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保険金受取人と税金-個人保険契約における取扱い

2026/01/20 00:00

■要旨 個人保険契約における保険金と税金の概要を解説する。 まず保険契約の保険契約者兼被保険者を相続した者(相続人)が、当該保険契約の死亡保険金を受領した場合にはみなし相続財産として相続税が課税される。なお、相続税法上、法定相続人×500万円の控除枠がある。 また被保険者と保険契約者が異なる場合において、死亡保険

■要旨

個人保険契約における保険金と税金の概要を解説する。

まず保険契約の保険契約者兼被保険者を相続した者(相続人)が、当該保険契約の死亡保険金を受領した場合にはみなし相続財産として相続税が課税される。なお、相続税法上、法定相続人×500万円の控除枠がある。

また被保険者と保険契約者が異なる場合において、死亡保険金受取人が保険契約者である場合は一時所得として所得税が、死亡保険金受取人が保険契約者と異なる場合には贈与税が課される。

満期保険金を保険契約者が受領した場合には、一時所得として所得税が課される。保険契約者と満期保険金受取人が異なる場合には贈与税が課される。ただし、5年以下の一時払い養老保険等の満期保険金については一律20.315%の源泉分離課税が行われる。

個人年金保険契約において、保険契約者が年金受取人である場合には毎年の年金給付額からその年金の額に対応する保険料の額を差し引いた金額について雑所得として所得税が課される。

保険契約者と年金受取人が異なる場合には、年金支給開始時に贈与税の課税が行われる。そして翌年以降、雑所得として所得税が課されるが、課税対象額の算定は複雑である。

■目次

1――保険金受取人の指定
2――死亡保険金と税制
  1|設例
  2|配偶者を死亡保険金受取人にした場合の税制
  3|配偶者を被保険者、子を死亡保険金受取人にした場合の税制
  4|配偶者を被保険者、自身を死亡保険金受取人にした場合の税制
3――満期保険金と税制
  1|設例
  2|満期保険金を保険契約者が受け取る場合
  3|満期保険金を配偶者が受け取る場合
4――個人年金保険と税制
  1|設例
  2|年金を保険契約者が受け取る場合
  3|年金を保険契約者以外が受け取る場合
5――おわりに生命保険契約を締結するときに、誰を保険金受取人として指定すべきかが問題となる。たとえば養老保険では、死亡保険金と満期保険金が支払われるので、死亡保険金受取人と満期保険金受取人を指定することとなる。他方、終身保険や定期保険では死亡保険金のみ支払われるので、死亡保険金受取人を指定する。なお、第三分野商品である医療保険においても入院・手術給付金受取人を指定するが、医療保険は損失補填的な性格を有するなど生命保険とは相違があるため本稿では触れない。

保険金受取人は保険契約にあたって保険契約者が指定する1。死亡保険金受取人の指定にあたり、保険契約者が被保険者でないときには、被保険者の同意を得る必要がある(保険法38条)。死亡により保険金を受け取る死亡保険金受取人が誰かであるかによって被保険者に不利益が生じるモラルリスクが発生するおそれがある。このようなモラルリスクの発生防止のために被保険者の同意を得ることとされている。なお、保険金受取人の指定にあたって、保険金受取人の同意を得る必要はない(保険法42条)。

保険金受取人は保険契約締結後であっても変更が可能である(保険法43条)。たとえば、指定した保険金受取人が死亡するなどして、別の人を指定したいときなどが挙げられる。

生命保険契約において、経済的には死亡保険金は遺族補償のため、満期保険金は老後資金確保などのために加入することが多いと思われる。この場合は保険金受領の必要性が最も高い人を保険金受取人として指定するのが自然であろう。ここで、理解しておく必要があるのは、保険金を受領した時の税金である。以下では保険金にかかわる税金を主に解説するが、本稿では典型的な家族構成を前提としている。

なお、筆者は税務の専門家ではないため、国税庁のホームページ等を参考にして本稿を執筆したことを前提にお読みいただきたい。


1 山下友信・米山高生「保険法解説」(有斐閣2010年)p287参照。

2――死亡保険金と税制

1|設例
ここで例を設定したい。配偶者関係にあるAとB、およびその子Cがいるとする。本人Aは生命保険契約を二つ締結した。具体的には、一つ目はAの死亡時に備えて定期保険に加入し、配偶者Bを死亡保険金受取人にした(①契約)。二つ目はBの死亡時に備えて定期保険に加入し、AとCを死亡保険金受取人とした(②契約)2。死亡保険金の税制を考える場合には、「保険金受取人」と「保険契約者」および「被保険者」の関係を見る必要がある。

なお、本稿においては、保険契約者が保険料を負担することを前提としている。適用される税制を変えようとして保険契約者を変更しても、実質的な保険料負担者が変わらなければ適用される税制は変わらないことに注意が必要である。

