親の年金や貯金だけでは介護費用が足りない場合、子供である自分が負担しようと考えるかもしれないが、それでは自分自身の生活や老後に影響しかねない。介護費用の負担を軽くできる制度には、どのようなものがあるだろうか。
使える制度1 1ヵ月の上限額を超えた分が払い戻される──高額介護サービス費
高額介護サービス費は、介護サービスを利用して1ヵ月間に支払った自己負担が上限額を超えると、超えた分が払い戻される制度だ。
上限額は世帯の年収(実際には課税所得)に応じて決まり、たとえば、世帯年収がおよそ770万円未満なら、上限額は4万4,000円(住民税が非課税の人がいない世帯)。
全世帯の平均年収は552万円(2019年。国民生活基礎調査)なので、多くの人がこの額が上限だろう。
区分 | 上限額(月額) |
---|---|
年収約1160万円以上 | 14万100円 |
年収約770万円以上1160万円未満 | 9万3000円 |
年収約770万円未満の住民税課税世帯 | 4万4400円 |
住民税非課税世帯(全員が非課税) | 2万4600円 |
生活保護を受給している人 | 1万5000円 |
限度額4万4,000円の人が介護費用に5万円使った場合、6,000円戻ってくるという計算だ。
実際に払い戻しを受けるときは、市区町村の窓口に申請用紙を提出する必要がある。
申請には期限があり、介護サービス費を利用した翌月の1日から数えて2年以内だ。期限を過ぎてしまうと申請できなくなるので注意してほしい。
使える制度2 介護施設の居住費と食費を補助してもらえる──特定入所者介護サービス費
特定入所者介護サービス費は、特別養護老人ホームなどの公的な介護施設に入所している人のうち、所得の低い人の負担を軽くするための制度だ。
この制度を使うためには、住民税の非課税世帯であることに加えて、下の“いずれか”の条件を満たす必要がある。
・生活保護を受給していて、夫婦の資産が2,000万円以下
・年金収入などが80万円以下で、夫婦の資産が1,650万円以下
・年金収入などが80万円超120万円以下で、夫婦の資産が1,550万円以下
・年金収入などが120万円超で、夫婦の資産が1,500万円以下
単身の資産の条件については、夫婦の2分の1以下と決められている。いずれかの条件を満たせば、負担限度額を超えた住居費と食費を補助してもらえる。
負担限度額は、所得や施設の種類、部屋のタイプによって異なる。
厚生労働省のシミュレーションでは、全額自己負担した場合の平均的な食費(1日あたり)1,445円で考えると、この制度が適用されると負担限度額が300〜1,360円になる。
実際に補助してもらうためには、市区町村の窓口で申請する必要がある。
使える制度3 介護費用の4分の1が軽減される──社会福祉法人による軽減制度
ここまでで紹介したのは国や自治体による制度だが、社会福祉法人による軽減制度もある。
社会福祉法人は全国におよそ2万法人あり、一部の社会福祉法人が運営する介護施設では軽減制度を用意している。具体的には、住民税の非課税世帯など、いくつかの要件を満たす場合、利用者負担の4分の1(老齢福祉年金受給者は2分の1)を軽減する。
具体的に軽減される費用は、訪問介護・通所介護・介護福祉施設サービスなどにかかる介護費や食費、宿泊費、居住費だ。サービスを利用する際に、軽減確認証を提示すれば、支払う額が安くなる仕組みだ。
該当する社会福祉法人や申請方法は、都道府県や市区町村のWebサイトで確かめられる。
親のお金だけでは足りない時に、できるだけ負担を減らしながら十分な介護を受けられるよう、これらの制度は把握しておこう。
文・廣瀬優香(フリーライター)
編集・dメニューマネー編集部
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