新NISAとiDeCo。老後資金の準備に特化した制度ではあるものの、実際にいくらから始められるのか、制約はないのか、気になる人もいるだろう。
この記事では、iDeCoの仕組みについて、新NISAと比較しつつ解説する。
まずは、iDeCoとはどんな特徴を持った制度なのか見ていこう。
●前編『資産形成を始めたいが…どっちにすべき?新NISAとiDeCo、2つの「税制優遇制度」の違い【新NISA編】』
老後資金づくりに特化したiDeCo
iDeCoは自分が拠出した掛金を自分で運用し、老後の資産を形成する私的年金制度である。基本的に20歳以上65歳未満の公的年金被保険者が加入でき、掛金は65歳になるまで拠出可能だ。老齢給付金は基本的に60歳以降に受け取ることができる。
iDeCoの最大の特徴は、3つのタイミングでの税制優遇措置である。第1に積立時。掛金全額が所得控除の対象となる。小規模企業共済等掛金控除として扱われ、たとえば毎月1万円(年間12万円)の掛金であれば、所得税率10%、住民税率10%の場合、年間2.4万円の税負担軽減効果がある。
第2に、運用益も非課税で再投資される。通常、金融商品の運用益には約20%の税金が課されるが、iDeCoでは新NISA同様にこれが非課税となる。第3に、受け取る際にも税負担が軽減される。年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象となる(新NISAには第1・第3の税制優遇はない)。
月々5000円から始められる掛金設定
iDeCoの掛金は月々5000円から始められ、1000円単位で自由に設定できる(新NISAは金融機関にもよるが、月100円から積立可能)。資金に余裕がない場合でも、自身のライフスタイルに合わせて無理のない負担で始められる設計になっている。掛金額は原則年に1回変更可能で、いつでも拠出を止めることもできる。
運用商品は、運営管理機関が選定する商品ラインアップの中から、加入者自身が選択する。定期預金、保険、投資信託などが用意されており、自分の運用方針に沿って商品を選び、掛金の配分比率を決める必要がある。
iDeCoの年金資産は、原則として60歳から受け取ることができる。ただし、60歳から受け取るには、60歳までにiDeCoに加入していた期間が10年以上必要だ。この期間が10年に満たない場合は、受給可能年齢が段階的に繰り下げられる。
受取方法は3つから選択可能
iDeCoのお金を受け取る方法は柔軟に設計されている。一時金として一括で受け取る方法、5年以上20年以下の有期年金として受け取る方法、そして一時金と年金を組み合わせて受け取る方法の3つがある。
運営管理機関によっては終身年金として受け取れる場合もある。受給開始時期は、75歳になるまでの間で選択できる。
ただし、iDeCoには重要な制約がある。老後の資産形成を目的とした制度であるため、原則として60歳になるまでは資産を引き出すことができない。例外的に、加入者が一定以上の障害状態になった場合や死亡した場合には、障害給付金や死亡一時金として60歳前でも受給できる。
よって、「老後資金づくり」を目的に資産運用を始めるのであればiDeCoは適した制度であるがそれ以外の、例えば教育資金やマイホーム資金を作ることには適していない。近い将来のための資産形成には新NISAの利用を検討したほうがよいだろう(関連記事『資産形成を始めたいが…どっちにすべき?新NISAとiDeCo、2つの「税制優遇制度」の違い【新NISA編】』)。
また、iDeCoは「年金」ではあるものの将来受け取れる額があらかじめ確定しているわけではない。受取額は拠出した掛金での運用成績によって変動する。運用商品の中には元本が確保されていないものもあるため、商品の特徴を理解したうえで選択する必要がある。
iDeCo利用時の注意点は?
iDeCoを利用する際には、いくつか留意すべき点がある。まず、手数料がかかることだ(口座開設時、運用時、受け取り時等に手数料が発生)。特に運用中に発生する手数料の金額は金融機関によって大きく異なるため、事前に確認が必要だろう。
また、課税所得がない人は、掛金の所得控除を受けられない。所得控除は本人の所得からのみ控除されるため、配偶者の所得からは控除されない点にも注意が必要だ。
新NISAとiDeCoは併用可能
新NISAとiDeCoは、どちらか一方を選ぶ必要はない。両方を同時に利用することができる。例えば、iDeCoで老後資金をしっかり準備しつつ、余裕資金をNISAで運用するといった使い方も可能だ。それぞれの制度が持つ特性を理解し、自身のライフプランに合わせて活用することで、より効果的な資産形成が期待できる。
ただし、併用を検討する際は、それぞれの制度の違いを十分に理解する必要がある。新NISAは比較的自由に資金を出し入れできるのに対し、iDeCoは原則として60歳まで引き出せない。この流動性の違いは、資金計画を立てる上で重要な要素となるだろう。
制度の特性を理解した上での選択を
新NISAとiDeCoは、いずれも税制優遇を受けながら資産形成を行える制度である。両制度に共通するのは、国民の資産形成を支援するという目的と、運用益に対する税制優遇措置だ。しかし、制度設計の詳細は大きく異なる。
新NISAは2024年の改正により、非課税保有期間の無期限化、制度の恒久化、年間投資枠の拡大、つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能化など、大幅に使いやすくなった。非課税保有限度額は生涯で1800万円となり、枠の再利用も可能になった。比較的自由度が高く、幅広い目的での資産形成に活用できる。
一方、iDeCoは老後資金の準備に特化した私的年金制度である。掛金の全額所得控除、運用益の非課税、受取時の控除という3段階の税制優遇が特徴だ。月々5000円から始められ、掛金設定の柔軟性も高い。
両制度は併用可能であり、それぞれの特性を活かした使い分けが重要となる。制度の詳細を理解し、自身の資金状況やライフプランに照らし合わせながら、どのように活用するかを検討することが求められる。
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。