NISA・クレカ積立を始めたい

NISA利用で人は幸せになれるのか? 意外と知らない投資と幸福度の関係性をFPが徹底解説

2025/10/12 12:00

NISAをやっている人は幸せになれるのか 2024年1月に大幅拡充されたNISA制度が、さらなる規制緩和がありそうだと話題となっています。政府の資料(骨太の方針2025等)や金融庁の税制改正要望がNISAの見直しについて触れています。 NISA制度の口座数はすでに2696万口座※1あり、国民の5人に1人以上がNIS

NISAをやっている人は幸せになれるのか

2024年1月に大幅拡充されたNISA制度が、さらなる規制緩和がありそうだと話題となっています。政府の資料(骨太の方針2025等)や金融庁の税制改正要望がNISAの見直しについて触れています。

NISA制度の口座数はすでに2696万口座※1あり、国民の5人に1人以上がNISAをやっている、ということになります。もしかするとあなたの周囲でも、NISAをやっている、という人がたくさんいるかもしれません。
※1 出所:金融庁「NISA口座の利用状況調査」(令和7年9月24日公表)

NISAは投資の収益が非課税となる仕組みです。国内に居住している成人であれば誰でも口座が開けます(18歳到達者は来年の1月から)。投資元本の累計で1800万円まで非課税となり、最大で1年あたり360万円まで投資を行うことができます(積立投資を行うつみたて投資枠が年120万円、スポットで投資を行える成長投資枠が年240万円)。

今回少し考えてみたいのは、NISAが流行しているとはいえ、NISAをやっていて私たちのウェルビーイングが高まるのかどうか、というテーマです。私たちの幸福度を高める力が、NISAにはあるのでしょうか。

資産額の増加はおおむね幸福度の上昇につながる

結論を先に述べて恐縮ですが、「NISAが私たちを幸せにする」というよりは「NISAを通じた資産形成が私たちを幸せにする」と考えるのが適切でしょう。

資産が増えていくことはお金に関した不安を縮小させます。不安が少ない、安心感があることは、私たちの幸福度を高める要素になりえます。その一翼をNISAが担うという関係です。

内閣府の調査※2によると、私たちの生活満足度への影響は「生活の楽しさ・面白さ」についてと、「家計と資産の満足度」が高かったそうです。楽しいことが幸福度を高めるのはもちろんですが、お金の問題がスッキリしていることが大きな要素となっているわけです。
※2 出所:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書 2023」

また、将来の不安との関係では、もっとも強く影響するのが「家計と資産の満足度」だったとか。お金の不安は人生において大きなストレス要素ですが、これがない人とある人ではウェルビーイングに違いが見られる、というわけです。

他にも、資産額が多い人とそうでない人を比べれば、やはり資産額の多いほうが現在と将来にそれぞれの幸福度が高いという調査※3があります。
※3 出所:野村資産形成研究センター「第1回 ファイナンシャル・ウェルネス(お金の健康度)アンケート(2021年実施)」

また、貯金ゼロの世帯の幸福度が低いことも分かっていて、いずれも資産形成の順調な推移が、私たちの幸福度を高める重要なファクターであることを示唆しています※4。
※4 出所:第一生命経済研究所「ウェルビーイングを実現するライフデザイン ライフデザイン」東洋経済新報社

投資をしている人は幸福度が高いという調査もある

投資をすることそのものが幸福度を高めるかどうか、についてはブラックロックの調査※5があります。投資をしている人とそうでない人の幸福度の違いはなんと20ポイントもあったとのこと。
※5 出所:ブラックロック「資産とウェルビーイングに関するグローバル調査」

同様に、投資をしている人は、将来のお金を管理できていると感じている割合が、投資をしていない人と比べて34ポイントも高くなったそうです。

これも興味深いデータだと思います。安全資産で確実に資産形成を行うよりも、もしかすると投資を通じた資産形成をするほうが満足度の高い可能性があるからです。

理由をいくつか考えてみると、「資産の実質的な増加の有無(銀行預金は物価上昇率を下回っている)」「銀行預金と比べて高い利回りを得られていること」などが、投資をしている人の幸福度を高めているのでしょう。

一方で、株価下落局面などに際しては資産価値の下落がストレスになる可能性も考慮しておく必要があります。特に下落可能性を安易に考えていた人が、初めて元本割れを経験すると少なくないストレスとなります。やみくもに全財産を投資に回すのではなく、適切な投資額の設定、投資対象の設定が大切です。

シンプルに長期積立分散投資でNISAを始めてみよう

NISAにおける投資と、NISA外の投資で幸福度を比較するような調査は残念ながら見つけられませんでしたが、投資をすることで、私たちのウェルビーイングを高める可能性が大いにありそうです。

具体的な投資でウェルビーイングを高める方法としては、NISAで長期積立分散投資を実行することが考えられます。

仕組みとしてNISAは短期売買より長期積立分散投資に向いています。年間の投資上限が定められているため、何度も売買を繰り返すような投資には適していないからです。

毎月一定額を積立預金するような感覚で積立投資をしていくことをおすすめします。これは確実に元本を増やしていくことになり資産額を増やしていく力となります。

全世界の株式に幅広く投資をする投資信託などを活用すれば、毎月の金額は少額であっても世界中に分散投資をすることができます。GoogleやAppleはもちろん、名前も知らない(しかし未来に成長する可能性がある)新興国の成長企業にも投資ができるのです。

短期的には大きな値動きが生じますが、特に一時的な下落時には焦って売らないことが大切です。

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自分で成し遂げたことも、私たちの幸福度を高めます。「NISA口座を作る」「一定額をNISAに入金することを決断する」「投資信託などを選択する」といった行動が、あなたの幸福度を高めることにじわりと寄与します。

「まだNISAを始めていない」人は、運用で儲けることよりも、「資産が少しずつ増えていくことで、未来のお金の不安が減り、幸福度がアップする」ということを意識して、NISAを始めてみてはどうでしょうか。

山崎 俊輔/ファイナンシャルプランナー

1972年生まれ。フィナンシャル・ウィズダム代表。1995年中央大学法学部法律学科卒業後、企業年金研究所、FP総研を経て独立。確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。著書『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『共働き夫婦 お金の教科書』(プレジデント社)、『ファイナンシャル・ウェルビーイング』(青春出版社)など多数。