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連日、日経平均「最高値更新」と目にして…「いま投資しても“高値づかみ”なだけ?」と不安な人が知るべき“ただ1つのこと”

2025/09/25 07:30

「最高値更新」の報道が続く今、投資しても「高値づかみ」になるだけ? 日本の株式市場が連日、高値更新を続けています。この原稿を書いているのが9月22日時点で、日経平均株価は、9月19日につけたザラ場高値の4万5852円を更新できずにいますが、恐らく更新は時間の問題でしょう。4万5000円台に乗せた次のターゲットは5万円

「最高値更新」の報道が続く今、投資しても「高値づかみ」になるだけ?

日本の株式市場が連日、高値更新を続けています。この原稿を書いているのが9月22日時点で、日経平均株価は、9月19日につけたザラ場高値の4万5852円を更新できずにいますが、恐らく更新は時間の問題でしょう。4万5000円台に乗せた次のターゲットは5万円です。

もちろん、このように楽観的な“イケイケ”の雰囲気になっている時ほど、注意が必要であるのも事実です。振り返れば、1989年12月がまさにそうで、3万8915円という高値をつけた時、マーケット関係者の間では、「日経平均10万円説」が、まことしやかに言われていました。

すでにバブル期高値である3万8915円を17.8%も上回っている今の株価は、割高ではないのでしょうか。新NISAiDeCoでこれから資産運用を始めようとしている人たちは、そのように思って、資産運用を始めることに躊躇しているのではないでしょうか。

でも、安値がいくらなのかは誰にもわかりません。

今の時点で資産運用を始められない人は、将来的に株価が大きく調整する局面があったとしても、「まだ下げるはずだ」などと考えて買うことができず、ところがしばらくして株価が反転・上昇した時には、「買い時を逃してしまった……」などと言って、これまた買うことができず、いつまで経っても資産運用に踏み切れない、という状況になってしまう恐れがあります。

結論から申し上げると、もし将来のために資産運用が必要だと思っているならば、今の株価水準に関係なく、とにかく始めなければ話にならないのです。

本当に日本株は割高なのか?

では、今の日本の株価は本当に割高なのでしょうか。

過去の時系列から見ると、日経平均株価が3万8915円の高値をつけた1989年12月時点における、東証1部市場の平均PERは61倍に達していましたし、平均PBRも5.6倍でした。

では、今はどうなのかというと、8月時点の東証プライム市場における平均PERは16.8倍、平均PBRは1.3倍です。バブル期の日本の株価は、もはや何をもってしても説明できないくらいに割高になっていましたが、そこから比べると、今の日本の株価が割高であるとは考えられません。確かに日経平均株価の水準は、バブル期に比べて17.8%も上回っていますが、市場は極めて冷静と見るのが妥当でしょう。

では主要国の横比較でPERの水準を見てみましょう。すると米国のNYダウが24.7倍、ナスダックが34倍、イギリスのFT100が19.8倍、ドイツのDAXが30.7倍、といった数字が見られます。基本的にPERが20倍を超えると割高と見なされる傾向があり、その点では米国のNYダウ、ナスダック、ドイツのDAXなどはいずれも割高と考えられますが、それらとの比較で見ても、東証プライム市場の16.8倍という平均PERは割安です。

もちろん、PERが低いのにはワケがあります。PERは株価を1株純利益で割って求められます。そして株価は、その企業の将来成長性に対する期待値でもあります。その企業がこれからもっと成長する可能性が高いと思えば、投資家はその企業の株式を買うため、株価が上がり、PERも上昇します。つまりPERが低めに抑えられているのは、日本企業の将来成長性に対する期待が低いことの現われでもあります。

では、将来成長性が低いと株式は買われないのでしょうか。

もちろん基本としては、将来成長性が高い企業の株式ほど買われ、株価は値上がりします。それは基本中の基本ではありますが、成長が期待されなくても買われる株式もあります。割安銘柄がまさにそれで、ここ数年の日本の株価上昇は、PBRが1倍を割っている割安銘柄が買われたことによって、ここまで上昇してきました。

ちなみに連結ベースのPBRが1倍を割り込んでいる銘柄数は、東証に上場されている3786銘柄(9月19日時点 東京プロマーケットと外国株は除く)のうち1471銘柄もあります。もちろんPBR1倍割れには、それ相応の理由があり、どの銘柄も割安だから買いだとは言えませんが、買える銘柄の見直し買いが進めば、株価にはまだ上昇余地があると考えられます。

「FOMO」による買いによって、株価上昇余地が…

もうひとつ、株価の上昇余地があるのではないかと考える根拠は、「FOMO」による買いが進むのではないかという期待です。

FOMOとは、Fear Of Missing Outの略称で、要するに「取り残されることへの恐れ」を意味します。株価が上昇トレンドに入っているのに、株式を保有していないがために利益を取り逃す恐れ、と言い換えてもよいかもしれません。

今年4月、トランプ大統領の相互関税発表による株価急落を受け、現在までに投資家がどのような行動をとったのかを、東京証券取引所が発表している「投資部門別売買動向」で見てみましょう。

東証プライム市場においては、9月第2週までで個人投資家が4兆8542億45万2000円の売り越し、外国人投資家は5兆5291億1867万6000円の買い越し、投資信託が7314億2060万3000円の売り越し、そして事業法人が6兆5422億30万3000円の買い越しでした。

このうち投資信託の保有者は多くが個人と思われるので、個人の売り越し額は5兆5856億2105万5000円になります。対して外国人投資家と事業法人の買い越し額が12兆713億1897万9000円ですから、この間の株価上昇は、外国人投資家と事業法人の買いに支えられたことになります。ちなみに事業法人の買いは、純投資ではなく、自社株買いによるものと推察されます。

この先、たとえ外国人投資家が利確売りをしたとしても…

この先、この株価上昇によって「取り残されることへの恐れ」を抱いた個人が買いに転じるかどうかがポイントです。一方で、比較的安値を拾い続けた外国人投資家が、利益を確定させるために売りに転じる懸念はありますが、現状、米国は金融緩和の兆しが強まっており、リスクオンへと転じつつあります。9月第2週は大幅な売り越しになっていますが、今後は買い越しに転じてくる可能性が考えられます。こうした売買動向からも、株価の上昇余地はあると見ています。

とはいえ、資産形成に必要なのは相場の方向性を当てることではありません。大事なのは、もし現預金のみで資産を保有しているのであれば、その一部をインフレリスクに強い資産に変えておくことです。そのためには、極めて常識的な結論になりますが、毎月定額積立で投資信託などを購入しておくのがお勧めです。

当然、積み立てていく過程では、株価が急落する場面もありますが、定額積立の良さは、大きく下げた時に、より多くの口数を仕込めることです。これによって、安値を多く拾えるため、次の上昇局面では損失の回復が容易になります。まずは少額の積立投資から始めてみてはどうでしょうか。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。