2兆円の債券が紙クズに!クレディ・スイスのAT1債は日本の投資家にも販売されていた

2023/04/21 10:00

スイスの金融大手クレディ・スイスが発行していた債券「AT1債」が、同社の経営危機で無価値となった問題で、紙くずになってしまった2.2兆円の債券は、日本国内でも販売されていたことが分かった。青山学院大学駅伝部の原晋監督も買っていたといい、テレビ番組などで明らかにしている。 通常の社債より金利が高いAT1債とは? AT1債

スイスの金融大手クレディ・スイスが発行していた債券「AT1債」が、同社の経営危機で無価値となった問題で、紙くずになってしまった2.2兆円の債券は、日本国内でも販売されていたことが分かった。青山学院大学駅伝部の原晋監督も買っていたといい、テレビ番組などで明らかにしている。

通常の社債より金利が高いAT1債とは?

AT1債は、金融機関が発行する特殊な社債で、通常の社債などと比べて金利が高く設定されている。発行体の自己資本が減らされた場合などに、強制的に株式に転換されることがあり、債券と株式の中間のような存在とも言われる。

クレディ・スイスのAT1債のケースでは、当局が例外的な支援を行なうなどした場合、無価値になるという仕組み(特約)があったという。

クレディ・スイスは経営危機に陥り、UBSに買収されることになったが、スイスの財務省は、UBSが引き継ぐ資産の価値が下がり、将来の損失が一定の額を超えた場合はUBSに90億スイスフラン(1,2兆円)の政府保証をすると発表しており、これが支援に当てはまるとみなされ、無価値とされたようだ。

日本国内でも販売されていた

このAT1債については、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が国内の個人投資家などに約950億円分を販売していたと日経が報じている。

また、青山学院大学駅伝部の監督でチームを6度箱根駅伝優勝に導いた原晋氏も、4月6日に出演したフジテレビ系の番組「イット!」でAT1債を買っていたことを明らかにしており、「日本の投資会社は説明責任を果たしているのか」と疑問を呈したという。

こうした中、三井住友フィナンシャルグループ <8316> がAT1債の発行を決めたと報じられた。同グループは昨年12月にもAT1債を発行しており、今回は総額1400億円の見込みだという。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> も5月下旬以降に発行を予定していると報じられている。

日本の金融機関でAT1債を大量に持っているところはないらしいが……

ただ、日本の金融機関が発行するAT1債には、クレディ・スイスのケースのような特約(政府の例外的支援はないという。

なお、国内の金融機関でクレディ・スイスの「AT1債」を大量に保有しているところはないという(金融庁)。また、国内の資産運用会社が手がける投信の中には、このAT1債を組み込んだものもあるが、その比率は高くなく、直接的な影響はそう大きくないといわれている。

ただ、クレディ・スイスのケースを経て、国内の金融機関がAT1債を発行するコストは高くなると見られており、資金調達が以前より難しくなりそうだ。

文/編集・dメニューマネー編集部

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