仕組み債は、一般的な債券とは違った特別な“仕組み”を持った債券で、具体的には、デリバティブ(金融派生商品)を使います。
仕組み債で使われる主なデリバティブは、「スワップ取引」(異なる金利や通貨を一定期間交換し合う取引)や、商品を決めた期日と価格で売買ができる「オプション取引」(事前に決めた将来の期日に特定の商品を、現時点で決めた価格で売買する権利の取引)です。
このような複雑な取引が組み込まれているため、仕組み債の元本や金利、償還金、満期日などは、対象となる各指数の値動きで変わります。指数には、株価、為替、金利、コモディティ(貴金属、原油、穀物ほか)などがあります。
仕組み債の発行体は主に外国の金融機関です。日本の銀行や証券会社でも買えます(外国債券として売り出される)。
仕組み債の主流はノックイン・ノックアウト型
個人投資家向けの代表的な仕組み債は、EB債(Exchangeable Bond、イービー債。他社株転換可能債券)や日経平均リンク債(基準日からの日経平均株価の変動率など、償還金額や利率が変動する債券)です。
どちらもノックイン・ノックアウト条項によりさまざまな条件が決まるため、高い利回りが期待できます。
ノックイン条項は、対象となる指数が一定の価格(ノックイン価格)を付ければ権利が得られる仕組みです。逆にノックアウト条項は、ノックアウト価格を付ければ権利が消えてしまいます。
たとえば、EB債は満期までに一度でもノックイン価格まで下がると、満期時に現金の代わりにあらかじめ決められた対象の株式を受け取れる可能性がある債券です。その場合、株価が低いと損になります。
ノックイン価格は、「当初株価の60%」のように決められていますが、数値は債券により異なります。
逆に、満期までに一度でもノックアウト価格まで上がれば、繰り上げで償還(満期)を迎えます。ノックアウト価格は「当初株価の105%」のように決められています(数値は債券ごとに異なる)。
その場合は額面金額(購入金額)で払い戻しとなり、発行時に決められていた高い利息は償還以降もらえなくなります。
また、最終的に満期までノックアウト、ノックインにもならなかった場合も、額面金額で戻ります。
金利変動リスクや流動性リスクがある
仕組み債のリスクは、金利が固定ではないため下がる可能性がある点です。金利は、金利を決める日(予定されている金利判定日)の対象銘柄の株価の終値で決まります。そのため、終値が金利判定株価(たとえば当初株価の80%など)より下がっていれば、金利が大幅に下がることがあります。ただし、逆に期間中ずっと金利判定株価以上であれば、高い金利収入が得られます(金利判定株価の数値や金利は債券ごと異なる)。
そのほかのリスクは、流動性(換金性)が低いことです。一般の債券と違って、売買する市場がないため売却できないことがあるのです。
仕組み債は高金利が魅力ですが、リスクが多いため、購入の際は目論見書などで十分に確認しましょう。 【お金の単語帳】