「買い時は探らない。相場は気にせず積み立て投資を早く始めて続けよう」BANK ACADEMY小林氏インタビュー

2023/01/01 07:00

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メガバンクを辞め、YouTubeやブログで初心者に向けて情報を発信している小林亮平氏。YouTubeチャンネルBANK ACADEMYでは、つみたてNISAやiDeCo、ふるさと納税などについて、親しみやすいペンギンのキャラや図などを使いながら、分かりやすく教えており、最近、登録者数が最近50万人を超えたばかり。相場の

メガバンクを辞め、YouTubeやブログで初心者に向けて情報を発信している小林亮平氏。YouTubeチャンネルBANK ACADEMYでは、つみたてNISAiDeCoふるさと納税などについて、親しみやすいペンギンのキャラや図などを使いながら、分かりやすく教えており、最近、登録者数が最近50万人を超えたばかり。相場の先行きが不透明な中で、2023年からの投資、資産形成をどう考えればいいのか、小林氏に聞いた(インタビューは2022年12月上旬に行われました)。(聞き手:濱田 優・dメニューマネー編集長)

『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』 (Amazonに飛びます)

小林亮平(こばやし・りょうへい)

1989年生まれ。横浜国立大学経営学部卒業後、三菱UFJ銀行に入行。退社後、ブログやSNSで資産形成の入門知識を発信。「超初心者でも理解できるよう優しく伝える」をモットーに、自作のイラストを駆使した解説や、フォロワーから頂いた質問への丁寧な返事が好評を得ている。著書に『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』(KADOKAWA)がある。
https://bank-academy.com/

チャンネル名BANK ACADEMY
URLhttps://www.youtube.com/@bankacademy
登録者数約50万人(2022年12月現在)
主な内容つみたてNISAやiDeCo、年金、社会保険、資産運用など

初心者や未経験者が何かを始める際、「まずはYouTubeでHow To動画を探す」という人が増えている。投資・マネー分野でも多くのYouTuberが分かりやすいコンテンツを日々配信している。2023年の新春企画として、この分野のYouTuber3人に話を聞いた。

質問「円安、株安の今、つみたてNISAを始めるのはよくないですか?」

──2021年から22年の相場を振り返った上で、ずばり2023年はどういうスタンスで投資していけばいいでしょうか。

いつも回答は同じで、買い時を探らないことだと思います。

ここ1〜2年を振り返ると、コロナ禍から回復する中で、2021年末まで好調だった株式市場は2022年になって米国株は大幅に下がりました。ドル高円安が歴史的な水準まで進み、株式相場と為替がともに非常に不安定、動きが激しい局面になっています。

こうした中、どのタイミングで買うかはたしかに難しいのですが、どんな状況でもコツコツ積み立てを続けていくこと。あらためて、長い目で見て利益を出すという姿勢に改めて立ち戻ることの重要性を実感した相場だと思っています。

──日々、発信をされる中で、いろいろな質問が寄せられると思いますが、最近聞かれることが多いことはありますか?

聞かれることが多いのは、円安、株安の中で、つみたてNISAを今から始めようと思っていた、あるいは最近始めたという方から、「タイミングとして、今はよくないですか」「もう少し始めるのを待ったほうがよいですか」というものですが、これへの回答は先ほどと同じで、「とにかく相場に左右されずに早く始めて、長く続けることが大事ですよ」ということです。

──YouTubeチャンネルはどんな世代の方がご覧になっているのでしょうか?登録者の世代割合はいかがでしょうか。

年代は結構幅広いですね。年代別の割合を見ると、「18歳から24歳」と「65歳以上」が数パーセントから十数パーセント。あとは25歳から64歳までは9歳刻み(25〜34、35〜44など)で分かりますが、いずれも二十数パーセントずついらっしゃいます。

──そんなに若い方が多いとは意外です。若者も積立投資に関心を持っているんですね。

最近、高校生や大学生からの質問や連絡も多くて、「18歳になったらつみたてNISA始めるために準備しています」という子もいますから。若い人の間での投資への関心が高まっていることを感じますね。

これから投資を始めるなら給料の10%くらいから

──お金との付き合い方について教えてください。

消費や投資は当たり前ですがバランスが大事です。

投資家の中には、日頃の消費を極力抑えてとにかく投資に注ぎ込む、投資で言うところの“入金力”を高めている方もいらっしゃって、それで楽しめるならいいとは思いますが、それで日々の暮らしが逆に楽しめず、いつの間にか窮屈になり、ストレスになる方もいると思うんですよね。

ただ反対に投資にまったく資金を回さずに、日常の生活で使うことしかしていないと、将来困ることになってしまうので、とにかく自分にあったバランスを見つけてそれを保つことが大事だといつも思っています。

──感覚的なもので構わないのですが、収入をどのくらい投資に回すといいか、分かりやすい割合、比率はありますか?

収入を貯金と投資の振り分けるとして、自分は個人事業主で収入が安定しているわけではないので、貯金をちょっと大目にしたいと思っていて、貯金6:投資4といったところでしょうか。

会社員で給与収入が安定しているなら、もうちょっと投資の比率を高めて、たとえば5:5とかでもいいかなと思います。 ただ、初心者でこれから投資を始めるのなら、まずは給料の10%ぐらいから投資するのが分かりやすいですし、バランスもとりやすくていいのではないでしょうか。

今は“クレカ積立全盛期” 積立でついたポイントをまた投資に回す

──最近、何か特に投資を始めたというものはありますか?

