国は高年齢者雇用安定法で、企業に定年年齢の引き上げや定年の廃止などを考えるよう指示し、2021年4月からは70歳まで就業機会を与えるよう努力義務を課しています。そのため、定年後も働く高齢者が増加中です。しかし、年金をもらいながら働くと年金を満額受け取れない場合も……。そこで今回は、在職老齢年金を理解し、年金を満額もらいながら働ける月収の上限額を考えていきましょう。
働きながら受け取る在職老齢年金とは?
60歳以降も仕事を続け、厚生年金保険に加入しながら受け取る老齢厚生年金のことを在職老齢年金と言います。この在職老齢年金は、給料と老齢厚生年金の額が一定額以上になると、老齢厚生年金の一部または全部を受け取れないケースがあるのです。
2022年に改正!これまでとの違いとは
2022年3月以前は、65歳未満の方が、基本月額(年金額を12で割ったもの)と総報酬月額相当額(毎月の給料+年間の賞与を12で割ったもの)の合計額28万円を超えると、老齢厚生年金を全額は受け取ることができませんでした。
しかし法改正によって、2022年4月以降は、65歳未満の方も65歳以上の方と同じ仕組みで老齢厚生年金の支給停止額を算出するようになりました。どのような仕組みになるのか次で見ていきましょう。
基本月額+総報酬月額相当額の合計47万円以下ならOK
2022年4月以降は、以下のような仕組みで支給停止額が決まります。
◇基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下→支給停止額0円(全額支給)
◇基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超える→一部または全額支給停止
支給停止額の計算方法は以下の通りです。
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円) ×1/2
この計算式を用いると、年金を満額受給できるおおよその月収上限額が分かります。
例えば、基本月額10万円なら総報酬月額相当額上限は37万円、基本月額15万円なら総報酬月額相当額上限は32万円です。
高齢者も働きやすい環境になりつつある!
年金を満額もらいながら働ける月収の上限額を算出する場合は、自分の基本月額を算出すると計算しやすいでしょう。人生100年時代が当たり前になる時代です。働くことで年金の不足部分が補え、社会との関わりも持てます。老後に自分らしく働くためにも、年金に関する知識を持っておきましょう。
文・山村望愛