「ビットコインに興味がない」株式投資家もコインベースの上場に注目すべき理由

2021/04/15 17:00

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日本でビットコインが一時700万円を超えた後、アメリカの暗号資産取引所「コインベース」がナスダック市場に上場しました。取引所を運営するコインベース・グローバルに与えられたティッカーシンボル(日本の証券コード)は“COIN”。ただ事前の人気はとても高かったのですが、初日の終値は初値から14%安となってしまいました。具体的

日本でビットコインが一時700万円を超えた後、アメリカの暗号資産取引所「コインベース」がナスダック市場に上場しました。取引所を運営するコインベース・グローバルに与えられたティッカーシンボル(日本の証券コード)は“COIN”。ただ事前の人気はとても高かったのですが、初日の終値は初値から14%安となってしまいました。具体的には、上場前の非公開市場で取引された額が348ドル。初値は381ドルで、一時429.54ドルまで上昇しましたが、終値は328ドルでした。その影響で、北米の株式市場では暗号資産(仮想通貨)関連の銘柄が大きく値下がりしました。

暗号資産業界では2021年に注目すべきイベントの一つとまでいわれた上場。なぜ関係者はコインベース上場に期待を寄せていたのでしょうか。コインベースとはどんな会社なのでしょうか。

コインベース上場に期待が高まっていた理由

コインベースの上場が注目された理由はいくつか考えられます。まず挙げられるのが、暗号資産業界からのユニコーン(評価額10億ドル以上)の上場が初めてであることです。

一般に、暗号資産を取り扱うには各国・地域でライセンスが必要とされます。日本でも暗号資産交換業者として登録が必要で、取引所に限らず、ウォレットサービスを提供する場合も必要です。2月末現在で、全27業者が登録しています。

もともとフィンテックの事業を営んでいた企業の中で、暗号資産のライセンスを取得したユニコーンは存在します。たとえば米国で学生ローンの借り換えサービスで知られるスタートアップ企業SoFi(ソーファイ)はその一例です。同社は米国でビットライセンスを取得しています。

また未上場であれば、暗号資産業界にもユニコーンは複数存在します。有名なところではバイナンスやリップルなどがあります。ただこれらはあくまで未上場。暗号資産の取り扱いが主な事業であるユニコーン企業としては初の上場だったわけです。

またコインベースの上場で、暗号資産投資のすそ野が広がるという期待もかけられています。コインベースは利用者は5600万人といわれ、米国の取引所としては最大規模です。利用者が多い分、知名度も高く、既に暗号資産に投資している投資家以外にも暗号資産の投資層が広がると期待されています。

ちなみに、コインベースの影響力が大きいことを示す証拠として、「コインベース効果」という言葉があります。新しく誕生した暗号資産がコインベースに上場されると、価格がグンと上がる現象のことです(なお暗号資産業界では、取引所が通貨(暗号資産)の取り扱いを始めることを「上場」「リスティング」と呼びます)。

さらに個人投資家だけでなく、機関投資家の暗号資産への見方も変わるという期待もあります。コインベースを使っているのは個人投資家だけではありません。既に数千社の機関投資家が利用しています。同社はまた、有価証券の保管や管理をするカストディー業務も行っています。そんなコインベースが上場することで、証券会社のアナリストがコインベースを調査範囲に含めるなど、暗号資産市場へも目を配るようになるでしょう。そして、いずれ暗号資産そのものの位置付けが、株式をはじめとした伝統的な金融資産に肩を並べる……そのきっかけになるという期待が寄せられているのです。

タイミングも、米国でビットコインが7万ドルを超えようとするなど、過去最高を更新しつづける中での上場です。その意味でも期待が高まっていたといえそうです。

コインベースとはどんな会社? 三菱UFJ銀行も株主

そんなコインベースですが、一体どんな会社なのでしょうか。設立されたのは2012年、当初は暗号資産のウォレットサービスを提供していました。現在は取引所も運営、世界30ヵ国以上でサービスを提供しています。取引高も有数ですが、特にセキュリティが強いことで知られており、規模や安全性など複数の観点から世界の取引所を評価したランキングでは、常にバイナンスと1位を争うような位置にいます。

株主には、著名なベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツ、Yコンビネータのほか、三菱UFJ銀行も名を連ねています。日本法人もあり、代表は元お金のデザインCOOの北澤直氏が務めています。

取引所ではビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ビットコインキャッシュ(BCH)など50以上の通貨を取り扱っています。ただリップル(XRP)の取り扱いは現在していません。

業績はとても好調です。上場を控えて発表された2020年の総売上高は12億7000万ドルでした。直近では、2021年の最初の四半期だけで売上高が18億ドルあったそうです。

なぜこんなに伸びているかというと、暗号資産の価格高騰が背景にあります。同社の収益の柱は取引手数料です。取引所で取り扱っている暗号資産取引について、0.57%の手数料を徴収しており、売上高の8割以上がこの手数料収入だそうです。市場が活況になるにつれ、同社も売り上げを伸ばしているわけです。

不安視される材料もある

順調に成長してきているように見えるコインベースですが、売上高のほとんどが手数料である点など、不安視される材料もあります。いまは暗号資産取引が活発で、価格も上がっているのでいいのですが、この状況がいつまで続くか分かりませんし、そもそも経営の安定性という意味では心許ないと言えるでしょう。また取引所の競争が激しくなって値下げせざるを得なくなれば、売り上げが落ちる可能性もあります。

さらに今後ビットコインETFが証券取引所で買えるようになれば、わざわざ暗号資産取引所に口座を開設しなくても、個人投資家は暗号資産をポートフォリオに加えられます。暗号資産を持つと、ウォレットや秘密鍵を自己責任で管理しなければいけませんし、盗難・流出の危険性がありますが、ETFなら盗まれる心配もありません。

初日は残念な結果に終わったともいえますが、CoinDesk Researchなどのデータを見ると、直接上場した他のテック企業も初日は同じような結果になっているそうです(コインベースは、新株を発行するIPOではなく直接上場しています。SpotifyやSlackも直接上場です)。暗号資産の価格とともに、業界を代表する同社の株価の推移も引き続き注目の対象と言えるでしょう。

文/編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)

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