将来・老後に備えたい

妻に先立たれた夫が遺族年金をもらう条件と将来に待ち受ける落とし穴

2023/02/28 07:00

妻に先立たれた夫の遺族年金は、夫に先立たれた妻に比べて条件が厳しくなっています。さらに、将来自分の年金を増やそうと繰下げ受給をしようとしても、できない可能性もあるのです。 18歳未満の子どものいる夫は遺族基礎年金をもらえる 「遺族基礎年金」(国民年金)をもらうための条件に夫と妻で違いはなく、「子」がいる妻が亡くなると夫

妻に先立たれた夫の遺族年金は、夫に先立たれた妻に比べて条件が厳しくなっています。さらに、将来自分の年金を増やそうと繰下げ受給をしようとしても、できない可能性もあるのです。

18歳未満の子どものいる夫は遺族基礎年金をもらえる

「遺族基礎年金」(国民年金)をもらうための条件に夫と妻で違いはなく、「子」がいる妻が亡くなると夫は遺族基礎年金をもらえます。「子」とは18歳未満であるか、20歳未満で障害1級または2級の子供を指します。

つまり、高校生までの子供がいる夫婦の妻が亡くなると、夫が遺族基礎年金をもらう可能性が高いわけです。ただし、夫の前年の年収が850万円以上の場合は生計維持関係にないとみなされ、対象外になります。

妻に先立たれた夫は55歳以上でないと遺族厚生年金をもらえない

次に「遺族厚生年金」ですが、これは夫婦間に子供がいなくても、妻が亡くなった時点で夫が55歳以上であればもらえます。遺族基礎年金をもらえる夫は55歳から遺族厚生年金をもらえますが、そうでないと60歳からの受け取りになります。

また、夫を亡くした妻には「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」という年金額が増額される制度がありますが、妻を亡くした夫には加算制度はありません。

つまり、会社員の夫が亡くなると妻はほぼ無条件で遺族厚生年金をもらえるのに対し、夫がもらうためのハードルは高く設定されているわけです。

最近では、夫婦共働きは当たり前で専業主夫もそれほど珍しくありません。家計に占める妻の収入の割合が高い家庭では、生命保険などで妻が亡くなったときの対策を立てておく必要があります。

遺族年金をもらわなくても夫が年金の繰り下げをできないケースも

妻に先立たれた夫は遺族年金をもらわなくても自分の年金の繰り下げができないケースがあり、注意が必要です。

自分の年金を66歳以降75歳までの間に繰り下げて受け取ると、繰り下げた期間に応じて年金額が増えます。

ただし、自分の年金の繰り下げできない場合があります。遺族年金や障害年金など他の年金の受給権がある場合です。 繰り下げ待機の最中に夫や妻が亡くなって遺族年金の受給権が発生した場合も、繰り下げによりいくら増えるかはその時点で決まります。

注意すべきなのは、遺族年金などをもらわなくても「受給権はなくならない」という点です。

多くの場合、厚生年金に加入していた妻が亡くなると、夫も厚生年金に加入していれば遺族厚生年金を請求しません。遺族年金と老齢年金の両方はもらえないため、通常は金額の高い自分の老齢年金を選ぶからです。

しかし、この場合も遺族年金の受給権がなくなるわけではないため、夫は自分の年金の繰り下げをできません。

公的年金は請求しないともらえないため、自分では繰下げ待機のつもりが実は繰り下げできなかったという可能性もあります。公的年金は複雑なので、分からないことは年金事務所で確認したほうがよいでしょう。

文・松田聡子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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