連載「お金の心理学」心の動きを知ってお金を増やせる人になろう
買い物や投資について、自分の意志で冷静に判断したつもりが、実は売り手の巧みな戦略に乗せられているだけかもしれません。お金にまつわる「心理学」の知識をつけて自分の無意識を知り、知らず知らずのうちに他人や運命にコントロールされる人生から脱しましょう。
第1回 「買った」つもりが「買わされた」のかも?買い物にひそむワナ
最近「買ってよかったもの」を思い浮かべてください。なぜその商品を買ったのでしょうか。安かったから?ずっと欲しかったから?要は「いい商品だと思ったから」ということでしょう。商品を選んだのは他ならぬ自分自身だと考えているはずです。
しかし、それは本当に自分の意志なのでしょうか?実は、自分で選択して買ったつもりでも、実は企業の戦略に乗せられて「買わされている」だけかもしれません。
4つの「買わされている」パターンを読み解く
まず、代表的な4つの「買わされている」パターンを紹介します。自分に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
パターン1 「タイムセール」「限定」で足を止める
「タイムセール」と聞いてつい店に入ってしまう。コンビニで「期間限定」のお菓子を見つけると手に取ってしまう。旅行に行くと、「地域限定」の商品を買いたくなる――。こんな経験を持つ人も多いのではないでしょうか?
人間は「今しか手に入らない」「ここでしか手に入らない」と思うと、希少性を感じ、実際以上に商品を魅力的に感じる傾向があります。これを「希少性の原理」といいます。
「セール」や「限定」という言葉に惹かれた時は、その商品が希少であるというだけで魅力的に映っていないか、本当に自分にとって必要な価値あるものなのか、よく見極めましょう。
パターン2 「値引き」に心惹かれるワケ
「15,000円→9,500円」という値札を見て、つい洋服を購入してしまう。夕方のスーパーで、値引き商品を大量に買い込んでしまう。こんな経験はないでしょうか?
見えた情報が判断基準に影響を及ぼすことを「アンカリング効果」といいます。たとえば、15,000円という情報があることで、9,500円という金額が割安に感じられ、つい購入したくなってしまうのです。
「値引き」商品を購入する時は、元の値段が判断に与える影響をよく理解し、必要以上に財布のひもがゆるまないよう注意しましょう。
パターン3 松竹梅の「竹」を選んでしまう
800円、600円、400円のお弁当があって、「800円は高すぎる。400円は安すぎる。600円のが無難かな」と600円のお弁当を手に取ってしまう。
このように3つの値段(松竹梅)を示された時、真ん中を選ぶ人が多いといわれています。これを「極端の回避性(松竹梅の法則)」といいます。
600円、400円と選択肢が2つしかない場合はこれに当てはまりません。そこに、800円という選択肢を追加することで、400円のお弁当ではなく600円のお弁当を選ぶ人が増えるのです。
3つの選択肢がある時、自動的に真ん中を選ぶのではなく、自分が求める価値とそれにふさわしい対価を冷静に見極めましょう。
パターン4 「無料」と「ポイント」に注意
無料セミナーの広告を見て「無料ならいいか」と思って参加する。お得に生活するため、ポイントをフル活用している。そんな方も多いのではないでしょうか?
人間には損をしたくないという「損失回避性」があります。「無料」は損をしないという保証なので、無料と聞いた瞬間、人間は自然とガードがゆるみます。
「無料セミナー」と聞いて気軽に足を運び、気が付いたら保険に加入したり、不動産を購入していたり。こんなケースも少なくありません。
また、ポイントも「損失回避性」を利用した戦略です。直接お金を支払う場合と比べて、ポイントを使う場合、「損をしている」という実感が得られにくくなります。一般的に、1万円を支払うより、1万ポイントを使うほうが抵抗感が少ないという人は多いです。
「無料」や「ポイント」は一見お得ですが、それゆえにハードルが下がる危険性は十分理解しておきましょう。
後悔のない買い物をするために
限定や値引きに惹かれたり、真ん中の選択肢を選びがちだったり、無料やポイントを活用したりするのは悪いことではありません。実際、限定商品を購入して満足したり、値引きで高品質な商品を割安で入手したり、無料で有益な情報を得たりと、当然いいこともあります。
一方で、無意識が買い物に与える影響を知っておくことが大切です。
無意識に人間が抱いてしまうかたよった見方を、学問の世界では「バイアス」といいます。心のうちにひそむバイアスへの理解を深め、必要以上に振り回されず、自分にとって本当に必要なモノ・コトにお金を使いましょう。
そうすることで、買い物での後悔を減らせるはずです。
おさらい 無駄遣いを回避するために覚えておきたい4つのポイント
(1) 希少性の原理(「今だけ」「限定」に注意)
(2) アンカリング効果(値引き前の額を見たら注意)
(3) 極端の回避性(松竹梅の法則。3つ選択肢があったら注意)
(4) 損失回避性(「無料」「ポイント」に注意)
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
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