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「ゆっくり金持ちになればいい」という長期思考―世界中の投資家を導いたバフェット氏の“最大の功績”とは

2025/12/12 11:00

ウォーレン・バフェット氏が2025年末をもって、バークシャー・ハサウェイのCEOを退任する。世界中から「オマハの賢人」「投資の神様」と称えられ、投資のプロフェッショナルから個人投資家に至るまで、多くの人々が氏の投資哲学に影響を受けてきた。 そんなバフェット氏が第一線を退く――この節目に際し、Finaseeでは金融・資

ウォーレン・バフェット氏が2025年末をもって、バークシャー・ハサウェイのCEOを退任する。世界中から「オマハの賢人」「投資の神様」と称えられ、投資のプロフェッショナルから個人投資家に至るまで、多くの人々が氏の投資哲学に影響を受けてきた。

そんなバフェット氏が第一線を退く――この節目に際し、Finaseeでは金融・資産運用分野で活躍される識者の皆様に「ありがとうバフェット」をテーマに、バフェット氏の歩みから私たちが学ぶべきことは何かを、それぞれの視点でご解説いただく特別企画をお届けする。

バフェット氏にまつわる書籍を執筆し、また日々アドバイザーとして個人投資家に接する際もバフェット氏の投資哲学が活きているという、栫井駿介氏の寄稿を掲載する。

2025年末、ウォーレン・バフェット氏がバークシャー・ハサウェイのCEOを退任します。「オマハの賢人」として60年もの長きにわたり世界の投資家を導いてきた存在が、ついに第一線から身を引く――そのニュースを聞いたとき、私は一人の投資家として深い寂しさと尊敬の念を抱きました。

私がバフェット氏に興味を持ったのは、大学時代に投資を学び始めた頃です。書店には必ずといっていいほどバフェット本が並び、投資を学ぶ者にとって避けては通れない存在でした。

さらに、私が大学で学んだ企業価値評価の考え方が、バフェット氏の投資哲学と驚くほど一致していたことも大きな理由です。事業を理解し、その価値を見極め、価値より安い価格で買う。MBAで学んだ経営の知識とも重なり、まさに私が歩んできた道とバフェット氏の哲学が一本に繋がった瞬間でした。

この考え方を多くの個人投資家に伝えたい。そう思って始めたのが、現在の私の仕事です。

「素晴らしい企業をそこそこの価格で買う」

私の投資観を劇的に変えたのは、バフェット氏の次の名言です。

「そこそこの企業を素晴らしい価格で買うより、素晴らしい企業をそこそこの価格で買う方がよい」

私はもともと割安株投資を中心にしていました。しかし割安には割安の理由があります。たとえば、私はある企業を株価が下落しているという理由で買ってしまいましたが、企業体質や開示の問題が明らかになるにつれ、安心して長期保有できる企業ではないことが分かりました。

一方、素晴らしい企業は本質的価値が高く、PER20倍、30倍といった“そこそこ高い価格”がついていることが多いです。しかし、成長を続ける企業であれば、たとえ“普通の価格”で買ったとしても、長い時間の中でその企業価値が株価を押し上げてくれます。

私自身、コロナ禍にマイクロソフトへ投資したとき、この言葉に強く後押しされたことを覚えています。PERは30~40倍と決して割安ではありませんでしたが、企業としての力強い成長を信じて購入しました。その後、特にトラブルや不安に直面することもなく、ただ持ち続けるだけで株価は大きく上昇しました。バフェット氏の哲学の意義を強く実感した経験です。

この経験は、投資家としてだけでなく、アドバイザーとして個人投資家の皆さんに伝えるべき重要な教訓になっています。

投資家である前に、“哲学者”だった

投資哲学と同じくらい、私が心を惹かれてきたのが、バフェット氏の人生哲学です。
その中でも、特に胸に刺さった言葉があります。

「金と幸せは別物だ」

世界有数の富豪であるからこそ、この言葉の重みは計り知れません。

私は、お金は人を幸せにするためにある”手段”だと考えています。必要な分があれば十分なのです。しかし現代社会では、「お金を稼ぐことこそ正義」という風潮が強く、お金と幸せをごちゃまぜにしてしまいがちです。

バフェット氏は、お金を持つことと幸せになることが別の話であると、自らの人生で証明してくれました。

投資家でありながら、同時に“哲学者”でもあった。そこに私は強い魅力を感じています。

「ゆっくり金持ちになればいい」という真理

バフェットがAmazonの創業者であるジェフ・ベゾスとの対談で語った次の言葉も、私の人生観を大きく変えました。

「誰もゆっくり金持ちになりたいとは思わない」

長期を見据えれば正しい道だと思ったとしても、それに時間がかかるなら、目先の利益を求めてしまうのが人間です。しかし、実際には短期的な利益を求めることはトラブルも呼び込みやすく、結局は長期的に価値を生む活動を続けることこそが、本質的な成功につながります。