2 ちなみに、複数人を保険金受取人に指定する場合には、受取割合を指定する必要がある(本稿では解説を省略)。
2|配偶者を死亡保険金受取人にした場合の税制
① 契約では、図1で示す通り、本人Aが保険契約者・被保険者として保険契約を締結し、本人Aの死亡により配偶者Bに死亡保険金が支払われる。
死亡保険金が支払われた場合、Bに対して相続税が課される3。これはBが死亡したAを相続する立場にあることから、Aが保険料を負担した生命保険契約の死亡保険金は相続税法上「みなし相続財産」となるためである。なぜ、「みなし」とされるかであるが、死亡保険金請求権は保険金受取人が固有の財産として取得するものであり、相続によって取得するものではないからである4。しかし、保険料を負担したAの死亡により死亡保険金が発生し、相続人であるBがその死亡保険金を取得するため、相続税法上は相続財産とみなされている。

課税される金額であるが、死亡保険金には相続税法上、非課税枠がある。非課税枠は法定相続人×500万円とされている。設例では配偶者Bと子Cの2名が法定相続人であるため、2名×500万円=1000万円が非課税枠である。したがって死亡保険金のうち1000万円を超える部分が相続税の課税対象となる。

また相続税には基礎控除として3000万円+法定相続人×600万円の非課税枠があり5、設例では法定相続人が2名のため、4200万円までは相続税は賦課されない(ほかの財産がない場合)。さらに配偶者が受け取る相続財産に関しては配偶者控除として1億6000万円または法定相続分相当額(設例では2分の1)までは相続税が課されない6という取扱いがある。

3 タックスアンサー https://www•nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm 参照。 
4 保険・年金フォーカス「相続における死亡保険金-遺留分侵害請求」https://www•nli-research.co.jp/report/detail/id=83022?site=nli 参照。
5 タックスアンサー https://www•nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm 参照。
6 タックスアンサー https://www•nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm 参照。

3|配偶者を被保険者、子を死亡保険金受取人にした場合の税制

② 契約に関して述べる本項3と次項4については図2の示すところである。すなわち、保険契約者である本人Aが配偶者Bを被保険者として、被保険者Bの死亡により、本人Aと子Cに死亡保険金が支払われる。

本項では、Cが死亡保険金を受領した場合の税制について確認する。保険料は生存しているAが負担し、Cが死亡保険金を受領したものであるため、AからCの贈与とみなされる。したがって子Cには贈与税が課される。

贈与税については、一般に暦年課税として1月1日から12月31日までの贈与金額に課税される7。この場合、110万円の基礎控除額があるので、(ほかに贈与がない場合)110万円を超過した部分にのみ課税される。控除額が相続税に対して少ないうえに、税率は相続税より贈与税のほうが一般に高いので、十分な注意が必要である。


7 タックスアンサー https://www•nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm 参照。なお、相続時精算課税を選択することもできるがここでは省略する。
4|配偶者を被保険者、自身を死亡保険金受取人にした場合の税制
本項では②契約において、配偶者Bの死亡によって契約者である本人Aが死亡保険金を受け取る場合の税制について確認する。この場合、保険料負担者であるAが自身で配偶者の死亡によって死亡保険金を受け取るので、所得税が課される(一時所得)8。一時所得に係る所得税の課税対象額は受け取った死亡保険金額から、既払い保険料と特別控除額50万円を差し引いた額をさらに2分の1にする。この額を他の所得と合算して所得税課税がなされる。

8 タックスアンサー https://www•nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm 参照。

3――満期保険金と税制

1|設例
満期保険金については死亡(相続)が関係しないので、保険料負担者である「保険契約者」と「保険金受取人」の関係だけを確認すれば足りる。設例として、本人Aと配偶者Bがいて、Aが保険契約者かつ満期保険金受取人である場合(③契約)と、Aが保険契約者であり、Bが満期保険金受取人である場合(④契約)が考えられる。なお、③契約、④契約ともに被保険者がAでもBでも税制上の違いは生じない。
2|満期保険金を保険契約者が受け取る場合
③ 契約では保険契約者である本人Aが満期保険金を受け取る(図3)。
この場合はAが自分で保険料を負担し、自身で保険金を受け取るため、一時所得として所得税が課される9。一時所得の計算方法は上記2-4|と同じである。

9 タックスアンサー https://www•nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm 参照。

3|満期保険金を配偶者が受け取る場合
④ 契約では本人Aの配偶者Bが満期保険金を受け取る。この場合、生存している本人Aが保険料を負担し、満期保険金を配偶者Bが受領するので配偶者Bに贈与税が課される。計算方法は上記2-3|で述べたところと同じである(図4)。

なお、③ 契約、④ 契約共通で特別な取り扱いが規定されている。すなわち、一時払い養老保険であって、保険期間が5年以下のもの、および保険期間は5年超であるが、5年以内に解約されたものに関する規定である。この場合は、金融類似商品として、一律20.315パーセント(所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率による源泉分離課税が適用され、課税が終了する10


