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データで判明した「貯蓄率が高い」人はどんな人?

2025/09/19 15:00

将来不安と貯蓄の関係 人が貯蓄をする理由はさまざまだ。中でも病気になったときの医療費や介護費用、あるいは急に仕事を失って収入が減るといった事態に備えて、元気なうちにお金を蓄えておこうとする考え方があり、「予備的貯蓄」と呼ばれている。将来不安に備えるための貯蓄のことだ。 もしものために保険に入っておくような感覚にも近

将来不安と貯蓄の関係

人が貯蓄をする理由はさまざまだ。中でも病気になったときの医療費や介護費用、あるいは急に仕事を失って収入が減るといった事態に備えて、元気なうちにお金を蓄えておこうとする考え方があり、「予備的貯蓄」と呼ばれている。将来不安に備えるための貯蓄のことだ。

もしものために保険に入っておくような感覚にも近い。内閣府の最新調査※によれば、このような予備的な理由で貯蓄をしている人は、そうでない人よりも比較的貯蓄率が高い傾向にあることが分かった。

※内閣府「令和7年度年次経済財政報告」(2025年7月29日公表)

予備的貯蓄動機と貯蓄率

予備的貯蓄動機と貯蓄率を表した図表

特に20代と60代で予備的貯蓄をしている人とそうでない人の差が顕著となっている。なお40代は同じくらい、30代では若干そうでない人の方が貯蓄率が高いという逆転現象が生じている。

●中編「変わる「貯蓄の目的」ランキング “順位下落”の教育費の一方で、増えたものは?」

物価の上昇と貯蓄の関係

予備的貯蓄をする人は経済面で将来に不安を感じている傾向があると考えられる。つまり、物価の動向や将来の収入についての考え方と関係があるかもしれないということだ。

食品や日用品の価格が少しずつ高くなってくると、「このまま物の値段が上がり続けたら将来の生活費も増えるかもしれない」と不安になり、その結果「今のうちに少しでも多く貯蓄しておこう」と考える傾向にあるのではないか。調査では物価上昇率との関係を調べている。結果、予備的貯蓄動機を持つ人は物価上昇率を高めに考える傾向にあることが分かった。具体的に見てみよう。

予備的貯蓄動機と経済認識

予備的貯蓄動機と経済認識を表した図表
出所 内閣府「令和7年度年次経済財政報告」

上のグラフで物価上昇率が「変わらない・低下」と答えた割合に注目すると、全体では実感、予想物価上昇率とも2割近くがあてはまる。対して、予備的貯蓄動機がある人の回答はその半分以下にとどまっているのだ。

一方で予想賃金上昇率、つまり「給料が上がるかどうか」という見通しについても調べているが、それほど強い相関は見られなかった。つまり人々は収入の増加よりも支出の増加に対して敏感に反応しているといえそうだ。

実際にどれくらい貯蓄に差が出るのか

調査では、「不慮の事態に備える」と答えた人について「予備的貯蓄をしている人」と定義し、年齢や世帯収入などの条件を考慮した上で貯蓄率を比較した。その結果、予備的貯蓄をしている人は、していない人よりも平均して約1%ポイント多く貯蓄していることが分かった。

特に一人暮らしの人では、その差が約2%ポイントとさらに大きくなっている。これは一人暮らしの人が病気や介護が必要になったときに頼れる人がいないかもしれないという不安を強く感じている可能性があるためだろう。

年々、一人暮らしの人が増えていることからこうした不安が全体の貯蓄傾向にも影響を与えている可能性がある。

予備的貯蓄動機の貯蓄率への影響

予備的貯蓄動機の貯蓄率への影響を表した図表

リスクを避けたい気持ちと貯蓄の関係

人によって不安の感じ方は異なる。たとえば、同じ収入でも「何が起こるか分からないからしっかり備えておきたい」と考える人もいれば、「まあ何とかなるだろう」と楽観的な人もいる。

調査では、「仮想のくじ(当たるかどうか分からないもの)にいくらまで払うか」という質問を通じて、どのくらいリスクを避けたいかを測っている。具体的には、「50%の確率で10 万円を得られるが、50%の確率で何も得られない状況」というくじに払う金額を聞いている。結果、若い人ほどリスクを取る傾向があり、年代が上がるにつれて慎重になる傾向があることが分かった。

また、リスクを避けたいと考える人ほど、「今の貯蓄では足りない」と感じる傾向があることも判明している。同様に、先述のくじにいくら支払うか金額を聞いたときに金融資産が「全く足らない」と答えた人の8割以上が「1万円」以下と答えている。つまり、より悪い状態を想定してリスク回避度が高い状態であるのに対し、「十分にある」と答えた人では7割程度となっている。加えて、そのくじに「5万円」以上払うという割合も相対的に高い。

リスク回避度と貯蓄額に対する認識

リスク回避度と貯蓄額に対する認識を表した図表

調査ではこのほか多様な質問を行っているが、全体を通した結果として、収入が上がってもそれがずっと続くかは分からないと感じる人が多く、物価上昇や老後不安から、消費より貯蓄を優先する傾向が強まっていることが浮かび上がっている。人々が不安なくお金を使えると思える社会を迎えるには、将来への安心感を培う施策が必要とされているのかもしれない。

調査概要 白書名:「令和7年度年次経済財政報告」 調査主体:内閣府 公表日:2025年7月29日

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。