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少子化が進む中、女性や高齢者の就労で厚生年金加入者は増加継続~年金改革ウォッチ 2026年3月号

2026/03/10 00:00

■要旨 本稿では、公的年金の財政状況のうち、加入者(被保険者)の変化を確認した。 この10年間の公的年金加入者の合計はおおむね横ばいで推移している。しかし区分ごとに見ると、厚生年金加入者が596万人増加した一方で、国民年金の第1号被保険者は374万人、第3号被保険者は291万人減少した。 厚生年金の加入者数が増加

■要旨

本稿では、公的年金の財政状況のうち、加入者(被保険者)の変化を確認した。

この10年間の公的年金加入者の合計はおおむね横ばいで推移している。しかし区分ごとに見ると、厚生年金加入者が596万人増加した一方で、国民年金の第1号被保険者は374万人、第3号被保険者は291万人減少した。

厚生年金の加入者数が増加した主な要因は、女性と高齢層における増加である。男女別に見ると、女性の厚生年金加入者は堅調な増加が続いており、2018年度からは毎年度の増加数が男性を上回っている。年齢層別に見ると、60歳以上では、女性だけでなく男性も増加を続けている。

なお、2024年度末に厚生年金に加入している短時間労働者は113万人であり、厚生年金の適用拡大が前述した増加の主因とは言い難い。

公的年金の財政状況については、出生率低下の影響などが注目されがちだが、厚生年金加入者の増加には留意が必要だろう。

■目次

1 ―― 先月までの動き
2 ―― ポイント解説:少子化が進む中、女性や高齢者の就労により厚生年金の加入者は増加が継続
  1|全体の推移:約10年で厚生年金加入者が増加
  2|適用拡大の影響:2024年10月に約8万人増
  3|性年齢別:女性や60代で厚生年金加入者が増加


* 年金改革ウォッチは、2013年1月より連載。2023年4月より、原則毎月第2火曜日に連載。
年金数理部会は、2024年度の公的年金の財政状況について各実施機関から報告を受け、質疑を行った。年金事業管理部会は、日本年金機構の2026年度計画について議論した。

○社会保障審議会 年金数理部会
2月02日(第108回) 2024年度財政状況(厚生年金保険、国民年金・基礎年金制度)
 URL https://www•mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00056.html (資料)
2月06日(第109回) 2024年度財政状況(国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済)
 URL https://www•mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00057.html (資料)

○社会保障審議会 年金事業管理部会
2月25日(第82回) 日本年金機構の令和8年度計画の策定
 URL  https://www•mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo82_00001.html (資料)

2 ―― ポイント解説

年金数理部会は、2024年度の財政状況報告の作成に着手した。本稿では、公的年金の財政状況のうち、加入者(被保険者)の変化を確認する。

1|全体の推移:約10年で厚生年金加入者が増加
公的年金の加入者は大きく3つに区分される(図表1)。70歳未満の正社員などは厚生年金の加入者となり、厚生年金加入者に扶養される20~59歳の専業主婦(夫)が国民年金の第3号被保険者となる。日本に居住する20~59歳の人で、厚生年金加入者にも国民年金の第3号被保険者にもならない人は、国民年金の第1号被保険者となる。

推移を見ると(図表2)、この10年間の公的年金加入者の合計はおおむね横ばいで推移している。しかし区分ごとに見ると、厚生年金加入者が596万人増加した一方で、国民年金の第1号被保険者は374万人、第3号被保険者は291万人減少した。
2|適用拡大の影響:2024年10月に約8万人増
厚生年金の加入者数が増加した要因としては、2016年から始まった短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大が思い浮かぶ。しかし、2024年度末に厚生年金に加入している短時間労働者は113万人であり、前述した増加の主因とは言い難い。なお、今回の審議対象となっている2024年度については、10月に短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大(企業規模の要件を社員100人超から50人超へ緩和)が行われた。統計の値には適用拡大以外の要素も影響している点には注意が必要だが、2024年の9月から10月にかけては、厚生年金に加入する短時間労働者が約8万人増加し、国民年金の第3号被保険者が約7万人減少した(図表3)。

3|性年齢別:女性や60代で厚生年金加入者が増加
厚生年金の加入者数が増加した主な要因は、女性と高齢層における増加である。男女別に見ると(図表4)、男性の厚生年金加入者は雇用延長が本格化した2013年頃から増加しているが、2020年頃からはわずかな増加にとどまっている。一方で、女性の厚生年金加入者は堅調な増加が続いており、2018年度からは毎年度の増加数が男性を上回っている。その結果、厚生年金加入者に占める女性の割合は、2000年頃の約3割から2024年度末には約4割へと拡大している。

年齢層別に見ると(図表5)、59歳以下では男性の厚生年金加入者が近年は横ばいで、女性のみが増加傾向にある。他方で60歳以上では、女性だけでなく男性も増加を続けている。このことから、前述した男性の厚生年金加入者のわずかな増加は、主に60歳以上の増加によるものと言える。

公的年金の財政状況については、少子化の進展による影響が注目されがちだが、厚生年金加入者の増加には留意が必要だろう。