中小規模の建設業者の倒産が増えていて、コロナ禍も理由の一つですが、原因はそれだけではありません。どうして今、建設業の倒産が相次いでいるのでしょうか。
コロナの影響で商業施設が廃業へ 工事の受注が減った
コロナウイルス感染拡大の影響で、商業施設や宿泊・外食業などの廃業や業績不振のあおりを受け、関連する工事の受注数が減ったことが建設業の倒産につながったと考えられます。
2022年度の建設業の倒産は1,291件で、2021年度の1,084件と比べて確実に増えています(帝国データバンク調べ)。
ただ、実は2019年度の倒産件数は1452件で、20年度は1167件、21年度は1084件とコロナ禍の中でも倒産件数は減っていました。
これはコロナ対策で実質無利子・無担保での融資(ゼロゼロ融資)があったため。もともと政府系の金融機関が手掛けていたが、コロナ禍で申し込みが増えたため、2020年から民間の金融機関でも取り扱えるようになっていました。
そうした好条件の融資があったにもかかわらず、21年度で倒産件数が反転、22年度に増えたのには、コロナ禍以外の理由がいくつかあります。
物価高による資材価格の高騰も原因の一つ
理由の一つは、円安などの影響を受け、資材価格が高騰していることです。
建材・家具、窯業・土石製品のカテゴリーでは2021年12月時点で、前年同月と比べて80.3%の企業が上がっていることが、仕入れ単価についてのアンケート調査で分かっています(帝国データバンク調べ)。そのうえ、これによる価格転嫁も適切に行なわれていません。
また、建設工事費は2017年度から年々上がっていることが、国土交通省が発表している「建設工事費デフレーター」を見ても分かり、同期間の物価指数と連動していることも明らかです。
またコロナ禍により物流の抑制が起こったことも、資材価格に反映されているでしょう。
人手不足による倒産は建設業が一番多い 政府による対策は?
もう一つの理由は、人手不足です。2022年度は特に人手不足の倒産が目立ち、146件発生しました。2021年度と比べると23.7%増えています。
中でも業種別では建設業が一番多く41件発生しており、これは深刻な問題といえます(帝国データバンク調べ)。
長時間労働や労災の多さ、職人の高齢化などが、慢性的な人手不足の原因と考えられます。
こうした状況を変えるために政府も対策を立てていて、今年1月に施行された改正建設業法により、近年の工事費の上昇を踏まえて工事請負下限金額が引上げられることとなりました。
具体的な例として、「主任技術者及び監理技術者の専任を要する請負代金額の下限」は今までの3,500万円から4,000万円に引き上げられていることが挙げられます。
また、2月に国土交通省が発表した公共工事設計労務単価等の改訂で、国土交通省が発注する委託の積算に使う全国一律の単価が全職種平均5.2%も引き上げられることになりました。
こうした取り組みが、建設業における人手不足や資金繰りの不安を解消するきっかけになるかもしれません。
文/編集・dメニューマネー編集部
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