年金を受給できる年齢でも、引き続き働いて給与・賞与を受け取ると年金がカットされることがあります。かといって給与が下がり賞与がなくなったからといって、年金を全額受け取れるかというと、そうとも限りません。
新しい会社で給与が下がった65歳男性
会社員を40年以上続けていた俊勝さんは1歳上の妻・晶子さんと暮らしています。その俊勝さんは2026年1月に65歳を迎えました。64歳になった際、特別支給の老齢厚生年金(特老厚)を受給できるようになり、年金事務所でその手続きを済ませていました。
しかし、俊勝さんは在職中で月給50万円、賞与も夏(6月)冬(12月)それぞれ120万円くらい支給されていたため、特老厚は全てカット(支給停止)されると言われました。
「年152万、月12万円ちょっとの年金が64歳から受け取れるはずだったのに年金は全てカットされるのか……収入が高いから仕方ないけど、やっぱり保険料をずっと支払ってきたのにカットされるのは嫌だな」と思いながら、こうして65歳になりました。
65歳からは特老厚はなくなり、老齢基礎年金と老齢厚生年金になります。
俊勝さんは当初、65歳になる2026年1月の誕生日で退職し、完全リタイアするつもりでしたが、同年1月、誕生日の翌日から機会を得て再就職することになりました。ただし、新しい会社での月給は26万円と大幅に下がり賞与もありません。
「全額受けとれる」と確信
俊勝さんは64歳になった際に年金事務所で、「65歳以降に働くとカットされるのは老齢厚生年金(報酬比例部分)で、経過的加算額、老齢基礎年金などには影響がない」と聞いていました。
「報酬比例部分だけということは、年金の一部だけがカットの対象になるわけだな。あの時は65歳で退職する予定だったから、65歳以降年金は全額支給されると言われた。結局65歳以降も働くことになったが、収入がかなり減るので年金はカットされないんじゃないか」と思うようになります。
俊勝さんは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を請求するために、65歳の誕生月に届いた「老齢年金請求書(ハガキ)」をポストに投函し、年金を受給することになりました。65歳になった月の翌月分(2026年2月分)以降がその支給対象になります。
ここで俊勝さんは「前回年金事務所へ行ってから1年も経って年度も変わったし、また試算してもらおうかな」と思い、再び年金事務所に行きました。早速窓口で「誕生日の翌日から新しい会社に就職し、給与が26万円に下がり、賞与もなくなりました」と伝えて、試算してもらいます。
俊勝さんの計算では、65歳からの年金は年間240万円、そのうち老齢厚生年金(報酬比例部分)は156万円になりそうですが、収入が減ったので、仕事を辞めなくても全額受け取れると確信していました。
●俊勝さんは年金を全額受け取れたのでしょうか。後編【「年48万円、つまり月4万円もカット?」再就職した65歳男性が絶句…働いていると年金が減る「在職老齢年金制度」驚きの中身】では、「在職老齢年金制度」の具体的な計算について詳しく解説します。
※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。