相続した実家の土地や建物を売ると、売却益に約20%の税金がかかるのが一般的ですが、「空き家特例」を使えば、最大600万円の税金を0円にできるかもしれません。ただし、親が亡くなる前に一緒に暮らす、売る前に人に貸し出すなどすると、特例を使えず損をするかもしれないので、特例の要件を知って相続に備えましょう。
特例を使ったときのお得ケースの例
たとえば、親が3,000万円で買った実家を相続して3,500万円で売れると、500万円が利益となり、ここから約100万円の税金が引かれ、手元に残るのは約400万円です。
しかし、「空き家特例」を使えば、税金が0円になって約500万円が手元に残ります。
空き家特例は売却益から最大3,000万円を引ける仕組みで、もし3,000万円で買った実家が6,000万円で売れたら「利益3,000万円×約20%=約600万円」という計算で600万円の税金が一般的にかかりますが、特例を使えば最大600万円の税金を安くできるので、支払う税金は0円になります。
特例が使える要件1 一人暮らしの親が暮らしていた空き家
特例を使えるのは「空き家」だけです。たとえば、父親が先に亡くなって母親が一人で暮らしており、母親も亡くなって子供が実家を相続した場合などです。
この場合、母が亡くなる前に老人ホームなどに入っていても、私物を置いていて時々帰宅するなど、自宅として使っていれば特例を使えます。
また対象になるのは、1981年5月31日より前に建てられた建物とその敷地です。特例を使って建物を売るには、耐震基準を満たしていなければなりません。しかし、耐震基準を満たしていなくても、耐震リフォームをすれば特例を使えます。
ほかには、建物を取り壊して土地だけを売る方法もありますが、「買い手が建物を取り壊す契約」で売ると特例を使えないため気を付けてください。
実家を売る予定なら、築年数や耐震基準も確かめておきましょう。
特例が使える要件2 住んだり貸し出したりしていない
親が亡くなる前に自分も実家に住み始めたり、相続してから自宅として使っていたりすると、特例を使えなくなります。また、一時的にでも第三者に貸し出すと、特例は使えません。
中には「相続した実家をとりあえず賃貸に出し、借り手が見つからなければ売ろう」と考える人がいますが、特例を使えず損をする可能性があります。
特例を使う時は、相続から3年後の年内に売って確定申告しなければいけません。相続してから調べても間に合わないかもしれないので、実家周辺の賃貸の需要を調べるなどして、貸し出すか売るかあらかじめ考えておきましょう。
確定申告では、電気水道ガスの使用中止の書類など、空き家になった時期が分かる書類がいるので、大切にとっておいてください。
実家を相続する前に
空き家特例は2023年までの予定でしたが、2027年まで期限が延びました。国は空き家対策に力を入れているので、この先も期限が延びるかもしません。
なお、税金600万円は長期譲渡の所得税と住民税で、このほかに印紙税などもかかります。また、空き家特例を実際に使えるかどうかは専門家に相談しましょう。
文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部
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