石川:続いての事例は、オリックスです。日本企業に多い代表的なコングロマリット企業の1つです。コングロマリット・ディスカウントという言葉を聞いたことがあると思いますが、やはりコングロマリットなところがあると、それがマイナス要素として引かれてしまうという部分があると思います。コングロマリット企業が「ディスカウント」ではなく「プレミアム」となるためにはどうすればいいか機関投資家に聞いたところ、事業構造をしっかりと開示したほうがいいということでした。また、なぜ多角化しているのかをきちんと説明してもらえれば、ディスカウントではなくプレミアムになる可能性が十分あるというお話もありました。その点でオリックスは、個別での面談回数・機会を増やしていたり、インタラクティブに会話できるように少人数で対応したりしているので、このあたりは手厚くフォローされているのではないかと思っています。
投資者から評価されている事例11(オリックス②)

上場会社サポートグループによるIR活動支援施策
石川:最後に、IR活動に関する東京証券取引所のサポートについてご紹介できればと思います。東京証券取引所も、要請だけではなくしっかりとサポートも行っています。例えば、スライド左側に記載していますが、まずはオンラインセミナー配信です。上場会社の担当者とお話しすると、「どうやって勉強したらいいのかわかりません」というような声をいただきます。上場会社サポートグループでは、「IRの基本」から「海外投資家とのIRのポイント」「海外機関投資家の目線」など、さまざまなスキルアップコンテンツを用意しています。スライドに動画のQRコードを記載しましたので、自社のレベルに合うものを、ぜひご視聴いただければと思います。他にも「1人で対応しており、なかなか相談できる人がいません」「孤独です」といった悩みもよく聞きます。そのような方々に、IR有識者に直接相談できる機会を提供したいと思っています。加えて、IR担当者間のネットワーキング機会やIRワークショップも開講したいと思います。このように対面型の相談会やセミナーを行っていますが、好事例集と同じようなかたちで、「他社事例についても知りたい」という声もいただきます。実は、IR活動に関する賞を受けられるような、IR活動に定評がある会社に対してインタビューを行い、その記事を配信する活動も行っています。現在は4社ほど掲載していますが、順次増やしていく予定です。事例集と合わせて、このインタビュー記事についても、ぜひご確認いただければと思います。また、スライド右側でご紹介しているように、機関投資家との接点を創出するような施策についても取り組んでいます。IR担当者からは、「機関投資家の方とお話をしたことがなく、どんな情報を求めているのかわからない」「足切り基準があると聞いたけど、どういった基準があるのですか?」など悩みを抱えているという声を聞きます。それを解消できる機会を設けようということで、現役の機関投資家を招き、スライドに掲載した写真のように機関投資家を囲むようなかたちで、質問攻めにできる会を用意しています。
富山:ちなみにスライドの写真の時は、IR担当者は何名くらい参加したのですか?
石川:こちらは人数を絞っており、40名から50名です。もう少しお呼びしたいところですが、やはり質問や対話の機会を十分に確保したいという観点から、人数を絞って実施しています。そのおかげで満足度は高く、5段階中4.8など、非常に高い評価をいただきました。ただ、申し込んでもなかなか参加できないというご不満の声も届いていため、こちらについては、機会や開催回数を増やし、全国でも開催できればと現在準備中です。「Target」を通じてみなさまに周知をする予定です。ぜひチェックしていただければと思います。最後になりますが、もう少し人数を増やした対面での機会を持てないかということで、先月は野村アセットマネジメントと共催で、機関投資家についてご説明するセミナーを開催しました。こちらは現在期間限定でオンデマンド配信中ですので、ぜひご参考にしていただければと思います。駆け足になりましたが、私からのご説明は以上となります。
質疑応答:流動性、出来高を上げるための施策について
富山:「流動性、出来高を上げるための施策を聞きたいです」というご質問です。石川:流動性について課題と感じている会社は、確かに非常に多いです。事業規模が小さい会社を前提にお話しできればと思います。まずは、個人の投資家を増やすことだと私は思っています。やはり、ある程度流動性が増えないと、機関投資家はなかなか参入してくれません。その数字に持っていくまでは、個人投資家のIRに注力されていいのではないかと思います。施策としては、ホームページの充実や、個人投資家向けの説明会および個人投資家向けIRイベントに参加するなどが挙げられます。また、これには賛否ありますが、株主優待を使って自社の製品をよりよく知ってもらうという手段もありますし、配当などさまざまな施策があります。そちらはログミーさまも詳しいかもしれませんが、いろいろな施策があると思いますので、自社に合うものをご選択いただければと思います。加えて、投資家の裾野を広げることも重要だと思っています。何が言いたいかというと、ヘッジファンドなどの参入を嫌がらないでくださいということです。ヘッジファンドに対しては、短期売買などネガティブなイメージを持たれている方もいるかと思います。ただ、市場への流動性供給という観点では、ヘッジファンドの役割はとても大きなものだと思っています。このような新規の投資家の参入を避けずに、投資家の裾野を広げていただくことは、初期段階で流動性を上げるというところでは重要なのではないかと個人的には思います。
