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東芝上場廃止、なぜ? 買付価格と市場価格200円の差、買えば得する?

2023/03/28 07:00

経営再建中の東芝 <6502> を国内投資ファンドが買収し非上場化することが決まった。7月めどに4620円でTOB(株式公開買い付け)し、全株買い取りを目指す。 通常、市場価格はTOBの買付け価格に寄るものだが、発表翌3月24日の東芝引け値は4390円。この値段で買いTOBに応募すれば200円以上(約5%)

経営再建中の東芝 <6502> を国内投資ファンドが買収し非上場化することが決まった。7月めどに4620円でTOB(株式公開買い付け)し、全株買い取りを目指す。

通常、市場価格はTOBの買付け価格に寄るものだが、発表翌3月24日の東芝引け値は4390円。この値段で買いTOBに応募すれば200円以上(約5%)の利益がとれる。この価格差にはどのような理由があるのだろうか。

製造業最大の赤字で存続の危機

東芝は日本の名門総合電機メーカー。特に冷蔵庫や洗濯機など白物家電ではパイオニア的な存在だ。原子力などの重電、半導体やパソコンなどのエレクトロニクスに多角化を推進、ピーク時の売り上げは、2008年3月期で7.6兆円に達する巨大企業だった。

しかし、2015年に不正会計が発覚した。長期に渡り経営陣も関与していたため問題は大きくなり、2015年3月期には378億円、2016年3月期には4600億円の最終赤字となった。

さらに、米原発子会社が巨額破綻したこともあり、2017年3月期には9656億円の赤字だった。日本の製造業で過去最大の赤字、債務超過は5529億円に達した。

東芝の再生が難航した理由

債務超過による上場廃止を免れるために、2017年12月に6000億円の緊急資金調達を行った。アクティビスト(物言う投資家)など多くのファンドが主要株主となった。こうしたファンドの目的は、株価を上げてリターンを高めることだ。この株主構成が東芝再建に時間がかかった原因となる。

当初は、グループ分割による再建で、白物家電、テレビ、半導体、パソコン、医療機器などの部門の売却をすすめた。

しかし、経営陣の提示する再建策については主要株主の合意がえられず時間ばかりが経過した。経営陣はこの状態を打破するために2022年4月に投資ファンド再建策を募集。国内の債券ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が選ばれた。

JIPは、7月下旬めどに約2兆円を投じてTOBで東芝株の4620円で全株取得し、非上場での再建を目指す。東芝経営陣はこの提案を受け入れた。

なぜ4620円に対して市場価格は5%も安いのか?

TOBの発表翌日24日の引け値は4390円。TOB価格に対して200円以上(約5%)割安だ。現値で買い、TOBで買い取ってもらえば利益だ。なぜTOB価格にさや寄せしないのだろう。

報道では、経営陣はこの提案を受け入れたが、「現時点ではTOBへの応募を推奨することまではしない」としている。

TOBの成立は発行済み株式の3分の2以上の応募が必要。東芝の株主は5割以上を海外ファンドが占めているため、ファンドの応募が必須だ。いままでの経緯からすんなりとTOBが成立しない可能性もある。

また、TOBが7月下旬としても4ヵ月程度先になる。現在の株式市場は米地銀問題で混乱している。4ヵ月間資金を拘束されるよりも早めに利益確定したい投資家が多かったことも考えられる。信用買い残は800万株まで膨らんでおり、期待感が高かっただけに利益確定の動きも不思議ではない。

ただ、TOBが失敗したとしてもTOBはかける可能性が高く買い取りはしてもらえるはずだ。失敗を防ぐため買付け価格を値上げする可能性もある(TOBでは期間や価格を変える例あり)。

要するに、ポイントは利回り5%がリターンとして魅力的に映るかどうかだろう。

文/編集・dメニューマネー編集部

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