いえ、もうずっと変わらずで、米国株のETF投資信託VTI()をずっと買い続けています。今は“クレカ積立全盛期”なので、楽天証券、SBI証券、マネックス証券でクレカ積み立てをしています。

──全盛期。たしかにどの会社も力を入れていますね。小林さんも楽天カードや三井住友カード、マネックスカードを作ってそれぞれの会社で積立設定されているわけですね。

そうです。クレカ積立はポイント還元率もよいので、初心者が積立投資を始めるならクレカ積立から始めるのがいいかなと思います。積立でついたポイントも投資に回せますし、カードの利用額にも当てられます。

たとえば5万円の積み立て設定をしていて500ポイントついたら、その500ポイントを次の積み立て支払いにあてて、カードの支払額を4万9,500円にできるわけです。僕はそれが分かりやすいのでそうしていますが、日常の支払いに使ってもいい。

いい情報や動画を見ても「なぜこの人はこう言っているんだろうか」と考えてほしい

──若者の情報源がSNSやYouTubeになってきていて、こうした自由に発信できる媒体で、中には「若いうちは投資よりも仕事を頑張って稼ぐほうに力を注ぐべき」という方もいますが、どう感じていますか?

まず誰が言っているかということより、なぜそう言っているかという根拠が大事だと思いますね。

若いうちは投資より稼いだほうがいいと言う方は、自分のそういう経験があるから、よかれと思って発信しているんだと思います。ただ仕事がうまくいかなくなったり、働けなくなったりすることもあって、そこで「早くから投資をして資産を増やしておけばよかった」となってしまう。

だから、たとえ共感できる情報や意見があっても、「なぜこの人はそう言っているんだろうか」という根拠を考えること、その裏付けとなる情報を見つけることが大事だと思います。

たとえば米国株を推している人がいたとして、もちろんその人は米国株を買っているわけでしょうが、「なぜこの人はそんなに米国株が有望だと思っているんだろうか」と考えたほうがいいと思います。

──「有名なインフルエンサーが言ってるから間違いない」と決めつける人は多そうですね。

そうですね。あとは一人の発信者からの学ぶのではなく、多くの、複数の識者から情報を得て、まあ多角的に捉えるようにすることです。それがリスクヘッジにもなると思います。

──ご自身が発信をする時に注意していることは何ですか?

もちろん嘘や間違った情報を伝えない、一次情報をもとにして正確な発信にするというのは当然ですが、注目されようとして過度に煽ったりしないよう心がけています。

あとは初心者の方向けにしか発信してないので、とにかく知識ゼロの人でも、自分の動画から学び始められるよう、理解できるようにすることです。

だから説明にはなるべくイラストを使って、分かりやすく噛み砕くようにしています。だから自分の動画は中級者、上級者にはそんなに有益ではないだろうと自覚もしています。とにかく初心者向けにやっていきたいと思っています。

──イラストも自分で作ってらっしゃるんですか? 動画1本作るのにどれくらい時間をかけられているのでしょうか。

イラストは簡易的なものは自分で作っていますね。キャラクターとして使っているペンギンさんはイラストレーターさんに書いてもらっていますが。動画1本にかかる時間は6時間ぐらいでしょうか。

──それは実際手を動かし始めてからということですよね。作り始める前にネタを集めて、企画を考えてらっしゃると思うのですが、どうされているんですか?

毎日、YouTubeのコメント欄やツイッターやインスタのリプやDMなどでたくさんの質問をいただくので、そこで回答しながらも、複数の方からいただいた質問、共通している疑問は必ずストックしておいて動画にしていますね。

──初心者向けに作る中で、どこまで噛み砕けば分かりやすくなるか迷うこともあると思います。誰かに見てもらうとか?

妻がまったく投資に興味がないので、時々意見を聞いたりしています。

2023年は何に注目?投資戦略はどうすればいい?

──最後に、2023年を含めて今後の相場の見通しや、投資家に向けたアドバイスをいただけますか?

2023年の最大の注目は、米国の政策金利の動向でしょう。ターミナルレート(金利の最終到達基準)がどれくらいで、そこにいつごろ達するのか。最大の焦点は、急激に上がっている米国の金利がどこで止まって、下がり始めていくかということ。

観測では、金利の上昇は2023年の前半ぐらいまでで、5%ぐらいで打ち止めだろうと言われていますが……それで落ち着いてその水準がしばらく続くのであれば、株高に反転する可能性もあるでしょう。

ただ、インフレがまだまだ長引くようであれば株式相場には逆風になる。

結局は先が見えない、特に難しい局面なので、淡々と積み立てを続けていくのがベターな選択肢になるなと思います。アドバイスとしては繰り返しになりますが、結局相場を気にしすぎず、コツコツやっていきましょうということです。思い立ったらもう始めてしまうことです。

──米株がまだしばらく厳しそうだと判断した時に、米株の比率を下げるといったポートフォリオリバランスは初心者も考えたほうがいいのでしょうか。

自分はポートフォリオできるだけシンプルにしたいと思っているので、長期で世界や米国の成長に期待を持てるなら、全世界株式と米国株への投資でいいのではないかと思っています。

あとは現金をポートフォリオの一部として考えて、リスクを抑えたいなら現金を厚めに持つといった考えでいいと思っていて、僕も実際、そうやっているだけなんです。

国内株式や新興国株式、債券なんかもあって、それを否定するわけではないのですが、初心者はできるだけシンプルでいいなと思うので、一番成長が期待できると思うところに投資して、あとは現金の比率のコントロールでやっていくのが分かりやすいし、続けやすいのではないでしょうか。

つみたてNISAを始めるにしても、購入する投資信託の本数増やし過ぎて、自分のポートフォリオの全体像が分からなくなっている人もいるようなので、シンプルでいいと思います。

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『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』

小林亮平・著
KADOKAWA
Kindle版 (電子書籍) ¥825(税込)
単行本 ¥1,650(税込)

取材/構成・濱田 優(dメニューマネー編集長)

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