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「社会保険に入っていてよかった」加入期間が短くても年62万円超を保障…人工関節を入れた55歳パート女性が安堵したワケ

2025/12/26 20:00

<前編のあらすじ> 史恵さん(仮名、55歳)は8年前の7月から夫の扶養を抜けて社会保険に加入し、パート勤務をしています。当初は保険料負担を重く感じ「本当に加入してよかったのか」と悩んでいました。 しかし、数カ月後に変形性股関節症を発症。療養で休んだ際に健康保険から傷病手当金が支給され、社会保険加入の意味を実感。しば

<前編のあらすじ>

史恵さん(仮名、55歳)は8年前の7月から夫の扶養を抜けて社会保険に加入し、パート勤務をしています。当初は保険料負担を重く感じ「本当に加入してよかったのか」と悩んでいました。

しかし、数カ月後に変形性股関節症を発症。療養で休んだ際に健康保険から傷病手当金が支給され、社会保険加入の意味を実感。しばらく病院通いを続けながら勤務していましたが、状態は年々悪化。ついに人工関節を入れる手術を受けることになりました。

働けなくなった場合の収入に不安を抱いた史恵さんは、人工関節が障害年金の対象になる可能性があると知り、年金事務所へ。そこで障害厚生年金を受給できることが分かりました。

●前編:「保険料の負担が重い…」社会保険加入を後悔していた55歳パート女性、人工関節手術で知った「加入の本当の意味」

障害厚生年金を受給するための前提条件とは?

公的年金の障害年金については、障害基礎年金と障害厚生年金があります。障害基礎年金は障害等級1級と2級を対象とし、障害厚生年金は障害等級1級・2級だけでなく、3級の場合も対象となります。手術によって股関節に人工関節を入れると、原則、障害等級3級に該当するとされています。つまり、障害基礎年金は対象になりませんが、障害厚生年金の対象になります。

その障害厚生年金を受給するためには、初診日(障害の原因となる病気・ケガで初めて医師等の診療を受けた日)に厚生年金被保険者であることが前提条件となっています。史恵さんの初診日は8年前の7月に厚生年金に加入してしばらくした10月なので、厚生年金加入中に初診日があり、この要件を満たします。その他受給に必要な保険料の納付要件も満たしていることが確認され、障害厚生年金を受給できるようになります。

史恵さんがもし社会保険に加入せず、扶養に入ったままの場合は、初診日時点で厚生年金未加入ということになり、障害等級3級の状態であったとしても、その時点で障害厚生年金は受給できないことになります。

62万円以上の障害厚生年金が支給される

史恵さんには障害厚生年金として年間62万3800円(2025年度)が支給されるようになります。3級で障害基礎年金がない代わりに、厚生年金の加入期間が多くない史恵さんでも62万3800円は最低保障として支給されることになっています。

「社会保険に入っているとこういう時に助かるのか……。月5万円以上の年金があるのは大きいな」と、過去に受けた傷病手当金だけでなく障害厚生年金を受けられ、社会保険加入の意味を改めて大きく感じるところでした。史恵さんはそのまま障害厚生年金を請求し、その支給が始まることになりました。障害厚生年金についてはその後働いて収入があっても支給は調整されないことになっています。

今後も厚生年金に加入し続けることを決意

史恵さんは将来65歳を迎えた際の老齢年金についても気になる歳になっていたため、そのことも職員に質問していました。史恵さんが65歳を迎えると、62万円以上の障害厚生年金よりも多い、2階建ての老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)を受けることになる見込みです。代わりに障害厚生年金は支給停止となります。これから引き続き厚生年金に加入することができれば、将来の老齢基礎年金だけでなく、老齢厚生年金の額も増やすことができます。これを聞いた史恵さんは、今後も無理のない範囲でできる限りパートで働き、厚生年金に加入し続けることに決めました。

社会保険は保険料の負担もあることから、加入を躊躇する人もいますが、老後の年金だけでなく、不測の事態が生じたときの保障として大きな意味を持つことにもなります。未加入だった場合と比べ、手厚い保障となるでしょう。

現在(2024年10月以降)、従業員51人以上の事業所に勤務する場合は週の所定労働時間が20時間でも社会保険の加入対象となります。この従業員数の要件は今後改正で2027年10月からは36人以上、2029年10月からは21人以上、2032年10月からは11人以上で対象となり、最終的に2035年10月からは10人以下の事業所まで拡大されます。これから加入を検討する場合、今後の改正点も含めて確認してみましょう。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。