質疑応答:アクティビストへの対応について
富山:昨今、アクティビストの存在についてよく話題になっています。実際にアクティビストから問い合わせがあった場合、IR担当者としての初期対応について、何かアドバイスがあればお願いします。石川:アドバイスできる立場ではないのですが、お伝えできることとしては、相手がアクティビストだからといって、特別な対応を取る必要はないと私は思っています。自社の課題をしっかりと把握し、どのような質問があったとしても真摯に答えるということは、事前に準備できることだと思います。対応は他の投資家と何も変わらないのではないかと思っています。みなさまの中には、アクティビストは何か突拍子もない質問や要求をしてくるのではないかと思っていたり、勘違いしたりしている方が多いかも知れません。アクティビストとお話しされた会社の話を聞くと、彼らが言っていることに理不尽なことはなく、「耳の痛い話はありますが、参考になった」という話を聞いたりもします。もちろん「アクティビストの言うことが全部正しい。全部やらなくてはいけない」ということではないと思いますので、指摘されたことを会社の中で検討し、できるところは対応すればいいと思います。言い方は悪いですが、無料のコンサルのようなかたちで、良き相談相手として捉えるのがいいのではないかと思っています。
富山:それは意識としていいですね。「無料のコンサルを受けるつもりで」ということですね。石川:そうですね。普通にコンサルを受けると大変なことになりますが、向こうから来てくれるコンサルです。富山:日本でのアクティビストは非常にイメージが悪いのですが、本来はアクティビストも企業価値を向上させるという目線は、おそらく事業会社と一緒なのだと思います。したがって、しっかり対話をしていくことはとても重要だと思います。
石川:おそらくアクティビストは、企業価値が向上すると思って来てくれています。ネガティブに捉える必要はないのではないかと思います。
質疑応答:小規模上場企業におけるIRについて
富山:「時価総額が50億円未満と、ごく小規模の上場企業において、投資家から求められるIRについて知りたいです。説明会などを開催したほうがいいでしょうか?」というご質問です。石川:50億円未満の会社ということなので、企業としては成長過程で、株主は個人投資家が中心なのではないかという前提でお話しできればと思います。先ほどと同じく、初期段階は個人投資家向けのIR活動に注力していただくことがいいのではないかと思います。特にお話ししたほうがいいことは、今後の成長ストーリーです。機関投資家の方に聞いたのですが、企業規模が小さい、これから成長していく会社については、「どのように市場のマーケットシェアを取っていくのか?」「競争優位性は何か?」「大手参入に勝てるのか?」といったところを知りたいと考えています。これは別に機関投資家に限らず、個人投資家の方も同じように気にされるポイントだと思いますので、そのようなところをしっかりご説明いただくのがいいのではないかと思います。機関投資家の方にIRをしていくという段階については、同規模の会社や同じくらいの時価総額の会社の株主構成を見て、自社の潜在的な株主になってくれる方に積極的にIRを行うといいと思います。SHIFTの取り組みなど、弊社の好事例でも取り上げていますので、そのようなものも見ていただければと思います。富山:国内でもいろいろなスタイルのファンドがありますので、会社のステージによって、中小型なのかアクティブなのかなどとターゲティングして、そのような運用をするプレーヤーにアプローチをしていくといいと思います。石川:そうですね。効率的に段階ごとにアプローチを変えていくといいと思います。
質疑応答:個人向けIR説明会等の社長登壇について
富山:「個人向けのIR説明会など、社長が登壇する企業とそうでない企業と、どれくらい効果の差がありますか?」というご質問です。石川:効果の差についてはデータがないので申し上げられないのですが、ただ、投資家の方は、トップの声を聞きたいという思いを持っています。富山:先ほどのスライドにもありましたね。石川:事例のところで取り上げました。そのような方が多いので、やはり相手が個人投資家の方であっても、機関投資家の方であっても、経営層が積極的にIRをしていただくことは、非常に重要だとは思います。効果の差までは申し上げられず、申し訳ありません。
最後に
富山:本日参加している会社さまは、だいたい時価総額500億円未満の会社が中心ですので、他の会社がどのようなIRを行っているのか、事例のところなどは非常に参考になったと思います。本当にありがとうございました。石川:こちらこそ貴重な機会をいただき、ありがとうございます。上場会社サポートグループでは、みなさまから聞いた声を活かしています。もし、このような企画をしてほしいなどあれば、いつでもお声がけください。
富山:本日はありがとうございました。
石川:ありがとうございました。