「厚生年金が減る!」選択制DCの落とし穴と対策

2022/12/24 11:00

企業型DCは通常、掛金を勤務先が出してくれますが、従業員が負担することもでき、その場合、所得税や社会保険料が少なくなり手取りが増えます。これを「選択制DC」といいます。お得なようですが、注意点もあって、将来の厚生年金が減ってしまうかもしれません。 給料の一部をDCの掛金にするか、そのまま受け取るかを選べる 選択制DC(

企業型DCは通常、掛金を勤務先が出してくれますが、従業員が負担することもでき、その場合、所得税や社会保険料が少なくなり手取りが増えます。これを「選択制DC」といいます。お得なようですが、注意点もあって、将来の厚生年金が減ってしまうかもしれません。

給料の一部をDCの掛金にするか、そのまま受け取るかを選べる

選択制DC(確定拠出年金)は、給料の一部を年金の掛金にするか、そのまま給料として受け取るかを従業員が決める(選択する)制度です。

DCの掛金となる給与の一部は「ライフプラン手当」「生涯設計手当」のような名目で再定義され、その部分をどうするかを従業員が決めるのが選択制DCの仕組みです。

ライフプラン手当が3万円だとして、3万円を給料のまま受け取ることもDCの掛金にすることもできます。3万円のうち1万円だけをDCの掛金にもできるのです。DCの掛金を選ぶと、その分給料が少なくなります。

DCの掛金にした分は会社が支払った「掛金」と見なされ、給与ではなくなりますが、手取りは増えます。なぜなら、DCの掛金分は所得税や社会保険料の計算の対象ではないためです。

掛金の部分には税金や保険料がかからないので、給料としてもらったお金を自分で投資に回すよりは有利です。給料には税がかかっているからです。

DCの掛金にすると将来受け取る厚生年金が減る

この仕組みでDCの掛金を増やすと社会保険料の負担が減るものの、デメリットとしては、将来の厚生年金も減ってしまうことがあります。厚生年金以外にも減るものとして、「傷病手当金」「出産手当金」「失業給付」などがあり、注意が必要です。

たとえば、30歳、税込み年収400万円、掛金月額2万円での1年間の手取り増加分を概算すると、5万8,032円となります。これは所得税や住民税、社会保険料の減った負担額です(60歳まで給与が変わらないと仮定)。

税金・保険の種類負担がいくら減るか
所得税8,100円
住民税1万6,200円
社会保険料 3万3,732円
合計(増える手取り額)5万8,032円
(筆者作成)

30年間同じ掛金を支払い続けると、約174万円の負担減です。

一方、将来受け取る厚生年金は、1年あたり3万9463円減額されます。65歳から30年間受け取るとすると約118万円受け取る年金が少なくなるわけです。

この人の場合は、負担が174万円減るものの、もらえる年金も118万円減るので、選択制のメリットのほうが大きいことが分かります。

ただ65歳から30年間受け取れるとは限らないので、必ずしも選択制DCのほうがお得になるとは限りません。

厚生年金が減る分は増えた手取りでカバーしよう

選択制DCにする際に考えておかないといけないのは、厚生年金の受取額は減り続けていて、今後も減る可能性が高いということです。

選択制DCで掛金を選ぶなら、増えた手取りをiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAに回すなどして有効に使いましょう。そうすることで、厚生年金が減る分をある程度カバーできます。

文・松田聡子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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