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こどもNISA、暗号資産…私たちの資産形成が変わるかもしれない改正「押さえておきたい」ポイント3つ【金融庁2026年度税制改正要望】

2025/09/24 12:00

押さえておきたい3つの「変わる」可能性 私たちの資産形成が変わるかもしれない。2025年8月29日に金融庁は令和8(2026)年度税制改正要望を提出した。その内容の中から私たちの資産形成について影響があるかもしれない項目がいくつかある。押さえておきたい主なポイントは次の3つだ。 ・新NISAの拡充…つみたて投資

押さえておきたい3つの「変わる」可能性

私たちの資産形成が変わるかもしれない。2025年8月29日に金融庁は令和8(2026)年度税制改正要望を提出した。その内容の中から私たちの資産形成について影響があるかもしれない項目がいくつかある。押さえておきたい主なポイントは次の3つだ。

・新NISAの拡充…つみたて投資枠の未成年の利用、商品の拡充、非課税投資枠の年内復活
・暗号資産(仮想通貨)の課税見直し
・生命保険料控除の拡充の恒久化

税制改正要望では、NISAの充実が筆頭項目に掲げられている。具体的には、①つみたて投資枠の対象年齢を18歳未満にも拡大、②対象商品の拡充、③非課税投資枠の年内復活の3点だ。

運用から得た利益が非課税になるNISA制度は2024年に内容を刷新し、より利便性が高まった。幅広い所得層や世代で利用が広がっており、日本証券業協会の調査によれば年収500万円未満の層が利用者の約7割を占めている※1。

※1 出所:日本証券業協会「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」

また20代以下の口座開設数が1.3倍となるなど、特に若年層において口座開設の伸びが顕著であることが分かる※2(23年12月末との比較、24年9月末時点)。今回の要望でさらなる利便性の拡大を図る狙いがある。

※2 出所:金融庁「NISAに関する有識者会議」(第1回)説明資料

NISAはどう変わる?

まずは利用年齢の拡大が挙げられる。新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つがあり、両方を利用できる。ただしNISA口座の開設には年齢制限があり、ともに18歳以上となっている。この制限を特に初心者が利用しやすいつみたて投資枠について、18歳未満の未成年にも拡大することで、あらゆる世代の資産形成を支援する。

2つ目の商品の見直しについては、つみたて投資枠の商品拡充に対する要望だ。具体的には、対象となる商品の指数(インデックス)に関して、ヨーロッパやアジアの指数単体をベンチマークとする商品の追加などが挙げられる。同時に公表された「NISAに関する有識者会議」(中間とりまとめ)にて検討の余地があると示されており、投資家自身の関心や理解度に応じて選択肢を増やしたい意向だ。

なお初心者層のほか、安定した配当金や分配金を重視する高齢層などに向けて、株式投資よりリスクが低く、より安定的なキャッシュフローが望める投資対象資産をつみたて投資枠の対象に含めることも検討されるべきとしている。

3つ目の非課税保有枠の年内復活については、実現すればより利便性が高まる。

現在、NISAで商品を売却した場合、その商品の購入額(簿価)分の非課税保有枠が空く仕組みとなっているが、空いた分の利用は翌年にならないと利用できない。これを当年中に利用できるように変更することが挙げられた。より機動的に商品入れ替え(スイッチング)をできるようにすることが目的だ。

暗号資産はどう変わる?

暗号資産の税金の仕組みについての見直しも挙げられている。現在、投資信託や上場株式などから生じた利益は主に分離課税の対象となっており、税率は20.315%で計算される。一方、暗号資産の利益は総合課税であり、他の所得と合算されるため最大税率は55%と高くなるケースがある。

暗号資産への投資が国内外で広がっていることを受け、投資家を守るための法律整備とあわせて暗号資産の課税方法を見直すことを狙う。

生命保険料控除はどう変わる?

子育て世帯に恩恵のある改正要望も盛り込まれている。現在、生命保険料の控除について2026年分の所得税における1年間の時限措置が導入されている。具体的には23歳未満の扶養親族がいる世帯の一般生命保険料控除の限度額を2万円上乗せの4万円にする措置だが、これを恒久化することを要望している。

子育て世帯には万が一のことがあった場合への備えなどさまざまな保障ニーズがあるとした上で、子育て支援の観点から将来に向けた保障を安定的に確保できる環境整備が重要であるとの狙いからだ。

金融庁の組織改編―資産運用・保険監督局、銀行・証券監督局の設置

税制改正要望と同時に発表された2025事務年度金融行政方針において、金融庁は自らの「バージョンアップを図る」と明言している。監督局を2局体制とし、「資産運用・保険監督局」および「銀行・証券監督局」を設置することを目指すとしている。

資産運用・保険監督局では、昨今の損害保険業界による信頼を揺るがすような保険金不正請求事案や保険料調整行為事案の再発防止を図るための監督や検査を実施していく。

また、銀行・証券監督局では、大手金融グループが傘下の銀行や証券会社など複数にわたる金融機関を経営していることからそれらの業態間の相互影響やガバナンスを監督、検査することを念頭に置く。併せて、通信・流通等を母体とするデジタル技術を駆使した金融グループの台頭も著しい。これらの業態に対してもグループ全体の戦略や金融事業の位置付けについて議論しつつ実効的な監督を進める意向だ。

監督局の2局体制への移行は、複雑化・多様化する金融ビジネスに対応し、より専門的かつ効果的な監督を行うための体制整備といえる。

投資家に必要なこと

金融庁の令和8(2026)年度税制改正要望および2025事務年度金融行政方針からは私たちの資産運用を取り巻く環境の変化が予測される。より利便性を増すNISAや暗号資産などの新たな動きをとらえ、自身に合った資産形成を行えるよう日ごろからの情報収集が欠かせない。

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。