政府は、人口減少が進むなかで、経済成長や地域社会の維持などを目的として、2025年6月に「地方創生2.0」を閣議決定した。政策の5本柱の1つに掲げられた「稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生~地方イノベーション創生構想~」では、地方都市におけるスタートアップ企業の創出に向けたエコシステム形成などの施策を示している。起業支援は、雇用の創出や地域経済の活性化、関係人口の拡大など、多方面での効果が期待されている。一般に、人口の多い都市ほど起業がしやすいとされる。国内では、東京圏(1都3県:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への人口流入が続いており、総人口の約3割を占めている。
一方、事業所数は東京圏に約4割、成長が著しい「情報通信業」に限れば、東京圏に約6割が集積している。さらに、起業を後押しする「イノベーション(新技術の発明)」の指標となる特許出願件数は、東京都が全体の過半数を超え、東京圏全体では約6割に達する。起業時の資金調達状況を確認すると、国内スタートアップ企業による資金調達額の約8割が東京都に集中している。このように、起業をめぐる市場環境は、人口以上に東京圏への「一極集中」が進んでいるようだ(図表1)。

1 岡室博之・小林伸生(2005):地域データによる開業率の決定要因分析.経済産業研究所 RIETI Discussion Pater Series 05-J-014
結果は、ホットスポットに分類された自治体数は、東京都が「18」で最も多く、東京圏全体では「51」に達した。一方、地方でも合計「42」の自治体でホットスポットが確認された(図表2)。
ツクリエ「全国自治体の起業支援に関する意識調査」によれば、自治体が起業支援で効果的と考える施策は、「補助金・助成金の交付」、「起業・経営相談の提供」、「起業知識・ノウハウを提供する講座等の開催」である。地方でホットスポットが確認された「福岡県篠栗町・粕屋町」では、新宮町・久山町と4町合同で、2019年から「創業塾」を開催している。また、長野県では2019年からIT産業の集積地を目指して「信州ITバレー構想」を策定し、ICT産業等立地助成金の拡充やU・Iターン支援等を実施しており、「高森町・豊丘村」においてホットスポットが確認された。
今後、人口減少が進むと地方都市での起業が困難になることも懸念される。一方、各自治体の起業支援が着実に実を結んでいる事例もみられる。地方に芽吹いた起業の「ホットスポット」が更に成長する各種施策や取組が「地方創生2.0」で行われることに期待したい。
