子どもの利用、商品拡大、枠の復活…NISAはどうなる?
2024年に従来の制度が拡充、恒久化されたことで若年層を含む幅広い世代に浸透しつつあるNISA。長期・積立・分散に資する投資信託に投資できる「つみたて投資枠(非課税保有限度額年間120万円)」と個別株式や幅広い投資信託に投資できる「成長投資枠(同240万円)」が導入され、両枠の併用が可能となった。非課税保有限度額は合計1800万円(うち成長投資枠は最大1200万円)と拡大し、より便利に長期的な資産形成に取り組めるようになっているが、さらなる制度の充実が図られる見込みだ。
各自のライフプランに応じた資産形成を柔軟に行えるよう、金融庁では2026年度税制改正に向け以下の要望を掲げている。
1.つみたて投資枠の年齢制限の見直し(子ども向け支援)
2.NISA対象商品の拡充
3.非課税保有限度額の当年内の復活
1のつみたて投資枠の年齢制限の見直しについては、現在NISA口座の開設は18歳以上に限定されている。この制限を緩和し、未成年者もつみたて投資枠を利用できるよう対象年齢の引き下げを提案している。実現すれば親が子どもの将来に向けて資産形成を始める環境が整う。
2のNISA対象商品の拡充では、現在つみたて投資枠の商品は金融庁が定めた長期・積立・分散投資に向く条件を満たす投資信託のみに限定されている。そのため、例えばデリバティブ取引を用いた一定の投資信託や毎月分配型などの商品は除外されている。
今回の要望ではどのような商品が対象として追加されるかまでは明言されていないが、そのヒントが税制改正要望と同日に公表された「NISAに関する有識者会議 中間とりまとめ」にある。
どんな商品がつみたて投資枠に追加される?
具体的にはつみたて投資枠の商品について対象投資資産の拡充が挙げられる。「株式に比べてリスクが低く、より安定的なキャッシュフローが望めるアセットクラスをつみたて投資枠の対象商品に含めることも検討されるべき」と提言し、初心者や安定的なキャッシュフローを求める高齢層など、より低リスクでの運用を望む層が安定的な資産形成を行いやすくすることを狙っている。
また同じくつみたて投資枠に関して、商品のベンチマークとなる株式指数についても拡充される可能性がある。現在は他の指数と組み合わせて活用されているヨーロッパやアジア地域などの指数を単体でも対象とすることや、新しく開発された指数も対象として検討する余地があるとしている。
より多様な商品を対象に含めることで個々のライフプランやリスク許容度に応じた柔軟な運用を可能にすることを目指してのことだ。
3の非課税保有限度額の当年内の復活に関しては、より商品の入れ替えをしやすくする狙いがある。現状では運用商品を売却すると、その売却商品の簿価(購入価格)分の非課税枠が空く。ただしその枠は翌年にならないと再利用できない。この不便を解消すべく、売却すれば当年中に再利用できるよう枠の復活制度の導入を要望する。
このほか、口座開設後の本人確認の事務手続きの簡素化なども挙げられる。現在は口座開設から10年後(以降5年ごと)に郵送等によって氏名や住所の確認を行っているが、金融機関・利用者双方の負担軽減を目的に代替策の導入を要望している。
いずれの改正要望も、実現されればさらにNISAを便利に活用できるようになる可能性を秘めている。NISA口座数は約2650万に上る(2025年3月末時点)。国民の約4人に1人が開設している計算だが、より利便性を増すことでさらなる普及が見込まれる。
●変わる可能性はほかにも…後編「暗号資産(仮想通貨)はどう変わる? 総合課税から分離課税導入へ前進か、金融庁が税金見直しを要望」にて詳報する。
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。