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「実は投資に失敗しちゃって」FIREを目指した結果、20年間続けた倹約生活が水の泡に…妻が直面した衝撃の残高

2025/11/17 19:00

月末の夜になると遥香は夫の和弘と家計について話し合いをするのが恒例となっていた。 「ちょっと今月は食費が高かったね。これって何か原因はある?」 「ここ最近、いろんなものが値上がりしてるのよ。便乗値上げってやつ。だからどうしても食費はかかっちゃうのよね」 遥香が答えると、家計の管理を担っている和弘は光熱費や食費など

月末の夜になると遥香は夫の和弘と家計について話し合いをするのが恒例となっていた。

「ちょっと今月は食費が高かったね。これって何か原因はある?」

「ここ最近、いろんなものが値上がりしてるのよ。便乗値上げってやつ。だからどうしても食費はかかっちゃうのよね」

遥香が答えると、家計の管理を担っている和弘は光熱費や食費などを記入しているアプリの画面から顔をあげた。

月末恒例の家計チェック

2人の間には一人息子の祐がいる。18歳の食べ盛りで、遥香としても美味しいものをできるだけたくさん食べさせたいという思いがあった。そのため食費はどうやってもかかってしまう。

「うーん、高騰はね、俺たちにはどうしようもないことだから仕方ないけど、もうちょっと頭を使って買い物しないとな。ほら、たとえばここ。こんなに買わなくても、安いときを狙えばもっと節約できるでしょ」

和弘は世間から見れば、かなりストイックな倹約家と呼ばれる部類に入るだろう。しかし遥香は和弘の過剰な倹約に対して、あまりストレスを感じたことはなかった。祐の進学や自分たちの老後のことを考えると節約は絶対に大事だし、こちらに押しつけるばかりでなく和弘は自分自身にも無駄遣いをしないようにしている。そもそも遥香にはこれといった物欲がないこともいい方向に働いているのだろう。

このまま2人で力を合わせて家計を守っていければいいなと遥香は思っていた。

   ◇

5月に入ったあるとき、遥香がパートが終わり夕飯の準備を始めようとすると祐が声をかけてきた。

「あのさ、俺、免許取りに行きたいんだけど」

「え? 免許って車の?」

「そうそう。夏休みに合宿で免許を取りに行くって友達が言ってるからさ。俺も一緒に行きたいんだけど」

遥香は少しだけ考える。

合宿であれば2~3週間くらいの期間で免許を取ることができる。となると夏休みを利用すれば取れないことはない。ただ大学受験を控えた大事な夏休みを免許取得のために使って良いのかどうか気になった。

「勉強は大丈夫なの?」

「大丈夫。俺、第一志望のところは模試でもB判定取ってるから。それに向こうでも勉強はできるし」

祐が真面目に勉強を頑張っているのは遥香も知っているので、そのあたりの信頼は十分にあった。大学に行って1人暮らしをする予定なので身分証代わりとしても使えるし、今のうちに取っておくのもありだろうか。

「そうね。それじゃその資料を見せてくれる? お母さんが手続きをしておくから」

ATMで確認した残高

翌日、遥香は早めに家を出て職場に向かう前にコンビニのATMに向かった。合宿免許でまとまったお金が必要になるので現在の預金額を確認しておこうと思ったのだ。

遥香はATMにキャッシュカードを入れて預金額を確認する。暗証番号を打ち終えると、明細が出てくる。後ろに並んでる人がいたので、明細を見られないようそそくさとコンビニを後にする。そして職場へと向かいながら明細を確認する。

だが遙香はその場で思わず立ち止まった。

預金は、100万もなかった。

操作を間違えたのかなと思い、遙香はコンビニへと戻る。そしてもう一度操作をやり直した。間違いがないように操作を一つ一つ確認しながら行った。ATMの機械は遙香の思った通りに明細を吐き出してくる。しかしやはり預金額は変わりがなかった。

管理は和弘が担っていた。もう20年以上、毎月それなりの額が貯金に回されていたはずだ。500万か、1000万かは分からない。だが少なくとも、遥香のパート代1年分よりもずっと少ない金額であるはずがない。

遥香には、何が起こっているのか全く理解ができなかった。

だから遥香にできるのは、和弘に状況を確認することだけだった。ひょっとすると、共有されている口座とは別の口座にお金を移しているのかもしれない。しかし遥香の淡い期待はすぐに裏切られた。

「……す、すまん。実は投資に失敗しちゃって」

「え、投資⁉ 何それ……」

夫が明かした失敗

和弘は暗い顔で説明をする。

「そんなに珍しいことじゃないだろ? これから祐の学費だってあるんだし、単に節約をするだけじゃ心もとないと思ってさ。知り合いから勧められてやってみたんだ。最初はかなり順調だったんだけどね……。損した分をどうにか取り返そうと思って、色々投資先を増やしたり、額を増やしたりしてみたんだけど」

「それで、貯金使い込んじゃったの……?」

「ごめん……。でもほら、FIREって言葉、聞いたことない? 祐が大学卒業したらタイミング見て、退職してさ、2人でのんびり過ごせたらいいなって思ったんだ」

「もう……」

もちろん怒りはあったが、そこまで強く言う気にもならなかった。遥香もパートはやっているがほとんど稼ぎは和弘に頼っている状態だし、何よりも家族のことを思ってやったことだというのなら、強く責めても仕方がなかった。

「やったことはしょうがないけど、ちゃんと言ってよ。家族のことなんだから」

「本当にごめん。後ろめたくて言い出しづらくて……」

「……生活自体は問題ないし、祐の合宿免許のお金も出せるしね。今回は仕方ないから大目に見るけど……もう投資なんて手出さないでよね」

遥香の言葉に和弘は頭を下げる。

「本当にごめん。もうやらないよ」

遥香はため息を吐いた。それで、夫婦のあいだにある隠し事はぜんぶ吐き出し終えたつもりでいた。

   ◇

しかし本格的な夏を迎え、免許合宿に出かける祐を見送った日、家のポストに督促状が届けられた。

宛名は和弘だった。郵便受けに入ったオレンジ色の封筒を見た遥香はそのまま呆然と固まってしまった。

●倹約家の夫・和弘が投資に失敗し、20年分の貯金を失っていたことを知った遥香。家族のためだったという言葉を信じ、夫を許すことにしたが、ある日、消費者金融からの督促状が届く…… 後編【「本当に投資?何にそんなにお金を使ったの!」倹約家の仮面を被った夫の裏切り…18歳息子の進学の危機】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

Finasee マネーの人間ドラマ編集班

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。