日銀は、2025年12月の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げて0.75%としました。これは実に30年ぶりの高水準となります。
2026年に入ってからは、衆議院の解散・総選挙、自民党の歴史的圧勝等を受けた財政悪化懸念、円安によるインフレの上振れもあり、金利は上昇基調にあります。
デフレからインフレへ DC運用を見直すチャンス
確定拠出年金年金(DC)がスタートしたのが2001年10月。それから長きにわたって、デフレ状態が継続してきました。
デフレ下では現金や預金に資産を置いておくことも一つの選択肢でしたが、インフレを実感しやすくなった現在、お金についての意識や行動を見直す時期にきているといえるのではないでしょうか。
DCの想定利回り(企業型DCで設定されている場合が多い)や個々人が考える目標利回りに到達するためには、従来、投資信託を活用した分散投資が基本の考え方でした。分散投資は長期の資産運用において重要ですが、従来とは分散方法を少し変えるといった目線も必要かもしれません。
金利上昇に伴って目に見える変化のある資産クラスについて考えてみましょう。
元本確保型(定期預金・保険商品)
この1~2年で定期預金の適用金利や保険商品の保証利率が上昇しています。
定期預金の適用金利は、2024年1月が0.002%で、1年・3年・5年・10年と年限が異なっていても、ほぼ同じ適用金利でした。それが最近では年限が長い方が金利が高いという通常の状態になっています。
保険商品の保証利率は、2000年代初頭は定期預金の適用金利よりも高いことが一般的でしたが、日銀のマイナス金利導入(2016年)以降は低迷を続けていました。ところが最近では保証利率が上昇し、定期預金の適用金利を上回る傾向が出てきています。
企業型DCにおいては、投資のリスクにさらされたくない方も一定数、いらっしゃると思います。そのような方は定期預金や保険商品のなかでのスイッチングを検討されてもいいのかもしれません。
国債は理論上では無リスク資産
債券投資について、債券そのものの保有と債券型投資信託での保有とでは異なることを改めておさらいしておきましょう。
債券は国や地方自治体、企業などの発行体が資金調達のために発行する有価証券で、借用証書のようなものです。発行体は約束した利子(クーポン)を定期的に投資家に支払います。債券には満期が定められており、満期となる償還日には額面金額が投資家に払い戻されます(※)。
債券投資でもっとも考慮が必要なのは、発行体の信用悪化により、利子や元本の支払いが滞る信用リスクです。ただし株式投資と異なり、元本が戻ってくるという特徴があるため、株式に比べると比較的安全性が高いといえます。そのため、運用理論上ではリスクフリーレート(無リスク利子率)として、10年物国債利回りが用いられています。
個々人の投資から考えると、例えば個人向け国債を買って満期まで保有すれば、定期的にあらかじめ決められたクーポンを受け取ることができ、満期時には元本も払い戻されるので安心です。ただ、インフレが進んでいるときに長期の債券を購入すると、(購入時にクーポンは決定しているため)インフレ対応ができないということも想定されます。
※劣後債などの場合はこの限りではない。
DCでは債券型投資信託で債券投資が可能
債券は発行体によって国債(国が発行)、地方債(地方自治体が発行)、社債(企業が発行)などがあります。また、株式と同様に売り買いするための市場がありますが、取引単位が大きいなど、個人が投資できる銘柄はかなり限定的です。そのため、DCやNISAでは、債券そのものへの投資はできず、債券型投資信託やETF(NISAの場合)を活用することになります。
DCで活用されることの多いインデックス型の国内債券型投資信託は、銘柄数が1700近くあります。そのうち国債が84%と最も多く、次いで地方債が6%程度と、国債が占める割合が高くなっています。
債券は前述のとおり債券そのものを保有する場合は安全性が高いと言えますが、投資信託になると金利の影響を受けます。売り買いする場合の値段が世の中の金利によって変化するためです。
簡単にいうと、金利が上がると債券型投資信託の基準価額は下がる、という関係性があります。
結果的に、金利上昇局面にある現在、国内債券型投資信託の基準価額は下がる一方です。久しぶりにDC残高を確認して、思ったほど増えていない、と愕然とされる方もいらっしゃるようです。
ドルコスト平均法のメリットにあてはまらない
長期・積立投資が生きてくるのは、価格が上下動する場合です。下がり続ける商品を購入し続けると、ドルコスト平均法によるプラスが発生しません。ドルコスト平均法は、価格が下がればたくさん買え、安い値段で買ったものを時価評価するときに価格が上がっていればプラスに転じますが、下がり続けた場合はマイナスのまま、となります。
逆に今後、金利が下がる状況が発生すれば、債券型投資信託の基準価額は上昇します。現在、債券型投資信託を保有されている方は、金利が下がるまで気長に継続投資をするというのも一つの考え方です。
一方で、金利上昇局面では元本確保型の適用金利や保証利率が上昇しており、DCで分散投資を考える場合、定期預金や保険商品を選ぶというのも一つの方法かもしれません(元本確保型は満期まで保有せずにスイッチングによる売却を行うと、金利が低くなったり解約控除が適用されて元本割れする可能性もあることには注意が必要です)。
金利上昇局面にある現在、DC運用に無関心だった人こそ、ご自身の運用を考え直すチャンスです。
元本確保型を選択し続けるのであれば、適用金利や保証利率の高いものへのスイッチングが一つの方法といえます。また、国内債券型投資信託をどう考えていくのかも課題となります。
津田 弘美/野村證券 確定拠出年金部
社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。