企業型DCは通常、掛金を勤務先が出してくれますが、従業員が負担することもでき、その場合、所得税や社会保険料が少なくなり手取りが増えます。これを「選択制DC」といいます。お得なようですが、注意点もあって、将来の厚生年金が減ってしまうかもしれません。
給料の一部をDCの掛金にするか、そのまま受け取るかを選べる
選択制DC(確定拠出年金)は、給料の一部を年金の掛金にするか、そのまま給料として受け取るかを従業員が決める(選択する)制度です。
DCの掛金となる給与の一部は「ライフプラン手当」「生涯設計手当」のような名目で再定義され、その部分をどうするかを従業員が決めるのが選択制DCの仕組みです。
ライフプラン手当が3万円だとして、3万円を給料のまま受け取ることもDCの掛金にすることもできます。3万円のうち1万円だけをDCの掛金にもできるのです。DCの掛金を選ぶと、その分給料が少なくなります。
DCの掛金にした分は会社が支払った「掛金」と見なされ、給与ではなくなりますが、手取りは増えます。なぜなら、DCの掛金分は所得税や社会保険料の計算の対象ではないためです。
掛金の部分には税金や保険料がかからないので、給料としてもらったお金を自分で投資に回すよりは有利です。給料には税がかかっているからです。
DCの掛金にすると将来受け取る厚生年金が減る
この仕組みでDCの掛金を増やすと社会保険料の負担が減るものの、デメリットとしては、将来の厚生年金も減ってしまうことがあります。厚生年金以外にも減るものとして、「傷病手当金」「出産手当金」「失業給付」などがあり、注意が必要です。
たとえば、30歳、税込み年収400万円、掛金月額2万円での1年間の手取り増加分を概算すると、5万8,032円となります。これは所得税や住民税、社会保険料の減った負担額です(60歳まで給与が変わらないと仮定)。
税金・保険の種類 | 負担がいくら減るか |
---|---|
所得税 | 8,100円 |
住民税 | 1万6,200円 |
社会保険料 | 3万3,732円 |
合計(増える手取り額) | 5万8,032円 |
30年間同じ掛金を支払い続けると、約174万円の負担減です。
一方、将来受け取る厚生年金は、1年あたり3万9463円減額されます。65歳から30年間受け取るとすると約118万円受け取る年金が少なくなるわけです。
この人の場合は、負担が174万円減るものの、もらえる年金も118万円減るので、選択制のメリットのほうが大きいことが分かります。
ただ65歳から30年間受け取れるとは限らないので、必ずしも選択制DCのほうがお得になるとは限りません。
厚生年金が減る分は増えた手取りでカバーしよう
選択制DCにする際に考えておかないといけないのは、厚生年金の受取額は減り続けていて、今後も減る可能性が高いということです。
選択制DCで掛金を選ぶなら、増えた手取りをiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAに回すなどして有効に使いましょう。そうすることで、厚生年金が減る分をある程度カバーできます。
文・松田聡子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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