夫が死亡……妻は遺族年金と自分の年金の二重取りできる?

2022/11/23 17:00

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夫が死亡した場合、夫や妻の働き方や暮らし方に応じて、遺族年金が受け取れます。しかし、遺族年金を受け取っている人が老後の年金(老齢年金)が支給される65歳になったとき、遺族年金と老齢年金の両方ともを受け取ることはできるのでしょうか? 会社員の遺族年金の基本「遺族厚生年金」まず、会社員の残された家族の基本となる遺族年金が、

夫が死亡した場合、夫や妻の働き方や暮らし方に応じて、遺族年金が受け取れます。しかし、遺族年金を受け取っている人が老後の年金(老齢年金)が支給される65歳になったとき、遺族年金と老齢年金の両方ともを受け取ることはできるのでしょうか?

会社員の遺族年金の基本「遺族厚生年金」

まず、会社員の残された家族の基本となる遺族年金が、厚生年金保険から支給される「遺族厚生年金」です。この遺族厚生年金は、亡くなった方が受給する予定の、または受給していた額の4分の3が支給されます。

厚生労働省は毎年「夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額」を発表していますが、これによると、2021年度の夫婦2人分の標準的な年金額は、表1の額となっています。

妻は遺族年金と自分の年金の二重取りできる?
(表1. 夫婦2人の標準的な年金額(月額))

表1のケースでは、夫の厚生年金90,346円の4分の3である6万7,760円が、遺族厚生年金として残された家族に支給されることになります。

なお、このモデルケースは40年間働いて今は引退している夫婦の例ですが、現在働いていて、厚生年金保険への加入が短い(300月(25年)未満)の場合、今までの平均年収で300月働いたとして計算した額が支給されます。

例えば、入社5年目(60月)の会社員が亡くなり、その人がもらえる予定だった厚生年金が月額1万円の場合、残された遺族に支給される遺族厚生年金は、
1万円×(3/4)×(300月/60月)=3万7,500円 となります。

夫が死亡したとき遺族厚生年金を受け取る人は?

遺族厚生年金を受け取ることができる人は、亡くなった人の家族構成と年齢によって異なります。

夫が死亡したときは、夫に生計を維持されていた妻・子、55歳以上の父母、孫、55歳以上の祖父母の順番で受け取る権利が発生します。この場合で、夫が亡くなったときに妻が30歳未満で子どもがいない場合には5年間だけの支給となり、妻が30歳以上であれば、一生涯支給されます。

子・孫が受け取る場合は18歳に達した年度の末日までです。子が障害年金の障害等級1、2級に該当する状態であれば20歳の誕生日の前日まで支給されます。父母、祖父母が受け取る場合は、60歳から一生涯支給されます。

遺族年金と老後の自分の年金が両方受け取れるケース

夫が死亡した場合、妻が遺族年金と老後の自分の年金が受け取れるのは以下のようなケースです。

・夫が会社員または公務員で妻が専業主婦・個人事業主
・夫が会社員または公務員、妻も会社員または公務員として勤務経験がある

それぞれのケースについてみていきましょう。

夫が会社員または公務員で妻が専業主婦または個人事業主

【夫が会社員または公務員で、妻が専業主婦または個人事業主の場合】
65歳以降、受け取れる遺族年金と老齢年金の組み合わせは以下のいずれかになります。
・遺族厚生年金+遺族基礎年金
・遺族厚生年金+老齢基礎年金

妻が専業主婦または個人事業主で、会社員または公務員として勤務していた夫が死亡した場合、残された遺族は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。また65歳以降、妻に老齢基礎年金の受給資格も発生しますが、遺族基礎年金と老齢基礎年金の両方は受け取れないため、いずれかを選ぶことになります。

なお、年間で受け取れる遺族基礎年金は「777,800円※+子どもがいる場合の加算」で計算をするのに対し、老齢基礎年金は777,800円×保険料納付済月数÷480で計算するため、ほとんどの場合遺族基礎年金の方が多くなる可能性が高くなります。

※令和4年度の場合

ただし、遺族基礎年金は18歳未満の子がいる配偶者であることが要件です。そのため、子どもがいないケースや、65歳時点で子どもがすでに18歳以上になっているケースなど、実質選択肢は老齢基礎年金しかない場合もあります。

夫が会社員または公務員、妻も会社員または公務員として勤務経験がある

【夫が会社員または公務員、妻も会社員または公務員として勤務経験がある場合】
65歳以降、受け取れる遺族年金と老齢年金の組み合わせは以下の通りです。
・老齢厚生年金+老齢基礎年金(老齢厚生年金額の方が遺族厚生年金額よりも多い場合)
・遺族厚生年金+老齢厚生年金+老齢基礎年金(老齢厚生年金額の方が遺族厚生年金額より少ない場合)

夫が会社員または公務員で、かつ、妻も会社員または公務員としての勤務経験がある場合、夫に万が一のことがあると、遺族厚生年金と遺族基礎年金が受け取れる点は前述のケースと同様です。

しかしこのケースでは65歳以降は、遺族基礎年金を選択することはできません。また、遺族厚生年金は、老齢厚生年金よりも受給額が大きい場合にその差額を受け取ることができます。老齢厚生年金額よりも、遺族厚生年金額の方が少ない場合、遺族厚生年金は全額支給停止となります。

年金に不安があれば年金事務所へ連絡を

夫に万が一のことがあった場合、妻は遺族年金が受け取れます。また、夫が死亡時に会社員あるいは公務員として働いている場合に、妻は遺族年金と老後の年金を両方受け取れる場合があります。

老後の公的年金が不安な人は、最寄りの年金事務所に確認してみましょう。

文・fuelle編集部

(2022年11月18日公開記事)