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「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は純資産総額10兆円台に―この人気はいつまで続くのか

2026/01/15 11:00

大人気「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」はついに純資産総額10兆円台へ 三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用する「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の純資産総額が、1月7日に10兆円を超えました。正確には10兆169億8000万円。eMAXIS Slimシリーズで同

大人気「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」はついに純資産総額10兆円台へ

三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用する「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の純資産総額が、1月7日に10兆円を超えました。正確には10兆169億8000万円。eMAXIS Slimシリーズで同ファンドと双璧を成す「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の純資産総額が同日、9兆4016億6800万円なので、両ファンドを合わせた純資産総額は19兆4186億4800万円に達します。

この数字がどれだけ大きいのかは、国内で設定・運用されている公募投資信託全体の純資産総額に占める比率を計算すれば分かります。時期はややズレますが、2025年11月末時点における公募投資信託全体の純資産総額は、297兆3783億1800万円なので、両ファンドの占める割合は6.53%にもなります。

「それでもたったの6.53%?」などと言ってはいけません。前出の297兆3783億1800万円という公募投資信託全体の純資産総額は、5760本ものファンドの純資産総額の合計です。これは本数にして全体のわずか0.03%しか占めていない2ファンドで、公募投資信託全体の純資産総額の6.53%を占めていることになります。そう考えると、いかに特定のファンドに資金が集中しているかが分かると思います。

資金純流入額は、急落時には一時的に減るが回復してきた

いつまでこの人気が続くのか、ですが、金額ベースでは相変わらず資金純流入が続いています。月間の資金純流入額は、2025年7月こそ1000億円を割り込みましたが、その後は1000億円超の資金純流入が続き、2025年12月は1600億円にも達しました。

ちなみに資金純流入額とは、設定額から解約額を差し引いたもので、純粋にそのファンドに対して流入した資金の額を示しています。

一般的にファンドのサイズを計る場合、追加型の場合は「純資産総額」が用いられますが、純資産総額はファンドに組み入れられている資産を時価評価したものなので、解約額が設定額を上回っていようとも、組入資産が値上がりすれば、純資産総額が増えることもあります。つまり純資産総額の増減だけでは、ファンドへの資金の純流出入を把握することは出来ません。前出の資金純流出入は、ファンドの純資産総額を受益権口数ベースに換算し、それに1口基準価額を掛けて、前営業日の増減を比べたものになっています。

こうして計算した資金純流出入ですが、注目したいのは株価が急落した直後からの推移です。直近、株価が急落したのは2024年8月と2025年4月の2回です。この時、資金純流出入の状況はどうなったのでしょうか(※編集部注:以下、資金純流出入は筆者の推計)。

まず2024年8月の急落時ですが、その前月が1999億円の純流入だったのに対して、8月は1180億円の純流入にとどまりました。8月の月初にS&P500が大幅下落となった影響があったのかどうかは分かりませんが、少なくとも資金純流入額が7月に比べて大幅に減ったところを見ると、少なからぬ影響は受けたものと推察されます。

また2025年4月の急落時における資金純流出入を見ると、4月自体は大きな落ち込みはなく、1745億円の純流入を示していたのですが、翌月から落ち込み、

5月・・・・・・1419億円の純流入
6月・・・・・・1034億円の純流入
7月・・・・・・921億円の純流入

というように推移しました。

ただ、これは2024年8月、2025年4月という、両方の株価急落に当てはまることですが、一時的に資金純流入額は減ったものの、その後は回復しています。年初はNISAを通じた資金流入増という特殊要因はありますが、2025年1月には4050億円まで資金純流入額は増えていますし、2025年7月に921億円まで落ち込んだ後、同年12月には1623億円まで回復しています。

このように資金流入額が順調に回復したのは、2回の暴落とも、その後のマーケットが堅調に推移し、暴落前の高値を短期間のうちに抜いてきたからです。マーケットに対する信頼感の高さが、数字に表れているといっても良さそうです。

三菱UFJアセットマネジメントが1月8日に出したリリースによると、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は2018年7月3日に設定された後、2022年2月10日に純資産総額が1兆円を突破。2024年6月24日に5兆円をこえ、同年10月28日には5兆7696億円に達して、ETFを除く国内公募追加型株式投信において、過去最大の純資産総額を記録したとのことです。

そして、5兆円を突破した日から約1年半で10兆円を突破しました。設定日から約6年で5兆円を超え、その後約1年半で倍増ですから、この間の株価上昇による影響もありますが、明らかに純資産総額の増加ペースは速くなっています。

資金純流入を“前年同月比”で見ると異なる風景が。新規の買い手が一巡した可能性も

ただ、資金純流入額を前年同月比で見ると、やや風景が違ってきます。直近の数字しか取っていないので、あくまでも短期的な傾向として捉えていただきたいのですが、2025年5月以降、資金純流入額の前年同月比がマイナスに転じています。ちょうど4月の暴落後からの動きで、ここが2024年8月の暴落後と大きく違う点です。

この時は2025年1月にかけて前年同月比で見ても高い増加率を維持していたのですが、2025年4月の暴落後は、マイナスの月が続きました。そのマイナス値は5月の▲11.91%、6月の▲38.54%、7月の▲53.92%と上昇した後、8月の▲3.91%、9月の▲4.72%、10月の6.10%というように回復。しかし、11月は▲21.3%、12月は▲19.06%というように、再びマイナスに転じました。

2024年1月にNISAがリニューアルされた時、「NISAはS&P500のインデックスファンドで積み立てておけばいい」という風潮が広まりました。「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、その代表的なインデックスファンドとして人気を博したわけですが、その時からインデックスファンドの積立投資を始めた人も含め、そろそろ新規の買い手が一巡した可能性はあります。

とはいえ、純資産総額で10兆円の規模を持つファンドですし、1月9日時点の受益権口数は2兆5237億口もあるので、今後も継続的に資金が流入してくる積立投資分のことも考慮すると、解約が設定を上回り、資金純流出が続くような事態に直面するとも思えません。それにインデックスファンドなので、もし資金純流出になったとしても、アクティブファンドのように運用難に陥るリスクは低いと考えられます。

アクティブファンドの運用者のなかには、S&P500のインデックスファンドについて「マーケットが右肩上がりの時は良いが、ひとたび下落に転じた際には、投資哲学を持たずに『ほったらかし』にしていた層がパニック売りを引き起こし、さらなる暴落を招く」などと公言している人もいますが、そうなった時はアクティブファンドも無傷では済まされません。

「アクティブファンドは銘柄を厳選するから、マーケットの下落局面ではインデックスファンドよりも下げを小さく抑えられる」などと反論してきそうですが、それは厳選した銘柄で構成されるポートフォリオが、ベンチマークとなるインデックスを上回る確証があっての話です。現に、マーケットの下落局面でインデックスファンドのパフォーマンスを下回るアクティブファンドもたくさんあります。この反論は、ファンドを買う側が、優秀な運用者を見分けられるだけの目を持っていることが大前提になります。

アクティブファンドは、運用者によってパフォーマンスの当たり外れが大きいのは事実です。だからこそ、平均値を目指すインデックスファンドが光るのです。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。