近年、日本株式は大きく値上がりしています。2024年の10月には高くても3万9000円台だった日経平均が、いまや5万円台へ到達しました。
このタイミングで個別株の購入を検討している方も多いのではないでしょうか?
安心して、長期的に個別株で成功するにはどうすればいいのか、投資顧問会社の代表で人気YouTuberの栫井駿介氏が解説します。(全3回の3回)
※本稿は、栫井駿介著『年率10%を達成する! プロの「株」勉強法』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋・再編集したものです。
有価証券報告書はどうやって使う?
有価証券報告書は、以下のような項目で構成されます。
1 企業の概況
2 事業の状況
3 設備の状況
4 提出会社の状況
5 経理の状況
6 提出会社の株式事務の概要
7 提出会社の参考情報
このうち、私たちが主に読むべきは第一部の1、2、4、5です。今回は「お値段以上」でお馴染みの、家具のニトリホールディングスを題材に解説します。
表紙をめくると、直近5期分の業績推移表が現れます。実は、必要な情報の半分はここにあると言っても過言ではありません。
チェックすべきは「業績、自己資本比率、キャッシュ・フロー」
ここで見るのは、何よりも「業績が伸びているか」ということです。売上高や経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の推移を見れば、伸びているかどうかは一目瞭然です。ニトリのようにどれも右肩上がりなら言うことはなく、ジグザグだったり売上と利益の推移が一致しなかったりした場合は、読み進めることでその原因を探ることになります。
ここで明らかな特殊要因もなく売上・利益ともに右肩下がりの企業は、そもそも長期投資の対象になりません。5年間ダメダメなのに何も手を打たないということは、これからも伸びる可能性は低いからです。この基準でスクリーニングするだけでも、余計な時間をとる必要がなくなります。
次に見るのは「自己資本比率」ですが、これは明確に何%以上ならよいというものではありません。業種やビジネスモデルによって異なりますし、低いから一概に悪いということもありません。利益が出ているならやがて改善していくものですから、極端に低く下落傾向でなければ問題ないと考えてよいでしょう。
業績や財務とあわせて重要なのが、「キャッシュ・フロー」です。キャッシュ・フローは「営業活動」「投資活動」「財務活動」に分けられます。理想的なのは、ニトリのように「営業活動」から「投資活動」を引いた「フリー・キャッシュ・フロー」がプラスを続けていることです。要するに、これは時間の経過とともに金庫のお金が増えているということですから、配当も増えやすく、今後の成長投資に振り向けることもできます。
ただし、これがマイナスだから一概に悪いということでもありません。「投資活動」が大きいということは将来に向けた投資を行っているわけですから、それがいつか花開く可能性があります。成長中の企業だとこのようなパターンが多いのです。
営業活動がマイナスの企業は避けるべき
逆に避けた方がよいのが、「営業活動」がマイナスの企業です。このような企業は、事業を続けるほどお金がなくなるということですから、まさに自転車操業となっています。会計上は黒字でもキャッシュ・フローは赤字ということも往々にして起こるので、ぜひ気をつけて見るようにしてください。キャッシュ・フローは利益よりも重きを置くべき指標です。
この「1 企業の概況」だけでも、かなりの情報を得ることができました。このまますべて解説すると分厚い本が1冊書けてしまいそうです。この本は初心者向けを想定しているのでそこまでは踏み込みませんが、この項目のみを押さえるだけでも投資の成果はまったく違ってきます。ぜひ中身を読み込んでみるようにしてください。例えば、売上高が極端に増えている決算期を見つけたら、有価証券報告書の「沿革」を見ると大きな買収を行っている場合があるなど、会社に対する理解が深まります。ひと通り会社のことを理解できたら、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」でその会社がどこに向かっているのかを確認するのです。
慣れてくると、当初はまったく知らなかった会社でも有価証券報告書を読むだけで「こんな企業かな?」とイメージをつくることができるようになります。知っている企業なら比較的読み進めやすいと思います。ぜひいったん手を止めて、「企業名+有価証券報告書」で検索し、ダウンロードすることからはじめてみてください。
年率10%を達成する! プロの「株」勉強法
著者名 栫井駿介
発行元 クロスメディア・パブリッシング
価格 1628円(税込)
栫井 駿介/つばめ投資顧問代表 長期投資YouTuber
1986年鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業、豪BOND大学MBA修了。大手証券会社に勤務した後、2016年、つばめ投資顧問設立。現在は800名超の個人投資家を相手に、堅実かつ実践的な長期投資のアドバイスを行っている。YouTuberとしても活動し、登録者は15万人。ひとりでも多くの人に長期投資のよさを広め、実践してもらうことを夢見て発信を続けている。著書に『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』(ダイヤモンド社)『年率10%を達成する! プロの「株」勉強法』『1社15分で本質をつかむ プロの企業分析』(ともに、クロスメディア・パブリッシング)、共著として『株式VS不動産 投資するならどっち?』(筑摩書房)がある。