東京都多摩市にある私立の恵泉女学園大学が、2024年度以降の学生募集を停止することが分かった。このところ入学者の定員割れが続いており、大学側は「大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなった」と説明している。
少子化が進む中で、今なお新設される大学もあり、「大学全入時代」が近いといわれて久しいが、最近、募集停止、廃止が決まった大学はほかにもあるのだろうか。
恵泉女学園中学・高校については「不利益はない」と説明
恵泉女学園大学は1988年に開学。現在は、人文学部、人間社会学部の2学部(4学科)がある。学生数は約1000人(2022年5月時点)。学部生の入学定員に占める入学者の割合は、18年度に88%だったが、22年度には56%に落ち込んでいた。
なお、2023年度入学生を含む在学生が卒業するまでは存続し、閉学する見通し。また同じ学校法人が運営する恵泉女学園中学・高校(世田谷区)は「この件で不利益を被ることはない」という。
同大学に限らず、学生が集まらずに募集を停止している大学や、統合による合理化で乗り切ろうとしている大学も少なくない。
廃止された私立大学はどれくらいある?
コロナ禍に廃止・閉学される大学だけでも2校ある。
1967年設置の広島国際学院大学(広島県)は、2020年度以降の募集を停止しており、2023年度で廃止される。2008年にできたばかりの保健医療経営大学(福岡県)も2023年度での廃止が決まっている。
ただ、コロナ禍以前を振り返ると、大学の数に比べて廃止された大学はそう多くない。
というのも日本の大学数は2022年度で790大学(うち7割以上が私立、旺文社)あるが、廃止された数はおよそ20校しかない。
過去に廃止された大学の中で、恵泉女学園大のような女子大には、東京女学館大学(2002年設置=前身の短大は1956年設置=、17年廃止)、広島安芸女子大学(立志館大学。2000年設置、03年廃止)がある。
進む統合 私立大学の公立化も
経営難の大学のほとんどは、グループの大学や近隣の大学と統合されたり、私立から公立になったりして生き延びている。
一つのケースとしては、島根医科大や静岡薬科大学などのように、医科、薬科や農科などの単科大学が総合大学の医学部や薬学部、農学部として統合されるというものがある。もう一つはグループでの統合だ。たとえば九州東海大と北海道東海大は東海大学に統合されている。
また、単科大同士が統合されるケースもある。大阪医科大学と大阪薬科大学は2021年に大阪医科薬科大学となり、東京医科歯科大学と東京工業大学は2024年に東京科学大学(仮称)になる予定だ。
さらに大阪では、大阪府立大学(府大)と大阪市立大学(市大)が2022年に大阪公立大学になっている。こうした統合で合理化、効率化を進めているのだ。
地方では私立大学の公立化も進んでいる。たとえば長岡造形大学(2014年度)や長野大学(2017年度)のほか、最近では2022年度に山口県の徳山大学(周南市)が公立となり、周南公立大学に変わっている。
その背景には、大学がなくなることでさらに人口減少に拍車がかかることを恐れた地方自治体による救済という側面もありそうだ。
少子化で迫る「大学全入時代」、新たに生まれる大学も……
ただ、多くの大学が統合をし、いくつかの大学が募集を停止している中でも、新しく大学は生まれている。最近でも、大阪信愛学院大学 教(大阪府)や令和健康科学大学(福岡県)などがある。川崎市立看護大学(神奈川県)のように短大から生まれ変わるケースもある。
こうした中、18歳人口が減っていることから、大学入学志願者の総数が入学定員を下回る「大学全入時代」が目前に迫っている。
2020年春入学の大学志願者数が約66万人だったのに対し、定員総数は約62万人だった。数字上では、もうすぐ「大学全入時代」になると見られている。
こうしてみると、大学に入ること自体は難しくなくなっていると言える。
しかし、統合や廃止は少しずつだが進んでいる。最近では、親が援助できないために多額の奨学金を借りなければ卒業できない学生も増えており、卒業して社会人になる時点で、重い債務を背負うケースも珍しくない。これまで以上に、より慎重な大学選びが求められる時代になっていると言えそうだ。
文/編集・dメニューマネー編集部
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