会社員・女性(55)、共働き 子供1人(27歳、独身)の相談
「成人済みの子供にいつか財産を渡したいと思っていますが、贈与の仕組みが変わると聞いて焦っています。今後、課税される期間が延びるようなので、贈与は早いほうが良いでしょうか。まだ自分たちの老後資金の準備もあり、タイミングに悩んでいます。いずれ200万円くらい渡せればと考えていますが、早くしないと損することはありますか?」
アドバイス1 まずは老後資金の確保を優先しましょう
たしかに、自分が生きているうちに子や孫に財産を渡す「生前贈与」は、制度変更が予定されていますが、焦って贈与するのではなく、まずは自分たちの老後資金をしっかり確保しましょう。焦って子供に財産を渡した結果、老後の生活に困ってしまっては、逆に子供に迷惑をかけることになるからです。
贈与を始めるタイミングは、「老後資金は充分足りる」と確認できた時です。老後の蓄えを準備したうえでなお余裕資金があるなら、贈与すればよいのです。
暦年贈与はどう変わりそうなのか
まだ確定ではありませんが、暦年贈与の仕組みが変わるかもしれないのは、「非課税の期間が短くなるかもしれない」という点です。
まず、生前贈与のうち「暦年贈与」は、一人につき年間110万円まで“非課税で”贈与できる制度です。しかし、「贈与した人が亡くなる前3年以内の分」については、“課税される”(相続税の対象に含まれる)というルールがあります。
このルールを「持ち戻し」と呼びますが、今後、この期間が現在の3年から7年に延長することが見込まれているのです。
たとえば、今のルールでは、70歳から毎年暦年贈与をしていた人が80歳で亡くなった場合、3年さかのぼって「77歳以降の3年分が課税対象」です。
しかし持ち戻しが7年に伸びると、今後は「73歳以降の7年分が課税対象」となります。この場合、非課税だったのはわずか3年分ということです。
そのため、既に贈与できる状況にある場合、つまりは老後の資金が確保できているなら、早めに贈与を始めたほうが得になります。ただし、自分たちの老後を考え、無理して贈与を急ぐのはやめておいたほうがいいでしょう。
アドバイス2 将来、孫に生前贈与するのも一つの手です
持ち戻しの期間は延長する見込みですが、その影響を避ける方法として、子供ではなく、(孫ができたら)孫に生前贈与するという手もあります。持ち戻しのルールは、孫には適用されないからです。
ただし、持ち戻しの対象になる場合もあります。それは、遺言書で孫が財産を引き継ぐことを指定されている場合や、孫が死亡保険金の受取人になっている場合です。
また、今後のルール変更により、孫が持ち戻しの対象となる可能性もありますので、報道には注視しておきましょう。
今回、暦年贈与の仕組みが変える目的は、資産を早めに若い世代に移すことのようです。しかし、こうした制度変更に惑わされず、まずはしっかりと先を見据えて老後資金の準備を進めましょう。
文・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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