ドライバー不足で「送料無料」がなくなる? 物流業界の2024年問題とは

2023/01/17 07:00

コロナ禍でネット通販(eコマース)は急拡大、行動規制が緩和された2022年でも市場の拡大は続いているが、「物流業界の2024年問題」が近づき、送料無料サービスが根本的に見直される可能性がある。 物流業界の2024年問題とは? トラック輸送は日本の物流を支えている。ただ、長距離トラック輸送は労働時間も長く過酷だ。そんなな

コロナ禍でネット通販(eコマース)は急拡大、行動規制が緩和された2022年でも市場の拡大は続いているが、「物流業界の2024年問題」が近づき、送料無料サービスが根本的に見直される可能性がある。

物流業界の2024年問題とは?

トラック輸送は日本の物流を支えている。ただ、長距離トラック輸送は労働時間も長く過酷だ。そんななか、トラックドライバーの労働条件が大きく変わるのが2024年問題だ。

厚生労働省は2019年に「働き方改革関連法」を施行した。時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保などを定めた。

トラックドライバーに関しては、運転業務の時間外労働の上限が年960時間に制限された。年960時間は月80時間。1日4時間程度が残業の上限だ。

しかし、長距離トラックドライバーは長時間労働が常態化しており、人手不足ですぐ対処するのは難しかった。そのため猶予期間が与えられ、2024年4月からの適用となる。

ネット通販手数料無料の実態 楽天、アマゾン、ZOZOは?

ネット通販最大手の楽天(楽天グループ<4755>)は、2020年3月より配送料を3980円以上の購入で一律無料にした。それまではショップによって送料基準はバラバラだったが、判りにくいため、同一ショップ内で合計購入額が3980円を超えれば無料にした。

アマゾンは2000円以上は送料が基本無料、2000円以下は450円となっている。ただ、年間4900円(月間なら500円)のプライム会員は配送料が基本無料だ。

ZOZOTOWNを経営するZOZO <3092> の取り組みはユニークだ。前澤前社長は以前、ZOZOの送料が高いというZOZOユーザーのツイッター投稿に対し、「ただで商品が届くと思うんじゃねえよ」と一喝したことで炎上。その後謝罪し、ZOZOTOWNの送料を一時期、完全無料にしていた。

ただ2017年11月からは一律210円(税込み、現在は250円)に設定した。「送料は無料なわけないが、無料で当たり前という誤認識を与えてしまったのはEC事業者の責任」として、送料は無料との認識を変えようとしている。

いずれにしても2024年以降は、運送料は無料という概念から、正当な対価を払うスタイルに変わる可能性もありそうだ。

運輸業界は今後どう変わる?大手運送業者にはコスト増、インフラ関連銘柄に注目

2024年からは、トラックドライバーの労働時間が制限されるため、ひとりのドライバーが運べる距離が短くなる。長距離を1人のドライバーで運んでいたものを複数のドライバーで中継する可能性が高い。

運輸業界は、荷物受け渡しの中継地点として、引き渡し、マッチングなどのインフラを整備する必要がある。受け渡しの自動化、省力化、効率化も重要だ。また、鉄道、飛行機、ドローンなどの、配送方法の多角化、連結トラックなどの輸送量の拡大などを大手物流業者は考えている。

すでに、ヤマトホールディングス <9064> 、SGホールディングス <9143> など大手はインフラの整備をすすめている。SGHDは840億円を投じ、次世代大規模中継センター「Ⅹフロンティア」を作り、仕分けスピード向上、ドライバーの荷待ち時間を削減へ動いている。

運送業者には当面コスト増になる可能性が高いが、配送に対価をはらうという概念が広まれば業界の地位は改善する可能性も高い。

中継所での時短、合理化も注目領域だ。豊田自動織機 <6201> はトラックや積み荷の位置を認識できる自動運転のフォ―クリフトを提供している。荷役効率化にはパレット利用が拡大する。パレットなど物流機器のユーピーアール <7065> なども注目されそうだ。

文/編集・dメニューマネー編集部

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