親や兄弟・姉妹から介護を任されやすい「おひとりさま」は、介護など親の老後に必要なお金の話などを早めにしておく必要があります。しかしながら、お金の話となると親でもスムーズに話を切り出しづらいもの。当たり障りなく、親から財産状況を聞き出すにはどうすればよいのでしょうか。
1 先に自分の貯蓄の話をする
老後のお金について親と話すときは、先に自分の老後や貯蓄の話をするとスムーズに進むことが多いです。
「貯金はどのくらいあるの?」「お金は大丈夫なの?」といった聞き方では、警戒心を抱かせたりプライドを傷つけたりします。
いきなり質問せず、「介護にお金がかかる時代だから、将来に備えて貯蓄している」というように、先に自分の話をすると、親も自分たちの老後に考えをめぐらせてくれるはずです。
2 介護にかかるお金の目安を伝える
話を切り出せたら、介護にかかるお金の目安を伝えてみましょう。
介護費用の平均月額は在宅4.8万円、施設12.2万円で、介護の平均期間は約5年ということが生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2021年度)」でわかっています。
たとえば介護期間が5年なら、2人合わせて在宅で576万円、施設では1,464万円の介護費用がかかります。
また、介護期間の平均は5年ですが、「4~10年未満」が31.5%、「10年以上」も17.6%です。
もし介護期間が10年なら、在宅で1,152万円、施設では2,928万円もの費用がかかります。
「介護にはこれくらいお金がかかる」といったように具体的な数字を伝えると、両親も「今の貯蓄だと足りないかも」と危機感を持ちやすくなります。
「将来はできるだけ自宅で暮らしたい?」など、親の希望を優先するような話し方も効果的です。
親が、独身のわが子に介護してもらうことを期待しているケースもあるでしょう。
その場合は「自分が介護したい」「遠方で働いているため介護は難しい」「自分の老後資金を貯めるので手一杯で余裕がない」など、自分の考えや状況もあわせて伝えておくと、将来行き違いが生まれにくくなります。
3 相続税の非課税枠から財産の話をする
親に聞きにくい財産の話は、「相続税の非課税枠」を切り口にするとスムーズに進むことがあります。
非課税枠とは相続税がかからない範囲のことで、2015年に縮小されてから富裕層だけでなく一般家庭でも相続税がかかるケースが増えました。
非課税枠の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、たとえば子ども2人と妻の合計3人が法定相続人なら、4,800万円です。
非課税枠を計算して「わが家は〇円を超えると相続税がかかるみたいだけど、大丈夫かな?」と具体的な金額を出すと、両親の答えで財産の目安がわかります。
相続財産には預金のほかに、自宅不動産も含まれます。
預金残高をイメージして「大丈夫」と答える両親も多いので、自宅不動産を入れても大丈夫かどうか確かめておきましょう。
おひとりさまの生き方は、周りからは自由で余裕があるように見えるため、親や兄弟・姉妹から介護を期待されがちですが、自分の老後に向けてしっかり貯蓄したいと考えるおひとりさまも多いはずです。
伝え方を工夫して、老後のお金についてあらかじめ親と話し合っておきましょう。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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