退職・老後が近い

男性は要注意!年金の繰り下げ受給で「払い損」にならない年齢は?

2023/03/19 08:00

公的年金の受け取りを遅らせる「繰り下げ受給」をすると、もらえる年金額が増えますが、男性は“払い損”になるかもしれないので注意が必要です。 75歳まで繰り下げると損をするかも 年金を繰り下げると年金がどのくらい増えるかというと、繰り下げ1ヵ月につき0.7%なので、70歳まで繰り下げると42%増、75歳なら84%増になりま

公的年金の受け取りを遅らせる「繰り下げ受給」をすると、もらえる年金額が増えますが、男性は“払い損”になるかもしれないので注意が必要です。

75歳まで繰り下げると損をするかも

年金を繰り下げると年金がどのくらい増えるかというと、繰り下げ1ヵ月につき0.7%なので、70歳まで繰り下げると42%増、75歳なら84%増になります。

たとえば、65歳から国民年金と厚生年金を合わせて15万円もらえる人が、両方を繰り下げると、70歳までの繰り下げで21万3,000円、75歳までなら27万6,000円に増えるのです。

なぜ男性が損するかもしれないかというと、女性に比べて平均寿命が短いからです。2021年の男性の平均寿命は81.47歳で、女性の87.57歳と比べると6歳近く離れています。

年金を繰り下げずに65歳からもらい始めるのと、年金を70歳まで繰り下げた場合とで、繰り下げたほうがもらう年金の総額が上回るのは11年後の81歳からです。また、75歳まで繰り下げるなら、86歳からです。

つまり繰り下げをするなら、少なくとも平均寿命まで生きないと元が取れないわけですが、残念ながら、何歳まで生きられるかは分かりません。

繰り下げを選ぶとしても、「絶対に長生きする」という自信がなければ70歳までにしたほうがよいのではないでしょうか。

未婚の男性は全体平均より早く亡くなる傾向も

さらに注意したいのは、“未婚”の男性です。というのも、男性の平均寿命は81.47歳ですが未婚の男性は70歳前に亡くなる割合が多いことが分かっているからです。

国民年金で支払う保険料は、40年分で約800万円で、受け取る年金の額は1年で約78万円(2022年度、満額)なので、10年ちょっと受け取れば“元が取れる”(受取額が支払額を超える)わけですが、65歳から受け取り始めても75歳までかかります。

つまり、未婚男性は年金の受け取りで“払い損”になる可能性が比較的高く、最初から繰り下げを選ばないほうが無難です。

繰り下げないほうがいいかもしれない場合とは

さらに注意が必要なのは、年下の妻がいる厚生年金に加入していた男性は、繰り下げによって加給年金がもらえなくなる場合があることです。

男性が65歳になった時に65歳未満の妻がいると、厚生年金に加給年金が付く場合がありますが、厚生年金も繰り下げるとこの加給年金ももらえません。

加給年金額は年額で約39万円(2022年)と大きな金額のため、もらう年数によっては繰り下げするより有利になるケースもあります。

この場合は、繰り下げるのを国民年金だけにして、厚生年金は65歳から受け取ると、加給年金の取りこぼしを防げます。

年金の繰り下げは年金額を増やすために有効ですが、人の寿命は分からないため、慎重に考える必要があります。繰り下げの試算は年金事務所でできるので、相談してみるとよいでしょう。

文・松田聡子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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