「9月から手取りが減る」といって4月から6月にかけて残業を控える人がいますが、実は残業をしたほうが得をする場合があります。また、残業をしても手取りが減らないこともあるため、仕組みを知った上で働き方を考えましょう。
もらえる年金が増える
4月から6月にかけてたくさん残業して月収が増えると、9月から社会保険料が上がって手取りが減ることがありますが、もらえる年金は増えます。
たとえば、月収が30万円から36万円になると、天引きされる厚生年金保険料は2万7,450円から3万2,940円になり、1年間で6万5,880円負担が増えます。
しかし、将来もらえる年金も1年あたり3,946円増え、単純計算では17年で元を取れることになります。
年金をもらえるタイミングは、老後だけではありません。病気やケガで障がい者になった場合は障害年金をもらえますし、亡くなった場合は遺された家族が遺族年金を受け取れます。
老後はもちろん、病気やケガ、万一の場合の備えと考えれば、厚生年金保険料が上がることも悪いとはいえません。むしろ、得をすると考えることもできるのではないでしょうか。
残業しても手取りが減らないこともある
社会保険料は等級で決まるため、残業によって月収が増えても、等級が変わらなければ社会保険料は上がりません。
たとえば、月収29万円以上31万円未満は等級でいうと月収30万円なので、残業による月収の変化がこの範囲に収まっていれば、社会保険料は変わりません。
ただし、等級の範囲は月収によって変わるため、すべて2万円刻みでないことに注意してください。
たとえば、等級でいう月収20万円を見ると「月収19万5,000円以上21万円未満」で、この範囲を超えると等級が上がります。
自分の等級は、給与明細の社会保険料の天引き額と保険料額表を照らし合わせることで確かめられます。
仕組みを理解して働き方を決めよう
社会保険料の等級は4月から6月までの月収をもとに決まり、9月から新しい等級の社会保険料が天引きされるので、「4月から6月にかけて残業をすると9月から手取りが減る」という認識が広まりました。
しかし、必ずしも損となるわけではありません。もらえる年金が増えることに価値を感じるなら、4月から6月にかけても気にせず働いてよいでしょう。
一方、手取りを減らしたくないと考えるなら、自分の等級を確かめて、等級が上がらないよう働き方にするのも一つの方法です。
なお、上の年金額は厚生年金の報酬比例部分をもとに簡易的な計算によって算出したものであり、実際とは異なる場合があります。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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