これは投資に限らず、ビジネスにも人生にも当てはまります。Amazonはまさにその考え方で世界でも有数の企業になりました。そして私自身も、会社経営において短期的な利益を追わず、「長期的な価値を生むかどうか」を基準に判断するようになりました。その結果、感情に振り回されることが減り、人間関係も穏やかになり、人生そのものが豊かになったと感じています。

長期思考は、心の安定と幸福に直結する。バフェット氏は、その真理を教えてくれました。

バフェット氏は“100発100中”ではない

多くの個人投資家が誤解しやすいのは、「バフェットは常勝の天才」というイメージです。しかし実際には、バフェット氏自身もこう述べています。

「バークシャーの成功は5年に一度の大成功が支えている」

コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、アップル、そして日本の商社株。
こうした大成功がとてもまぶしく見えるため、あたかも全勝しているように見えてしまいますが、実際は違います。むしろ、「勝率」だけを計算すると約6割ともいわれ、驚くほど平凡なものです。

つまり、バフェット氏が偉大なのは“天才だから”ではなく、哲学を守り、忍耐し、失敗を避け、時折訪れる大成功を逃さない姿勢を貫き続けたことにあります。

これは個人投資家がぜひ理解すべき本質です。投資は100発100中を目指すものではなく、長期的な哲学と忍耐が成果をもたらすのです。

バフェット氏が残したもの

私が考えるバフェット氏の最大の功績は、 「長期投資という概念を、世界中の投資家の“当たり前”にしたこと」 だと考えます。

長期投資で60年以上ものあいだ成果を積み重ね、そのブレない姿を通じて「長期で企業価値を追うことこそ資本市場の本質である」と示し続けました。

長期思考は退屈で、時に不安を伴います。しかし、そこで耐え忍び、企業の成長に寄り添う投資こそ、大きな成果を生む――この“当たり前”をここまで強く世界に浸透させた人物は、バフェット氏をおいて他にいません。

具体的には、毎年バークシャー・ハサウェイの株主総会に何万人もの長期投資家が集まる光景は、他の企業や投資家では考えられないでしょう。

そしてこの功績は、単に投資の世界にとどまりません。長期で物事を考える姿勢は、ビジネスや人生にも大きな影響を与えます。短期的な利益に振り回されず、心穏やかに、価値ある未来のために行動する。これは、私を含む多くの人の生き方にも影響を与えました。

私が投資アドバイスに迷い、苦しんだとき、いつも支えてくれたのはバフェット氏の言葉です。彼が残した名言を調べ、自分自身に言い聞かせ、それを顧客にも伝えてきました。もしバフェット氏の哲学がなければ、私は長期投資の普及を仕事として続けてこられなかったかもしれません。

だからこそ、この場を借りて心から伝えたいと思います。

バフェットさん、長い間、投資を続けてくださって本当にありがとうございました。あなたの哲学は私の中に生きています。そしてこれからも、長期投資の考え方を多くの投資家の皆さまへと届けていきます。

【バフェット主要名言・出典リスト】
1.「素晴らしい企業をそこそこの価格で買う」
“It’s far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price.”
— 1989年 バークシャー・ハサウェイ年次書簡(Shareholder Letter)
2.「価格はあなたが支払うもの、価値はあなたが得るもの」
“Price is what you pay. Value is what you get.”
— 2008年年次書簡(ほか多くで言及)
3.「ゆっくり金持ちになりたい人はいない」
“Nobody wants to get rich slowly.”
— Jeff Bezosとの対話での発言として複数のメディアが紹介
(Finance Yahoo・CNBCなど)
4. 「我々の好きな保有期間は永遠だ」
“Our favorite holding period is forever.”
— 1988年年次書簡

つばめ投資顧問代表 長期投資YouTuber
栫井 駿介氏

1986年鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業、豪BOND大学MBA修了。大手証券会社に勤務した後、2016年、つばめ投資顧問設立。現在は800名超の個人投資家を相手に、堅実かつ実践的な長期投資のアドバイスを行っている。YouTuberとしても活動し、登録者は15万人。ひとりでも多くの人に長期投資のよさを広め、実践してもらうことを夢見て発信を続けている。著書に『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』(ダイヤモンド社)『年率10%を達成する! プロの「株」勉強法』『1社15分で本質をつかむ プロの企業分析』(ともに、クロスメディア・パブリッシング)、共著として『株式VS不動産 投資するならどっち?』(筑摩書房)がある。

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。