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「ふざけるな、金返せ」説明会で明かされた施工業者の“自転車操業”…住宅ローン2500万円を抱えた34歳会社員の苦渋の決断

2026/01/12 17:00

<前編のあらすじ> 34歳の会社員、中西耕平さん(仮名)は、妻の歩さん(仮名)と2歳の長男・海人くん(仮名)との3人家族。結婚5周年を迎え、念願のマイホーム建設を決意しました。 両家の実家からの援助で理想的な土地をキャッシュで購入し、複数の業者から見積もりを取った結果、最も安い料金を提示した施工会社と契約。しかし、

<前編のあらすじ>

34歳の会社員、中西耕平さん(仮名)は、妻の歩さん(仮名)と2歳の長男・海人くん(仮名)との3人家族。結婚5周年を迎え、念願のマイホーム建設を決意しました。

両家の実家からの援助で理想的な土地をキャッシュで購入し、複数の業者から見積もりを取った結果、最も安い料金を提示した施工会社と契約。しかし、着工が遅れる中で施工会社が突然倒産し、2500万円を超える住宅ローンだけが残される事態となりました。

●前編:【夢のマイホームで“勝ち組確定”のはずが…施工業者倒産で「住宅ローン2500万円」だけが残った一家の地獄】

安い料金に釣られた施工会社選び…担当者への信頼が裏目に

マイホームの建設を依頼した施工会社が倒産。そんな報道ドキュメンタリーに出てくるような出来事がまさか自分の身に降りかかってくるとは、夢にも思いませんでした。

結婚5周年で長男の海人の幼稚園入園を控えた私たち夫婦は、互いの実家からそう遠くないエリアに条件のいい土地を見つけ、そこに家を建てることにしました。

妻の歩がネットで探した数社から見積もりを取ったら、レベチで安い料金を出してきたのがその会社でした。最初は大丈夫かという思いもありましたが、ウェブサイトに掲載された事例や評判を見ても特に気になるところはなかったし、何より、20代の担当者は仕事熱心で、特にキッチンに思い入れの強かった歩の要望にも丁寧に向き合ってくれたので、次第に信頼を深めていったのです。

ですから、2500万円を超える住宅ローンを組んで引き落としが始まった後、なかなか着工しなかった時も、担当者の「担当する職人さんの前の仕事が長引いているため、こちらに手を着けられない」という説明を鵜呑みにし、歩と「建設業界も人手不足なんだね」などという軽口を交わすほどお気楽でした。

倒産の通知を受け取ったのは、それから数週間後。1週間ほどして担当者が真っ青な顔をして我が家を訪れ、ひたすら頭を下げましたが、今後の対応については何の説明もありませんでした。

突然の倒産への驚きや怒り、さらにこれから自分たちはどうなってしまうのだろうという不安はむしろ、その後日増しに強くなってきました。

債権者説明会で明かされた絶望的な現実

しばらくして、破産管財人の弁護士による債権者への説明会がありました。その際に分かったのですが、施工会社は数年前から人件費や資材費の高騰などで相当額の負債を抱え、自転車操業の状態が続いていたそうです。そこで支払いや借入金の返済に充てるために格安の料金で受注をしており、結果として我が家のような放置案件が増えたようでした。

しかし、会社に不動産も含めて資産がほとんど残っておらず、返金の見込みは全く立っていないとのことでした。

会場には我が家と同じようにローンの支払いを抱えている人が何人もいて、「ふざけるな」、「金返せ」といった怒号が飛び交っていました。

口にこそ出しませんでしたが、私も全く同じ思いでした。

そうしている間も毎月、給料からローンが引き落とされていました。家は建たないのですから、お金をどぶに捨てているようなものです。しかも、返済額を抑えるために変動金利型のローンを選んだため、この先金利が上がってきたら返済額はさらに膨らみます。

一家が下した苦渋の決断とは

やむなく購入した土地を売却し、その代金をローンの返済に充てることを提案したら、歩に猛反対されました。歩は“幻のマイホーム”を諦めきれていなかったのです。そのエリアに住むことを前提に海人の幼稚園も探し、「絶対ここに通わせたい」と思える理想の園を見つけていたようでした。

しかし、こちらとて悠長に構えてはいられません。地元の弁護士会による被害者救済相談を利用したところ、既に購入した土地については固定資産税がかかってきて、さらに、更地のままだと「住宅用地の特例」が適用されず、家が建った土地に比べて税額が3~4倍になると聞かされました。住宅地の土地なので、雑草取りなどのメンテナンスも欠かせません。

住んでもいない家の住宅ローンと割高な固定資産税を払い続けるなんて、あり得ない!

不幸中の幸いか引き合いの強いエリアの土地だったので、双方の親にも相談した上で、義両親に歩を説得してもらって強引に土地の売却を決めました。両親や義両親が、「大変な時なんだから、土地の購入用に贈与したお金はそのまま使ってもらって構わない」と言ってくれたことが大きな救いになりました。

土地は購入後1年も経たないうちに売却したにもかかわらず、不動産市場高騰の影響か8%近く値上がりしていたのもうれしいサプライズでした。“焼け石に水”ではありましたが。

結果的に、住宅ローンは残高を7桁に圧縮することができました。とはいえ、当面は支払いが続きますから、給料やボーナスが上がっても、その分を返済に充てていくことになりそうです。

マイホーム実現のため、収入アップを目指す妻

こういう経験をしたことで、私自身はマイホームに対して以前のように前向きな気持ちになれなくなりました。まだまだ先の話ではありますが、いずれは実家の不動産を引き継ぐことになりますし、極端な話、それまで賃貸暮らしでも構わないくらいに今は思っています。

しかし、歩は違うようです。

今の我が家からだと通園に1時間以上かかるのに、来年には海人を“理想の幼稚園”に入れる気満々ですし、収入アップを目指してパート先も変えました。本人は「年収の壁」見直しが背中を押してくれたと言っていますが、あれほどこだわっていた“理想のマイホーム”を何とか実現したいと考えているに違いありません。

おっとりしたお嬢様タイプの歩の意外にタフな一面を見て驚いています。

我が家はこうして何とか手を打った上で新年を迎えられましたが、件の施工会社の清算は進んでおらず、工事途中の物件やローンを抱えて困り果てている被害者も少なくないと聞きました。

これからマイホームを購入される方には、くれぐれも我が家と同じ轍を踏まないよう、慎重に施工業者を選んでいただきたいと思います。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。