未公開株投資ブームの次に来る、合理的な選択
近年、日本でも未公開株投資が身近なものになってきました。かつてはプロの機関投資家や一部の富裕層に限られていたベンチャー投資に、個人が参加できる環境が整ってきたこと自体は、非常に意義のある変化だと思います。
ベンチャー企業の成長を資本面から支え、その果実を投資家が共有する。この流れは、資本市場の健全な発展という観点から見ても前向きに評価されるべきでしょう。一方で、未公開株投資が一般化するにつれ、「何に投資するか」だけでなく、「どのように投資するか」が、これまで以上に重要になってきています。
ベンチャー投資の本質は「成功確率の低さ」
まず押さえておきたいのは、ベンチャー投資は構造的に成功確率の低い投資であるという点です。
スタートアップ企業の多くは途中で事業が立ち行かなくなるケースが一般的であり、その過程を乗り越えたごく一部の企業だけが大きなリターンを生みます。これは日本に限らず、米国を含む世界共通の現実です。つまり、1社の未公開株に投資するという行為は、どうしても「当たり外れ」の影響を強く受けやすくなります。
メディアで頻繁に取り上げられる成功事例は全体の一握りに過ぎず、その背後には表に出てこない多数の失敗例が存在します。
ベンチャーキャピタルファンドが果たしている役割
こうした環境の中で、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドがどのように投資を行っているのかを知ることは重要です。VCとは、急成長が期待されるスタートアップ企業の未公開株に出資し、企業の成長に伴う株価上昇によってリターンを得る投資会社のことです。
VCファンドは、単に有望そうな企業に資金を出しているわけではありません。
実際には、次のようなプロセスを経ています。
• 多数のスタートアップを対象とした継続的なスクリーニング
• 複数の専門家による投資委員会での意思決定
• 技術、法務、財務などを含むデューデリジェンス(適正評価手続き)
• 失敗を前提とした分散ポートフォリオの構築
• 成長が見込める企業への追加投資(フォローオン)
これらを通じて、1社ごとの成否ではなく、全体としてのリターンを設計しているのがVCファンドの特徴です。
未公開株投資で最も重要な「価格」の問題
未公開株投資において、特に重要なのがバリュエーション、すなわち「投資価格」です。上場株であれば市場価格がありますが、未公開株には明確な基準がありません。そのため、事業計画や成長シナリオ、類似企業との比較などを踏まえた慎重な検討が不可欠です。
VCファンドでは、プロ同士の議論や交渉を通じて価格が形成されます。一方、個人投資家が同じ水準の情報と分析にアクセスするのは容易ではありません。どれだけ魅力的な事業であっても、投資価格を誤れば、期待されるリターンは大きく損なわれてしまいます。
投資の世界は「分散」とともに進化
上場株投資の歴史を振り返ると、かつては個別銘柄を選ぶことが主流でした。しかし現在では、多くの投資家が投資信託などを活用し、複数の銘柄に分散投資を行っています。これは、リスクを抑えながら市場全体の成長を取り込むという、合理的な進化の結果です。
ベンチャー投資も、同じ方向に進みつつあります。個別の未公開株に投資するのではなく、VCファンドを通じて分散された形で参加するという選択肢は、自然な流れといえるでしょう。
ベンチャー投資に参加する際に考えたいこと
ベンチャー投資は、かつては一部の機関投資家に限られた世界でしたが、近年では投資環境の整備とともに、個人投資家がVCファンドを通じて参加できる機会も少しずつ広がりつつあります。未公開株投資に関心を持つ投資家にとって、個別企業の成長ストーリーだけでなく、分散や投資プロセスを含めた「投資の仕組み」そのものに目を向けることが、これからの時代にはより重要になっていくのではないでしょうか。
木村 大樹/Keyaki Capital代表取締役CEO
野村證券でオルタナティブ商品の営業に従事した後、ニューヨークで証券化ビジネスに携わり、サブプライム危機に直面しながら問題解決に努める。帰国後はバークレイズ証券を経て、2012年にシティグループ証券の年金ソリューション部長、2015年からはマッコーリー・インベストメント・マネジメント日本代表。2020年に個人に公開されていない世界中のプライベートアセットへの投資機会を、充実感と高揚感に満ちた投資体験として提供するKeyaki Capitalを創業。一橋大学経済学部卒。