■要旨 NISAの普及が鈍化するなか、18歳未満への対象拡大が検討されている。しかし、親である現役世代の活用が十分に広がっていないという根本的な課題がある。さらなる普及には、制度拡充と合わせて全世代への金融教育を通じた活用支援も必要ではないだろうか。 ■目次 ・新NISAの効果は一服 ・NISAの対象が全世代に
■要旨
NISAの普及が鈍化するなか、18歳未満への対象拡大が検討されている。しかし、親である現役世代の活用が十分に広がっていないという根本的な課題がある。さらなる普及には、制度拡充と合わせて全世代への金融教育を通じた活用支援も必要ではないだろうか。
■目次
・新NISAの効果は一服
・NISAの対象が全世代に
・効果は疑問符
・親のサポートが重要
・全世代に金融教育の機会を少額投資非課税制度(NISA)が、いわゆる新NISAとして大幅に制度拡充されてから1年以上が経過した。新NISAによって制度普及自体はかなり進んできている。
NISAの口座数は、2025年6月末時点で2,696万に達している【図表1】。政府が資産所得倍増プランを掲げた2022年6月末時点では1,703万だったことを踏まえると、3年で1,000万口座近く増加した。特に新NISA元年の2024年は1年間に433万口座増加し、顕著であった。
その一方で、2024年初をピークに口座開設の勢いが鈍化している様子も見られる。2025年は上半期で137万口座の増加と、2024年上半期の300万口座と比べると半減している。

そのような中、政府・与党が検討しているのが、制度拡充の一環としてこれまで18歳以上だった対象年齢の引き下げである。今年8月に金融庁とこども家庭庁が提出した共同要望を、2026年度の税制改正大綱に反映させる調整に入ったようだ。
具体的には、2023年末で終了したジュニアNISAを新NISAに復活させる方向だ。つみたて投資枠を対象に18歳未満も可能とし、投資上限については新たに年間60万円、総額は600万円と設定するようだ。
制度変更の狙いは、教育費などの子育て資金確保を後押しすることである。だが、2024年のつみたて投資枠の買付実績を見ると、現役世代の7割強が年間60万円以下の利用にとどまっている【図表2】。
また、ジュニアNISAを振り返ると、原則18歳まで払い出し制限があることが不評で制度普及が進まなかった。各種報道によれば、今回の制度変更では払い出し制限が12歳まで引き下げられるようだ。実質的に親の代理口座となる懸念が根強いこともあり、依然として年齢の制約が残る形になりそうである。
つまり、多くの家庭ではつみたて投資枠が十分にあいており、さらに12歳まで引き出し不可であるのにもかかわらず、あえて子供名義の口座で運用する必要性が薄い状況である。

それに18歳未満の制度利用に対する最大の障害は、不可欠な親のサポートにあるのかもしれない。現在、制度を活用していない親が子供の制度活用を促すとは考えにくいが、最も利用が進んでいる30歳代ですら、4人に3人がNISA口座を未保有、あるいは未活用の状態にある。
そのため、対象年齢引き下げに伴う母数の拡大によって一時的に口座数が急増するかもしれないが、現役世代での口座開設が一服していることを踏まえると、直ちに鈍化する可能性が高い。
あくまでも、つみたて投資枠自体は非常に少額から利用できる。18歳未満にも制度を開放し、金融教育の実践の場を提供することは意義がある。幼少期から制度や積立投資に慣れ親しんでおくことで、将来の資産形成がよりスムーズに進むことが期待できる。
しかし、制度が活用されないことには始まらない。対象年齢引き下げ以外にも、対象商品の拡充や売買がしやすくなる変更が行われる見込みである。これらによって、活用している人にとっての利便性は向上する。しかし、制度活用を促進という面では、どれも力不足である。結局、親子ともにいかに制度活用を後押しするのかというのが、課題になる。
NISAの対象が全世代に広がる一方で、金融教育は学校など18歳未満に集中している状況である。金融教育も、全世代に平等に届くように広げていくことなども必要になるだろう。