10 タックスアンサー https://www•nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1520.htm 参照。

4――個人年金保険と税制

1|設例
個人年金保険も満期保険金と同様に、「保険契約者」と「年金受取人」との関係により、適用される税制が異なる。そこで本人Aが保険契約者であると同時に年金受取人である個人年金保険契約(⑤契約)と、本人Aが契約者であり、配偶者Bが年金受取人である個人年金保険契約(⑥契約)を設例とする。なお、個人年金保険契約では被保険者と年金受取人が同一であることが通例であることを前提とする。2|年金を保険契約者が受け取る場合
⑤ 契約では保険料負担者である本人Aが自身で年金を受け取るので所得税が課される(図5)。毎年の年金は雑所得とされ、「年金給付額」から「その年額に対応する支払保険料額」を控除した金額が課税対象となる。たとえば10年確定年金支払いで年額200万円の年金が給付される商品において、保険料を合計して1500万円支払った場合を考える。この場合は1年あたりの年金年額に対応する保険料は、(保険料合計額)÷(年金支払い年数)なので1500万円÷10年で150万円となる。そうすると課税対象額は毎年200万円-150万円=50万円となる。この50万円を毎年、他の所得と合算して税額を算出する。
年金が支払われる際は、次により計算した所得税(復興特別所得税含む)が保険会社において源泉徴収される。ただし、源泉分離課税ではないので、確定申告は必要であることに注意する必要がある11

(年金の額 - その年金の額に対応する保険料の額)×10.21%

ただし、年金の年額からそれに対応する保険料を控除した残額が25万円未満の場合には、源泉徴収されない。

11 生命保険文化センターhttps://www•jili.or.jp/knows_learns/q_a/tax/568.html 参照。
3|年金を保険契約者以外が受け取る場合
⑥ 契約は図6に示すとおりである。本人Aが保険契約者、配偶者Bが被保険者兼年金受取人である。
⑥ 契約では保険料負担者ではない年金受取人が年金を受給するので、年金支払いが開始された年に贈与税が発生する(本人Aから配偶者Bへの贈与)。贈与税は① 解約返戻金相当額、② 年金一括払金額、③ 予定利率の複利年金現価率を乗じた金額のいずれか大きい金額に課税される12。課税金額の算出に当たっては上記2-3|で述べたところと同じである。

年金開始時に贈与税が課税されたうえで、翌年以降の毎年の年金給付にあたり、雑所得として所得税が課される。課税金額の算出過程は複雑である。具体的には1課税単位を算出したうえで、初年度がゼロでその後、課税単位が毎年1ずつ増えるように算出される。算出例を下記に示しておくが、本稿の範囲では詳細な説明を省略する。以下はタックスアンサーに掲載されている例である(図7)13

出典:国税庁タックスアンサー
前提:年金額100万円の10年確定年金(年金支払総額1000万円)
   保険料支払い総額200万円
   相続税(贈与税)評価額900万円
   以下、計算例として年金開始後6年目の所得税(雑所得)課税所得額を算出する。
計算式
① 相続税(贈与税)評価割合:900万円 ÷ 1000万円 =90% ⇒課税割合は8%(注1)
             (相続税評価額) (年金支払総額)
② 課税部分の合計額(図7の白枠部分の総額):1000万円× 8%  = 80万円
                   (年金支払総額) (課税割合)
③ 課税単位数(図7の白枠の数):10年×(10年-1年)÷2=45単位
             (支払い年数) (支払い年数-1年)
④ 1課税単位当たりの金額(図7の白枠一つあたりの金額):80万円  ÷  45単位=1.8万円
                          (課税部分の合計額) (課税単位)
⑤ 6年目の課税部分の年金収入額(図7赤囲いの年金収入額):1.8万円  ×  5   = 9万円
                         (1課税単位当たりの金額) (経過年数(注2))
⑥ 必要経費額(図7赤囲いの必要経費額): 9万円 × (200万円 ÷ 1000万円)=1.8万円
                  (課税年金収入額) (保険料総額) (年金支払総額)
⑦ 課税所得額:9万円   -  1.8万円 =7.2万円
      (課税年金収入額) (必要経費額)
この課税所得額が雑所得として他の所得と合算されて所得税が計算される。

注1 国税庁タックスアンサーに掲載される表で算定する。
注2 この計算例では経過年数6年目なので5(6年目-1年目)をかける。


12 第一生命HP https://www•qa.dai-ichi-life.co.jp/faq/show/1282?site_domain=default 参照。
13 平成22年以前の年金については計算式が異なる。

5――おわりに

今回の解説は単純な取扱いについて述べた。年金を一時金で受け取ったり、終身年金として受け取ったり様々な取扱いがある。個別の税金の取り扱いについては、加入時に募集担当者や保険会社の窓口、あるいは税理士などからよく説明を受けることが必要である。また、税金の申告および支払いに関しては、税理士あるいは所管税務署によく確認の上、行っていただきたい。