「欧州のキャッシュレス先進国」といわれるオランダでは、「ほとんど現金を使わない人」が増えています。オランダ在住の筆者もキャッシュレス生活歴15年ほど。現金を引き出すのは数カ月に1回、ほとんど現金を使いません。
日本でもコロナ禍でキャッシュレス決済が加速しているそうですが、今回は、オランダのキャッシュレス生活についてご紹介します。
あらゆるものがキャッシュレス決済OK!
オランダではオンライン・ショッピングはもちろん、店頭でのショッピングや飲食店、交通機関、公共施設などの利用、公共料金や保険料、税金、教育費、寄付金等の支払いなど、至るところでキャッシュレス決済が浸透しています。コロナの影響で、現金が一切利用できない店舗も見かけるようになりました。現金払いOKの店舗でも、「カードはないの?」と先に聞かれることもあります。
たとえば、小売店や飲食店、公共施設などでは、非接触型キャッシュレス決済の端末を使って代金を支払います。日本では「少額なら小銭で払おう」と考える人も多いかと思いますが、オランダではたとえ数十円程度の金額でも、キャッシュレス決済でサッと払ってしまいます。公共料金などの各種支払いも、キャッシュレスが基本です。
決済法として、自動引き落としやオンライン・バンキング、カード決済、モバイル決済などのほか、「iDEAL(アイ・ディール)」 というデジタル決済サービスが利用できます。通常のオンラインあるいはモバイル決済は、第三者(決済サービス会社)を介して決済が行われますが、「iDEAL」 は直接自分の銀行口座から、リアルタイムでお金が引き出される点が特徴です。銀行の高度なセキュリティーシステムを通して、安全かつ簡単に決済できるというメリットがあります。また、支払い金額と共に銀行口座の残高が表示されるため、使い過ぎ防止にも役立ちます。
アプリを利用すれば実店舗などの対面決済にも利用できるため、国内ではデビットカードやクレジットカードを上回る人気ぶりです。さしずめ、決済専用のリアルタイム・バンキングといったところでしょうか。筆者もオンライン決済で、最も頻繁に利用している決済手段です。
利便性とサービスの価値の高さが人気「次世代デジタル銀行」
一方、若い層を中心に利用者が増えているのが、「チャレンジャーバンク」や「ネオバンク」と呼ばれる、デジタル技術を駆使した新しいタイプの銀行サービスです。
どちらも既存の銀行のように実店舗をもたず、インターネットとアプリを介して、当座・普通預金、決済・送金、個人・法人融資などの銀行サービスを提供しています。両者の違いは、チャレンジャーバンクは銀行業務許可を取得しているのに対し、ネオバンクは銀行業務許可を取得しておらず、既存の銀行と連携することでサービスを提供している点です。
オンラインで口座を開設すると、数日後にデビットカードが郵送されてくるので、実店舗での支払いにも使用できます。ATMを利用すれば現金の入出金も可能ですが、顧客の多くはキャッシュレス決済手段として利用しています。
次世代デジタル銀行のメリットは、「既存の銀行よりサービスが安くて早い」「インターネットとアプリを使って、どこからでも好きな時に利用できる」「複数の通貨に対応している」「オンラインで口座開設手続きが完了する」など、利便性とサービスの価値が高い点です。
筆者は英国発の「Revolut」(レヴォリュート)」や、ドイツ発の「N26」を利用しています。レヴォリュートは日本にも進出を果たしている次世代銀行の草分け的存在です。オランダの伝統的な銀行は、口座維持費やクレジットカードの年間会員費がかかりますが、これらの次世代銀行はプレミアム口座を選ばない限り、無料で利用できます。またユーロ圏であればどこの国でも為替手数料がかからないため、EU圏内を旅行する際にはとても便利です。
キャッシュレス生活で困ることも……
冒頭でご紹介したように、筆者はここ15年、ほぼキャッシュレスで生活しています。現金を引き出すのは数カ月に1回、しかもごく少額(20ユーロくらい)。それほど現金を使う機会がありません。
とはいうものの、現金がなくて困った経験もあります。過疎地の海辺に遠出した際、ボートハウス(海の家)では現金しか使えず、周辺にATM(現金自動預け払い機)も見当たらないという状況に陥りました。そのため、飲み物すら買えず、喉の渇きに耐えきれずに早々に帰途に着くという悔しい思いをしました。それ以来、「iDEAL」のアプリをダウンロードした携帯電話とデビットカード、クレジットカード、そして万が一の時のために少額の現金を持ち歩くようにしています。
文/写真・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)
編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
(2021年4月25日公開記事)
【関連記事】(外部サイトに飛びます)
・初心者向け!ネット証券オススメランキング
・株主優待をタダ取りする裏ワザとは?
・つみたてNISA 毎月いくら積み立てるのがいい?