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“上げ相場”で「レバレッジ型投資信託ならもっともうかったのに」という人が増加中。それでも初心者は避けるべき理由は…

2025/10/20 19:30

ここまでの株高を見て、一部で「なんならレバレッジ型のファンドを買っておけば、もっと儲かったのでは?」という声が出てきています。 確かに、今年度に入ってからの国内株式市場は、4月7日にかけてトランプ関税を受けて急落しましたが、そこから徐々に回復し、先般の自民党総裁選挙で高市早苗氏が選ばれたことによって「高市トレード」と

ここまでの株高を見て、一部で「なんならレバレッジ型のファンドを買っておけば、もっと儲かったのでは?」という声が出てきています。

確かに、今年度に入ってからの国内株式市場は、4月7日にかけてトランプ関税を受けて急落しましたが、そこから徐々に回復し、先般の自民党総裁選挙で高市早苗氏が選ばれたことによって「高市トレード」と称する株高が示現しました。TOPIX終値で見ると、トランプ関税で急落した4月7日の終値が2288.66ポイントだったのが、10月9日には3257.77ポイントまで上昇しました。この間の上昇率は42.34%にも達します。

これは単純にインデックスファンドを買っているだけでも、この半年間で42%程度のリターンが得られたことになります。それを見れば当然、「インデックスに対して2倍、3倍のリターンが期待できるレバレッジ型のファンドを持っていた方が、より高いリターンが得られるはず」という考え方が浮かんでくるのも当然かも知れません。

レバレッジ型ファンドとは、参考指数の前日比に対して2倍、3倍の率で基準価額が変動するファンドのことです。ブル型という言い方もあります。また参考指数とは逆の値動きをするファンドもあり、こちらは「ベア型」あるいは「インバース型」と称されます。

ひとまず今回は、この株価上昇局面で注目されているブル型について、商品面の問題点を考えてみたいと思います。

1年間で+10%になった指数があったとして、レバレッジ型が必ずしも+20%になるわけではない

レバレッジ型ファンドの問題点については、実例を挙げて説明した方がわかりやすいと思います。

たとえばレバレッジ2倍のファンドで運用した場合を想定してみましょう。参考指数はTOPIXにします。要するに、TOPIXの値動きに対して2倍の連動率を持つレバレッジ型ファンドです。

TOPIXが急落した4月7日を起点にして、10月9日までの同インデックスの上昇率は、42.34%でした。ということは、この間、TOPIXの値動きに対して2倍の連動率を持つレバレッジ型ファンドの基準価額の上昇率は、42.34%×2倍=84.68%になるはず、と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際、前日と当日の基準価額の変動率を2倍にして、この半年間のレバレッジ型ファンドの上昇率をシミュレートすると、上昇率は98.66%になりました。つまり倍以上のリターンが得られたことになります。少なくともこの半年間の国内株式市場においては、レバレッジ型ファンドの利点が大いに生かされました。

こうなると、長期にわたってレバレッジ型ファンドを保有し続ければ、リターンはさらに高くなるのではないか、と考えたくなるでしょう。

しかし、残念ながら現在、設定・運用されているレバレッジ型ファンドは、長期保有に耐えられない仕組みになっています。

ポイントは、2倍の連動率がいつの基準価額に対してのものか、という点です。

前述したように、レバレッジ型ファンドは、前日の基準価額に対して2倍、あるいは3倍といった倍率でレバレッジがかかる仕組みになっています。つまり1年間保有し続けた結果、参考指数が10%上昇したからといって、レバレッジ型ファンドの基準価額が20%上昇することにはならないのです。

ここでは便宜的に、参考指数とインデックスファンドの値動きが同一で、かつその値動きに対して2倍のレバレッジをかけたレバレッジ型ファンドがあると想定します。

参考指数が100だったのが、60まで値下がりした後、110まで上昇したとします。この場合、参考指数の上昇率は10%です。

では、参考指数に対して2倍の連動率を持つレバレッジ型ファンドの基準価額はどうなるでしょうか。スタート時点は同じ100として、参考指数が60まで値下がりした場合の下落率は40%です。レバレッジ型ファンドの基準価額は2倍の連動率なので、80%値下がりします。つまり100だったのが20になります。

その後、参考指数は60が110に値上がりしていますから、上昇率は83%です。したがって、レバレッジ型ファンドの基準価額は、166%上昇するはずです。すると20の基準価額が53になります。

つまり、参考指数は100が110になったのに、2倍の連動率を持つレバレッジ型ファンドは、100が53まで値下がりしてしまうのです。

原則、レバレッジ型は短期勝負のもの。初心者は手を出さないほうがよい

以上は極端なケースですが、これを実際のTOPIXの値動きに当てはめて考えてみましょう。

2024年7月22日を起点にして、2025年10月9日までの間、TOPIXは2827.53ポイントから3257.77ポイントまで15.22%上昇しました。ということは、これに対して2倍の連動率を持つレバレッジ型ファンドの基準価額は、15.22%×2倍=30.44%上昇するはず、と思うかも知れませんが、実際の基準価額は、100でスタートしたものが122.33にしかなりませんでした。30.44%ではなく22.33%しか上昇していないのです。

なぜ保有期間中の参考指数の上昇率に対して、レバレッジ型ファンドの基準価額の上昇率が乖離するのかというと、レバレッジ型ファンドのレバレッジが、前日の基準価額に対するレバレッジになるからです。

レバレッジは上昇に対してだけでなく、下落に対しても作用します。つまり参考指数が10%下落すると、レバレッジ型ファンドの基準価額は、前日のそれに対して20%下落するようになっているのです。その結果、レバレッジ型ファンドの基準価額は、参考指数に対して、より大きく値下がりします。

80のものを100まで戻すには25%の上昇率を必要としますが、60のものを100まで戻すには、66.66%の上昇率を必要とします。より大きく値段が下押しすると、それだけより高く上昇する力が必要になります。それと同じ原理が、レバレッジ型ファンドにもあてはまるのです。

こうした商品の設計上の特性から言うと、レバレッジ型ファンドで効率良くリターンを得るためには、短期の値動きを狙うしかありません。

しかし、ここでもうひとつの問題が生じてきます。

投資信託の約定価格は、基本的に本日のマーケットの終値で確定します。そして、本日の終値で算出された基準価額で買い付けるためには、本日の15時半までに注文を出さなければなりません。

ということは、今日のマーケットが好調だからという理由でレバレッジ型ファンドに買い注文を入れたとしても、約定価格は好調に値上がりした終値で算出された基準価額が適用されます。そのため、今日のマーケットが大きく値上がりしたからという理由で買い注文を入れると、高値を掴まされるリスクが生じてきます。

それを避けるためには、たとえば昨年8月や今年4月のように、株価が暴落した時に買い注文を入れ、その後のリバウンドを取りに行くしかありません。そして、思惑通りにリバウンドが来たら、その日のうちに解約して利益を確定させます。

しかし、このような短期のタイミングを狙った購入・解約を上手に出来るのは、マーケットの呼吸を読むことが出来るくらいに、投資経験を積んでいる人でしょう。その点でも、レバレッジ型ファンドは投資経験の浅い人が手を出すものではないことを、理解して下さい。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。