コロナ禍で土地の値段が上がった地域、下がった地域はどこ?2021年「公示地価」発表

2021/07/21 05:00

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国土交通省から発表された令和3年の公示地価が発表されました。これは2021年1月1日時点ですから、ちょうど1年前に発表された令和2年の公示地価(2020年1月1日時点)と比べれば、コロナ禍の影響が分かります。コロナ禍で土地の値段が上がった地域、下がった地域はどこなのでしょうか。 そもそも公示地価とは何か 不動産は「1物

国土交通省から発表された令和3年の公示地価が発表されました。これは2021年1月1日時点ですから、ちょうど1年前に発表された令和2年の公示地価(2020年1月1日時点)と比べれば、コロナ禍の影響が分かります。コロナ禍で土地の値段が上がった地域、下がった地域はどこなのでしょうか。

そもそも公示地価とは何か 不動産は「1物4価」?

データを確認する前に、公示地価について少し補足します。実は、不動産の価値は「1物4価」という言葉があるくらい、様々な評価があります。例えばこの4つです。

・公示地価:国土交通省が毎年3月下旬に、毎年1月1日時点の価格を算出
・基準地価:都道府県が毎年9月下旬に、毎年7月1日時点の価格を算出
・路線価(相続税評価額):国税庁が毎年7月1日に、毎年1月1日時点の価格を算出
・実勢価格(時価):実際に市場で売買される価格

同じ地域で同じくらいの広さの土地であっても、各評価で若干価値は変わります。今回は「公示地価」の最新版について見ていきましょう。

2021年の公示地価の概要

2021年の公示地価の傾向をまとめてみました(表現は分かりやすく編集しています)。

・全国の全用途は平成27年以来6年ぶりに下落に転じた
・全国の住宅地は平成28年以来5年ぶりに下落に転じた
・全国の商業地は平成26年以来7年ぶりに下落に転じた
・全国の工業地は5年連続の上昇であるが上昇率が縮小した
・三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)は全用途・住宅地・商業地はいずれも平成25年以来8年ぶりに下落に転じた
・地方圏では全用途・商業地は平成29年以来4年ぶりに、住宅地は平成30年以来3年ぶりに下落に転じた

全体を通じて「○年ぶりの下落」という地域が多く、アベノミクスが始まった2013(平成25)年から続いていた地価上昇に、歯止めがかかったことが分かります。

国土交通省も発表資料のなかで「新型コロナウイルス感染症の影響等により、全体的に弱含みとなっている」と書いているように、「2020年はコロナ禍によって、ここ数年続いていた地価の上昇トレンドが一服した」と理解しておけば良いでしょう。

商業地のワースト5はどこ? インバウンド需要に支えられていた地域が軒並み大幅下落

公示地価に限らず、不動産価格を見る場合は、特色が大きく異なるため「商業地と住宅地は全くの別物」ととらえることが重要です。

ここからは「商業地」について見ていきます。全国の商業地ワースト5をご覧下さい。

変動率下位順位表(全国)商業地ワースト5

1位 大阪府大阪市中央区道頓堀1丁目37番外 △ 28.0%
2位 大阪府大阪市中央区宗右衛門町46番1外 △ 26.5%
3位 大阪府大阪市中央区難波1丁目14番22外 △ 25.7%
4位 大阪府大阪市中央区日本橋1丁目16番4外 △ 22.7%
5位 大阪府大阪市中央区心斎橋筋2丁目39番1 △ 20.3%

大阪市がワースト5を独占しました。これらの地域は、これまで訪日観光客需要を取り込んで上昇していましたが、コロナ禍でインバウンド需要が大きく減退したため、地価も大きく下落したと分析できます。

なお、東京圏の商業地の変動率順位表を確認しても、銀座、浅草、歌舞伎町など訪日観光客が多かった地域が2桁の下落率になっています。

東京圏の住宅地は「郊外堅調」

続いて「住宅地」を見ていきましょう。「テレワークの浸透によって、都心の近くに住む必要性が低下し、住環境が良い郊外への移住が進んでいる」という話をよく耳にします。

公示地価の結果にもその傾向が反映されています。東京圏の住宅地トップ5をご覧下さい。

変動率上位順位表(東京圏の住宅地)トップ5

1位 千葉県木更津市金田東4丁目19番 5.6%
2位 千葉県木更津市羽鳥野2丁目25番4 4.9%
3位 千葉県柏市若柴字原山277番7 4.6%
4位 千葉県我孫子市我孫子3丁目76番7 4.6%
5位 千葉県柏市泉町766番90 4.6%

千葉県が独占する結果になりました。木更津、柏、我孫子と「毎日都心に通勤するにはやや遠目のエリア」が軒並み地価を上げています。

千葉県、神奈川県、埼玉県といった「都心にもアクセスできる郊外」がすべて上昇しているわけではありませんが、ちょうど1年前の2020年の東京圏の住宅地トップ5と見比べると、その差は一目瞭然です。

変動率上位順位表(東京圏の住宅地)トップ5 ※2020年版

1位 東京都港区港南3丁目6番7 14.0%
2位 東京都渋谷区恵比寿西2丁目20番1 13.9%
3位 東京都北区赤羽1丁目32番14 12.6%
4位 東京都港区芝浦2丁目1番33 12.3%
5位 東京都荒川区東日暮里1丁目1番13 12.1%

すべて東京都で、港区や渋谷区が上位となっています。コロナ前までは職住接近が選好されていた傾向が読み取れます。

地価は生活に密着した指標 マイホームを検討するなら特に注目

全体として下落傾向であった2021年の公示地価ですが、コロナ禍において上昇した地域は存在します。

地価は生活に密着している指標です。マイホームを持っている人も、これから購入を検討する人も、転居を検討して人も、今回の傾向と今後の動向を注目してみて下さい。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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