<前編のあらすじ>
中学生の時に震度7の大震災を経験した佳之さん(44歳)は、現在は会社員を辞めて個人事業主になり、妻・真由美さん(42歳)、2人の息子(9歳と7歳)と暮らしています。
過去の経験から、地震対策には意識が高く、防災グッズを用意したり、家族にも防災意識を呼びかけていました。
ふと、「地震で被災した場合、国民年金保険料の支払いはどうなるのか」が気になって、年金保険料の前納の手続きの際に、年金事務所で聞いてみることにしました。すると、職員から驚くべき答えが……。
●前編:「地震で被災したのでお金がない……」中学生で「震度7の大震災」を経験した44歳男性が巨大地震に備えて確認した「保険と年金の話」
「保険料の免除」を受けられる
佳之さんは、近所にある年金事務所の国民年金窓口に行き、保険料の前納の手続きを済ませます。そこで窓口の職員に「こうして国民年金の保険料は払っていますけど、この前も地震で少し揺れましたし、災害には気を付けたいですね。自分が中学生の頃、地元近辺で大きな地震がありました。あの時は早朝だったということもあってびっくりしました。その後も大きな地震が各地で起きています。もし災害が起きて保険料が払えなくなったらどうすればいいですか?」と伝えました。
すると、職員から、万が一災害に見舞われた場合には、保険料の免除を受けられるとの説明がありました。
「おおむね2分の1以上の被害」で全額免除
国民年金第1号被保険者が毎月納付する国民年金保険料を納付する必要があります。しかし、所得が少ない場合には保険料の免除を受けることができます。
そして、この保険料免除制度には特例があります。震災、風水害、火災などの災害により、被災した人(本人、世帯主、配偶者)が所有する財産(住宅、家財など)の被害金額(保険金、損害賠償金等により補充された金額を除く)が財産の価格の「おおむね2分の1以上」になった場合も、保険料全額の免除を受けることができます。免除は、災害が発生した日の前月分から翌々年の6月分までの期間が対象となります。
所得が少ない場合だけでなく、こうした災害で大きな被害を受けた場合であっても免除を受けられるとのことでした。免除を受けるためには申請が必要になり、被害額を証明するための罹災証明書(市区町村で発行)なども用意して免除申請をすることになります。
「実は私、15年前の地震で親族を亡くしているんです」
本来の用件は前納の手続でしたが、災害時の保険料免除について詳細に教えてくれた職員に、佳之さんは感謝しました。
すると、職員は「実は私、15年前の地震で親族を亡くしているんです。災害への備えや、災害が起きた時の制度を知っておくことは大事だと痛感しています」と佳之さんに話します。
佳之さんは「そうでしたか……。こういった制度があれば、多くの人が救われますね。教えてくださったことは忘れないようにします」と免除制度の仕組みを理解し、覚えておくのでした。
ちなみに、国民年金の保険料の免除を受けた場合は10年以内であれば、後から保険料を納付することもできます(追納制度)。
災害の際に慌てないように、普段から確認して備えておくことが重要です。そもそも年金は、老後や障害、死亡などへの備え、そのための給付という性質を持っていますが、ある日突然やってくる非常災害にも備え、保険料が納められない場合のことを確認しておくと不安も減ることになるでしょう。
※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。