総務省が発表した2021年の家計調査によると、65歳以上の単身世帯の1ヵ月の平均支出額は13万7,210円でした。昨今の物価高などを考慮し、1ヵ月の平均支出額を年金でまかなおうとすると約15万円は必要でしょう。そこで今回は、厚生年金を一人で月15万円受け取れる人が全体の何%ほどいるのかを紹介します。
日本の公的年金制度について
まずは、基本的な日本の公的年金制度について見ていきましょう。日本の公的年金は2階建て構造になっており、1階部分が国民年金、2階部分に厚生年金があります。国民年金は日本に住む20歳から60歳までの人に加入義務があり、毎月保険料を支払わなければなりません。
国民年金の保険料は全員一律で、基本的には受け取る際の年金額も同じです。ただし、加入月数によって受け取れる金額は異なるため注意しなければなりません。
次に厚生年金は、会社員や公務員が加入するプラスαの年金です。毎月の保険料は年収によって異なり、支払った保険料に応じて将来受け取る厚生年金額も違います。
厚生年金で15万円もらうには年収いくら必要?
年金額を決めるのは、加入期間とその間の年収です。ここからは、65歳以降に厚生年金15万円を受け取るには、年収がいくら必要なのか見ていきましょう。厚生年金を受け取るということは、同時に国民年金も受け取るということなので、国民年金も含めた金額で紹介します。
一般に公表されている簡易年金試算ツールを使って算出しました。あくまで参考値としてください。
◇厚生年金加入期間40年、その間の平均年収が460万円
この場合、厚生年金101万円、老齢基礎年金80万円で、月額が約15万833円になります。
加入期間が短い場合に必要な年収は?
厚生年金の加入期間が40年という方もいれば、25年や15年といった方もいるでしょう。ここでは、加入期間が短い場合に、年金を毎月15万円受け取ろうとすると、どのくらいの年収が必要なのか紹介します。先ほどと同じ試算ツールを使いました。
◇厚生年金加入期間25年の場合
毎月15万円の年金を受け取ろうとすると、950万円ほどの年収が必要です。
◇厚生年金加入期間15年の場合
毎月15万円の年金を受け取ろうとすると、1,820万円ほどの年収が必要です。
厚生年金の加入期間が短ければ、多額の年収が必要になります。しかも加入期間中この年収である必要があるため、一般的にはなかなか難しいでしょう。
年間の厚生年金を算出する際は、平均標準報酬額をもとに計算します。そして平均標準報酬額を導くためには、月収部分にあたる標準報酬月額とボーナスにあたる標準賞与額が必要です。ただし、標準報酬月額は上限が65万円、標準賞与額も上限150万円を3回まで、という決まりがあります。
つまり、加入期間が短いと、どれだけ年収を得たとしてもこの上限に達することで、厚生年金額はそれ以上増えないというわけです。実質的には1,230万円が平均標準報酬額の上限で、あとは加入期間で厚生年金額が決まると言えるでしょう。
厚生年金受給者の平均額は?
実際の厚生年金受給者の平均額はいくらくらいなのでしょうか?厚生労働省が公表した「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」で確認していきましょう。
2020年度(令和2年度)の厚生年金保険受給者平均年金月額は、14万6,145円でした。この金額は、老齢基礎年金(国民年金)も含みます。2022年の老齢基礎年金が6万4,816円のため、厚生年金だけで考えると、約8万円です。
厚生年金で月15万円もらえる人は全体の58.75%
次に、「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を使って、厚生年金で月15万円受け取れる人は全体の何%いるのか考えていきましょう。公表されている厚生年金額には、国民年金が含まれています。
調査における年金受給権者の総数は、1,610万133人。そのうち、年金月額15万円~16万円は、94万5,950人です。この結果、厚生年金で月15万円受け取れる人は全体の58.75%でした。
月15万円の年金は平均的!ただし年金だけでは急な支出が心配
厚生年金受給者の約6割の方が、年金を月15万円受け取ることができています。つまり、年金で月15万円というと、平均的な金額ということがわかったでしょう。ただし、あくまでもデータ上の平均額であり、個人差が大きいのも事実です。
老後生活においては、冠婚葬祭や介護・入院などさまざまなことが起こり得ます。そういった支出にも備えておかなければなりません。
厚生年金を増やすために加入期間や年収を増やすことも大切ですが、年収には上限もあるため、貯蓄や投資によって老後の資産を準備しておくと安心でしょう。
文・山村望愛
(2022年8月20日公開記事)